今野浩一郎・佐藤博樹『人事管理入門 第3版』

 今野浩一郎先生・佐藤博樹先生から、『人事管理入門 第3版』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

マネジメント・テキスト 人事管理入門(第3版)

マネジメント・テキスト 人事管理入門(第3版)

 定評あるテキストの10年ぶりの改訂版です。表紙は紫→緑ときて今度は青ですね。
 データ類が新しいものにアップデートされ、新たな調査結果などがいくつか追記されています。第2版では企業事例が多く追加されましたが、第3版ではダイバーシティ、転勤、パワハラ同一労働同一賃金や介護離職など、この10年間の新たな動きがトピックスとして追加されています。本文は実は2002年の第1版からあまり変わっていないのですが、基本というものはそうそう変わらないというのがむしろ当たり前なのでしょう。ビジネススクール向けの標準的なテキストという感じで、ある程度経験を積んだ人事担当者の体系的な学びのためにも有益な本だと思います(学部向け・新任向けには有斐閣アルマの第6版ということで)。

ビジネスガイド6月号

 (株)日本法令様から、ビジネスガイド6月号(通巻887号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

ビジネスガイド 2020年 06 月号 [雑誌]

ビジネスガイド 2020年 06 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 雑誌
 今号の特集は「実務に直結!2019年度重要労働裁判例」と「労働関係・社会保険の改正項目を一元整理」となっており、前者は千葉大の皆川宏之先生による昨年度の重要判例の解説です。判例は皆川先生のチョイスでしょうが、たしかに実務的に煩雑だったり一般的でなかったりするものが集められていて、こうした案件を抱える担当者には有益なものといえそうです。後者は今国会での法改正を一覧的に整理したもので便利そうです。
 また、これらとは別に「特別増ページ」として「新型コロナ対策による社保・税・融資ほか」がまとめられています。締め切りの関係で4月20日現在の情報となっていますが、労働だけでなく総務系や税務・融資などの情報もまとまっており、中小企業でこのあたりを一手に引き受けている総務課長さんといった人には便利ではないかと思います。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」の第4回は「高年齢者雇用安定法の弊害」と題して高年齢者雇用を論じておられます。例によって極論も紹介されていて面白いのですが、結論的には40歳あたりからエリートと職種・勤務地限定のノンエリートに振り分けることで高齢期の就労を可能にするというご提案になっています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は今回は「SDGs」で、グローバルな人権保護の法的展開が紹介されています。

日本労働研究雑誌5月号

 約一月ぶりくらいになりますが日曜日に出社して郵便物を回収してまいりました。ということで遅くなりましたがこの間に到着していたいただきもののお礼など。
 (独)労働政策研究・研修機構様から、日本労働研究雑誌5月号(通巻718号)をお送りいただきました。ありがとうございます。おそらく書店には6月号が並ぶ時期ではなかろうかと思うので大変遅くなったのですが、上記のような事情のためご容赦願えればと。

日本労働研究雑誌 2020年 05 月号 [雑誌]

日本労働研究雑誌 2020年 05 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/04/28
  • メディア: 雑誌
 今号の特集は「東京圏一極集中による労働市場への影響」で、東京に関する論文が4本、東京一極集中下における地方に関する論文が2本収載されています。私も都民ですが、実感以上に東京と「東京以外」の労働市場には大きな差があり、東京で見ている風景で日本全体を議論することはできないことを再確認できます。なお私の職業キャリアは半分が東京、半分が愛知なのですが、愛知/名古屋圏は実は大阪圏以上に東京に近いということも示されていて興味深いものがあります。

菅野和夫『労働法の基軸』

 菅野和夫先生から、最近著『労働法の基軸-学者五十年の思惟』(聞き手 岩村正彦・荒木尚志)をご恵投いただきました。ありがとうございます。

労働法の基軸

労働法の基軸

 労働法学の泰斗である菅野和夫先生が、その生い立ちから今日に至るまでを、門下の岩村先生と荒木先生のインタビューに答える形で綴られた本です。大学生活から司法修習ののち、石川吉右衛門先生の招きで東大の助手になられた経緯はまことにPlanned Happenstanceそのものといえましょう。
 その後の、研究にとどまらず、教育、学務、政策、労委での公務、学会活動、国際活動などの多岐にわたる分野における、それぞれに目覚ましいご活躍は、まさにある意味での「労働法学の五十年史」とも言うべきものでしょう。その幅広い活動を貫くぶれないintegrityには敬服のほかありません。
 私自身も、係長時代の1995年から今日まで菅野先生が主宰する政労使学の研究会に参加して勉強させていただき、その中で本づくりにも多少のお手伝いをさせていただいたことは、ささやかながら誇りとするところです。また、労働政策に深く関わっていた90年代後半から2010年くらいまでのさまざまな立法に関する部分については、多分に自分の力不足を再認識するという形ではありましたが、相当の感慨をもって拝読させていただきました。菅野先生と一門先生方の今後ますますのご活躍を期待したいと思います。
 

