雇用情勢と消費増税

昨日の日経新聞朝刊によると、この4〜6月で約100万人が非正規から正規に転換したとのことです。

総務省労働力調査から、正社員として働き始めた人のうち前職が非正規だった人の数を調べた。4〜6月期に正社員となった人のうち、転職や自社登用で非正規から転換した人の数は99万人と前年同期に比べ22%増えた。リーマン・ショック後の雇い止めなどで非正規の転職が盛んだった2009年7〜9月期の104万人以来の水準だ。
 正社員に転換した99万人を年齢別にみると、15歳〜34歳が64万人と65%を占める。前年同期は50万人で全体に占める割合は62%だった。30代の就職氷河期世代は新卒採用が少なく、非正規社員として働き続けてきた人も多い。こうした世代で正規雇用に移る動きが強まっているのが特徴だ。

 働く人全体でみると、前職が正社員だった人が新たに非正規社員で働き始める人も多い。60歳で定年退職してから非正規で働く人が多いためだ。4〜6月期に正社員から非正規へ転換した人は、119万人と前年同期から11%減ったが、正社員に転換した99万人を人数では上回る。
 ただ新卒なども含めると正社員の数は増えており、労働者全体の中で非正規の比率は減っている。正社員と非正規を合わせた4〜6月期の雇用者数は5235万人と増えており、労働参加の裾野は広がっている。
平成26年9月9日付日本経済新聞朝刊から)
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140909&ng=DGKDASFS05H1R_Y4A900C1EA2000

ちなみに日経新聞は本日の朝刊でも流通各社の人員確保策を報じていますね。

 スーパー大手が人材確保に向けて新たな人事制度を相次ぎ導入する。イトーヨーカ堂はパート従業員を契約社員経由で正社員に登用する制度を月内に開始。マルエツは65歳以上の高齢者を対象としたパート募集を新たに始める。小売・外食業で深刻な人手不足を背景に、多様な働き方を提示して有能な人材を囲い込む動きが広がってきた。
平成26年9月10日付日本経済新聞朝刊から)
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140910&ng=DGKDASDZ09061_Z00C14A9MM8000

(リンク先は有料です。すみません。)
もちろん雇用情勢の多くは景気に遅行するので慎重に見る必要がありますが、4-6月ということですから一応消費増税後ということで、当座の消費の落ち込みが即座に雇用を抑制する動きにはつながらなかったということだろうと思います。むしろ企業としては消費増税の悪影響は限定的で、近いうちに持ち直して人手不足基調が続くだろうと読んでいるということでしょう。夏賞与が反映された7月の毎勤統計では賃金も大きく伸びていますし、なにより雇用情勢が堅調に推移することで消費も比較的早く戻りやすいのではないかと思われます。
特にロスジェネの正社員転換が進んでいるというのは朗報です。前回の景気拡大期にも非正規の正規転換の動きはけっこうな規模でありましたが、残念ながらリーマンショック後の急速な景気後退でついえてしまいました。今回はぜひ一段の正規転換と雇用拡大が進むべく、景気の持続的な拡大に結び付く経済政策・金融政策をお願いしたいものです。
さてそこで消費増税をどうするかという話になるわけで、私はこれに定見があるわけではありませんが、雇用の動向については十分に配慮して判断してほしいとは思います。増税が景気を後退させることは当たり前の話でしょうが、それが雇用情勢、特に経営者の雇用に対するマインドにどのように影響するかが重要なように思います。
でまあ経団連はかねてから消費増税を主張しており、新内閣発足にあたっても「社会保障制度の重点化・効率化を進めるとともに、消費税率を着実に引き上げ、財政を健全化する。」ことを求めています(「新内閣に望む」http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/073.html)。
これは企業の負担が増えるのは困るとか財務省のポジション指導(笑)とか背景はいろいろありましょうが、個別政策の良し悪しとは違う次元の問題としてやると言ったことはきちんとやってほしいという一貫性を求めるという意図も相当程度あるのではないかという気がします。要するに設備投資だって5年10年くらいは先を考えて実施するわけですし、額がかさむほど当然に長期の見通しのもとに実施されることになるでしょう。実は正社員雇用というのも相当に長期の投資という側面があるので、こうした一貫性というか継続性というのは重要ではないかと思うわけです。思いつきや世間の雰囲気で政策が右往左往するようでは長期の投資などできるわけはないわけで、前政権はその点救いようがなくグダグダだったわけで…。
もちろんそこはきちんと説明をした上でそれなりの期限を切って先送りすればよいとの考え方もあると思います。ただその時に経営者や市場(がどんなものなのか私にはよくわからないのですが)がああなるほどねと納得するのか、やっぱり口ほどにもないねえと失望するのか、それによって結果が大きく左右されそうですが、現時点ではなんとも予想のしようもなさそうではありますが…。