藤本真・佐野嘉秀『日本企業の能力開発システム』

 藤本真先生、佐野嘉秀先生から、共編著『日本企業の能力開発システムー変化のなかの能力開発と人事・職場・社員』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 (独)労働政策研究・研修機構(JILPT)が2016年に実施した『企業内の育成・能力開発、キャリア管理に関するアンケート調査』の調査結果をさまざまな角度から分析し、日本企業の能力開発システムの実態を明らかにした本です。この調査については翌年(2017年)に労働政策研究報告書 No.196『日本企業における人材育成・能力開発・キャリア管理』が公表されていて、2018年に中大で「キャリア管理論」の授業をはじめた際にずいぶん参照させていただきました。特に上司の多忙さ、知識の乏しさ、関心の低さが部下の能力開発や動機づけに悪影響を与えているという指摘は印象的で、日本企業(特に大企業)においては「上司はよきキャリコンであれ」というのは、私が一貫して授業で訴えているところです。
 このアンケート調査は先行調査・研究の幅広なサーベイ(2014年にJILPT労働政策レポート No.11『日本企業における能力開発・キャリア形成』としてまとめられていてこちらも勉強になりました)をふまえて設計され、企業・管理職・正社員の3者を対象に、それぞれ500社以上・約1,000人・約2,000人という多数からの回答を得たというもので、本書ではそれが縦横無尽に解析されている感があります。2017年の報告書を執筆した4人の研究者が今回も執筆にあたっておられますが、2017年は藤本先生が大半を書かれていた印象があったのに対し、今回は共編者の佐野先生も多く参加されているようです。人事管理やキャリア形成が変化していると言われる中であるだけに、2016年時点での日本企業の能力開発システムがどのような姿であったかを知ることは価値が高いと思います。楽しみに勉強させていただきたいと思います。