平成の10冊

 JIL雑誌の「平成の労働市場」特集を読んでいていろいろと感慨深いものがあったのですが、ふと思ったのは私も往々にして「私昭和の人なんでねえ」とか気取ったり開き直ったりしているわけですが実際には人生の半分以上が平成であり、ましてや成人してからは大半が平成であるわけで、「平成の人」以外のなにものでもないよなあと。
 世間ではなにやら「7日間ブックカバーチャレンジ」なるものが流行っているという話もあるらしい(それはそれでフェイスブックでやりはじめたりもしている)ので、まあエントリのネタとしても差し障りが少なかろう(笑)ということで毎年やっている「今年の10冊」の応用編として「平成の10冊」を選んでみました。一著者一冊で順位等はなく、自分が関わった本は選ばないというのは例年の10冊と同じですが、掲載順は発行日順にしてみました。いずれも定評ある名著なので特段のコメントはしませんが、驚いたのは飯田『経済学誕生』と川喜多・佐藤『ユニオン・アイデンティティ大作戦』は中10日、高橋『虚妄の成果主義』と稲葉『経済学という教養』に至ってはなんと中2日で続けて刊行されているのですね。30年間でこんなことが2回もあったというのは驚きです。
 文庫化されている本も何冊かあり、英訳されているものもあったします。一部、オリジナルの書影にはAmazonのリンクが入れられなくなっているものもあり、それらは代わって楽天のリンクにしておりますが、そういう事情なので売れれば消えてしまうかもしれません。

飯田経夫『経済学誕生』(平成3年)

経済学誕生

経済学誕生

川喜多喬佐藤博樹『ユニオン・アイデンティティ大作戦』(平成3年)

八代尚宏『日本的雇用慣行の経済学』(平成9年)

小池和男『日本企業の人材形成』(平成9年)

玄田有史『仕事の中の曖昧な不安』(平成13年)

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

高橋伸夫虚妄の成果主義』(平成16年)

虚妄の成果主義

虚妄の成果主義

大竹文雄『日本の不平等』(平成17年)

日本の不平等

日本の不平等

佐伯年詩雄『現代スポーツを読む』(平成18年)

 なお実は10冊に絞るために「日本人著者に限る」という謎ルールも導入しており、それにより以下3冊を除外いたしましたので番外編で。

フェファー『人材を生かす企業』(平成10年)

ドーア『働くということ』(平成17年)

ジャコービィ『日本の人事部・アメリカの人事部』(平成17年)

 しかしあれだな、やはり平成前半期に偏っている感は否めないな。まあ「定評あるもの」という評価が定着したものを選んでいるからでしょうね…。

中部産政研『50歳代のスタッフがイキイキと活躍できる働き方』

 (公財)中部産業・労働政策研究会様から、第8期調査研究の報告書『50歳代のスタッフがイキイキと活躍できる働き方』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。研究主査は同志社の藤本哲史先生と関西外大の古田克利先生です。
 開くと本文冒頭にいきなり朝日新聞に掲載された「働かないおじさん、妖精さん」特集の後払い賃金の模式図がそのまま引用されていて意表を突かれる(笑)わけですが、まあ時宜を得た調査テーマだということは間違いないでしょう。こうした世間の論調や、先行研究の成果なども踏まえつつ、表題にあるような働き方を探ろうという試みです。調査対象は中京地区の大手企業8社のホワイトカラー・エンジニアで全体の8割強が製造業となっています。
 結果をみると、まず全体的には、仕事に対する意識や意欲、達成感などに関する質問が多数あるわけですが、ほぼ例外なく
50歳未満マネージャー>50代マネージャー>50歳未満スタッフ>50代スタッフ
【50代スタッフについては】マネージャー経験者>非経験者
 という結果が出ています。この構造は非常に安定的で、現にマネージャーであること、マネージャー経験があることが「イキイキと働く」ために大きな意義を有することが見てとれます。いっぽうでその差は(設問によりますが)大きなものではないため、調査対象企業では世間で言われるような典型的な「働かないおじさん」問題は大きなものではないとされています。
 まあ、あえて大雑把かつ下世話にまとめてしまえば、40代マネージャーはポストを得て「前途洋々」、40代スタッフは「まだ先がある」のに対して、50代マネージャーは「一応勝ち組だけど先は見えている」、50代スタッフは「上は望めない」という状況(もちろん例外は多々ありましょうが)というところでしょうから、まあこういった結果になるのも納得いくものがあります。
 もうひとつ、個別の設問から興味深い結果をご紹介しますと、仕事の特性(協働性、裁量性、重要性…といったもの)と、50代/50歳未満・マネージャー/スタッフといった類型との関係を見てみると、

