拡大する非正規の無期化

今朝の日経新聞から。

 契約社員やパート・アルバイトなど期間を定めて雇用する非正規社員を、無期雇用の契約に切り替える企業が増えている。2018年4月から勤続年数で5年を超える非正規社員は無期雇用を申し入れできるようになり、対象は400万人以上に上る。18年4月を待たずに無期雇用を認めることで有能な人材を囲い込む動きが加速してきた。
 13年4月に施行された改正労働契約法に基づき、企業は無期雇用を希望する勤続5年超の非正規社員を正社員などに転換できる。職務や勤務地を限定した正社員や、契約期間だけを無期にすることもできる。
 さらに人手不足も深刻化し、人材確保が難しくなっている。独自のルールで非正規社員をより待遇の良い正社員などに切り替えて人材の定着につなげる企業も相次いでいる。

 企業は非正規社員を人件費や業務の調整弁として、景気変動などに合わせて人員を増減させてきた。今後は無期転換や正社員化で人件費といった固定費が増え、企業の収益を圧迫する可能性もある。生産性を高めてコスト上昇分を吸収し、競争力の向上につなげられるかが問われる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18859070U7A710C1MM8000/

個別で見ると間違いなく無期化や賃金引き上げが行われている事例があるわけで、今後、労働市場全体でどの程度の規模に拡大していくかが注目されます。特に、雇用が安定するというのは将来不安の軽減にかなり資するはずなので、個人消費への好影響も期待したいところです。記事にもあるように来年4月には有期5年無期転換が施行されますが、それまで現状のような人手不足が続けば、心配されていた直前の雇止めも少数にとどまるかもしれません。
そこで問題は「景気変動などに合わせて人員を増減させてきた」のをどうするか、ということですが、これはどうなるのだろう。現時点ではそのリスクはわかっちゃいるけど(だから有期にしてきたわけで)、そうしないと足下の人材確保ができないということでこうなっているのだろうと思います。もちろん、正社員登用すれば正社員と同様の雇用保護がかかるでしょうし、従来型の正社員への転換でなくても、少なくとも有期雇用の反復更新(雇止め法理)に較べれば保護は強くなると考えるべきでしょう。有期雇用時と仕事や働き方はまったく変わらず、単に無期になったという人は、まあ仕事や勤務地が限定された契約であろうと思われるわけで、どの程度の雇用保護がかかるのかは難しい問題です。でまあ周知のとおり一部には「当該職務あるいは当該勤務地が消滅ないし縮小した場合には整理解雇しうる」という意見があり、連合などはそれが「解雇しやすい新しい雇用形態」になるのではないかと警戒しているわけですが、しかし何でもやりますどこでも行きますという従来型の正社員と比較すればある程度雇用保障が弱くなるのが自然なようにも思います。おそらくは、4要素のうちの回避努力の部分で変わってくる(配置転換までは求めない)ということになるのでしょうか。