  • 50歳未満スタッフ:「仕事の困難性」(担当業務に必要とされる能力が保有能力を上回る)が他の類型と較べて最も高い
  • 50歳未満マネージャー:「仕事の協働性」「裁量性」「重要性」(成果の業績への影響度)「役割明確性」「多技能性」(さまざまな能力が求められる)が他の類型と較べて最も高い
  • 50代マネージャー:(類型中で最も高い仕事特性はない)
  • 50代スタッフ(元マネージャー):「仕事の一貫性」(最初から最後まで自分でやり切る)が他の類型と較べて最も高い
  • 50代スタッフ(マネージャー経験なし):「仕事の簡易性」(担当業務に必要とされる能力が保有能力を下回る)が他の類型と較べて最も高い

 という結果が出ています。「一貫性」というのも、現実的には多分に「雑用もすべて自分でやらなければいけない」という意味であることを考えれば、「能力の高い高年齢者に能力に見合った仕事が付与できていない」というポスト詰まり・仕事詰まりの状況にあることが明らかに見て取れる結果だろうと思います。
 まあ、限られた企業、かつ労働条件の優れた大企業が対象の調査なので、一般化することは相当に慎重であるべきだろうとは思われますが、しかし貴重な調査ではないかと思います。もうひとつ特筆すべきなのは、これは中部産政研の調査では毎回みられる特徴なのですが、自由記述欄の回答が非常に多いことがあげられます。やはり調査対象との関係で多様性は高くないのではありますが、働き方や仕事、あるいは生活との関係についても深く考えていることがうかがわれる内容で、かなり率直な本音もあり、失礼ながら新聞記事より参考になるのではないかなどとも思いました。

日本労働研究雑誌4月号

(独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』4月号(通巻717号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

日本労働研究雑誌 2020年 04 月号 [雑誌]

日本労働研究雑誌 2020年 04 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 雑誌

 4月号は例年初学者向けに短い解説記事を集めた特集が組まれていますが、今年のテーマは「平成の労働市場」です。賃金や失業をはじめとして、女性、高齢者、外国人、あるいはワーク・ライフ・バランスといった多様性の観点や、労使関係や労働政策に至るまで、幅広いテーマについて、綺羅星のごとくまことに豪華なそれぞれの第一人者が平成期の動向についてまとめ、評価しています。佐藤・藤村・八代『新しい人事労務管理』を通読した初学者や、経団連の『春季労使交渉・労使協議の手引き』で現状を把握した新任人事担当者にとっては、近年の経緯を振り返るに恰好の文献といえそうです。
 私自身振り返ってみても、平成元年から平成11年、平成18年から平成23年の計15年間は人事担当者でしたし、直接の人事担当者ではないものの労働政策に関わっていた時期も含めれば平成30年間の8割は労働市場に関わってきましたので、この特集にはさまざまな記憶が呼び起こされますし、感慨を覚える部分も多々あります。『労務事情』誌の昨年1月1日・15日合併号に掲載された「”平成”の労務管理」という座談会に呼んでいただいたとき(
「労務事情」1月合併号座談会「“平成”の労務管理」 - 労務屋ブログ(旧「吐息の日々」)
)には冒頭でこんな発言をしましたが、今考えても実務担当者の実感としてはこういう感じだったかなあと思います。

 平成の30年は、経済環境が悪化するなかで構造改革が叫ばれてきたことが、企業の人事管理にも非常に大きな影響を与えた時代だったと思います。ただし、さまざまな変化はあったものの、昭和の時代に大切にしてきた日本的な人事管理というものは、かなり温存されていると思います。裏返せば、日本的な人事管理のよいところを守るべく労使で苦戦してきた30年という考え方もできるのではないでしょうか。

 もちろん、それゆえに労働市場の二極化や就職氷河期問題なども発生してしまった、という側面に議論は展開していくわけですが。