玄田有史編『30代の働く地図』

 玄田有史先生から、編著『30代の働く地図』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

30代の働く地図

30代の働く地図

 全労済協会が開催した「これからの働き方研究会」の成果をまとめたものとのことで、いわば「旬」の労働研究者(大御所もいますが)たちが「転職」「副業」「学び」「家庭」「健康」などなど、職業生活のさまざまな場面について分析、解説しています。とりわけ、連合の村上陽子総合局長が登場して労組、集団的労使関係について論じておられるのは私としてもたいへん頼もしく感じました。
 30代といえば大久保幸夫氏の「川下り・山登り理論」で川下りから山登りへと移行する時期であり、さまざまなイベントやストレスに向き合う時期でもあります。そんな場面での手がかりとして、大いに参照されてほしい本だと思います。

経団連出版編『新入社員に贈る言葉』

 経団連事業サービスの讃井暢子さんから、経団連出版編『新入社員に贈る言葉』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

新入社員に贈る言葉

新入社員に贈る言葉

 各界の著名人による新入社員へのエールを集めた本です。私が旧日経連に関わりはじめた1990年代後半にはすでに刊行されていて、伊丹敬之先生や佐伯啓思先生はその当時すでに寄稿されていたように記憶しています(もちろん内容は変わっていることと思いますが)。それぞれの個性が出ていて内容もさまざまであり、受け止めも人により場面によりそれぞれだろうと思いますが、新入社員や、新入社員を迎える職場の上司、同僚が「なにかの気づき」を得るきっかけとして成功といるからこそ、刊行が続いているのだろうと思います。

JILPT様から

(独)労働政策研究・研修機構様から、以下の資料をお送りいただきました。いつもありがとうございます。例によって、すべて全文を機構のウェブサイトから読むことができます。

【労働政策研究報告書】
No.201(2018年9月)『「日本的高卒就職システム」の現在―1997年・2007年・2017年の事例調査から―』
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2018/0201.html
【調査シリーズ】
No.180(2018年7月)『病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査)』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/180.html
No.181(2018年7月)『病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/181.html
No.182(2018年8月)『「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」及び「社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査」結果』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/182.html
No.183(2018年10月)『ものづくり産業における労働生産性向上に向けた人材育成と能力開発に関する調査結果』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/183.html
【資料シリーズ】
No.205(2018年6月)『近年の技術革新と雇用に関わる諸外国の政策動向』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2018/205.htmlNo.207(2018年9月)No.206(2018年6月)『職業訓練の効果測定制度に関する調査研究―アメリカ―』https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2018/206.html
『諸外国における外国人材受入制度―非高度人材の位置づけ― ―イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、韓国、台湾、シンガポール―』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2018/207.html

 さすがにまだざっと斜めに目を通しただけですが、例によって外国人材受入制度に関する国際比較という時宜にかなった資料が発表されているのをはじめいずれも充実の資料ですが、今回特に注目すべきは『「日本的高卒就職システム」の現在―1997年・2007年・2017年の事例調査から―』ではないでしょうか。副題のとおり、10年毎に21年間(一部高校には1985年の調査もある)にわたって同一高校・同一企業を対象とした調査を行ってその変化を調べています。経済環境の変化や(卒業生ではなく)企業の上司の世代交代が高卒就職やその後の受容に与えた影響が印象深く描き出されています。つかこれやっぱりJILPTでなければできない調査だよねえと思うことしきり。今後も継続されることと期待します。

あなたがダイバーシティを語らないでください。

毎週月曜日の日経新聞朝刊の女性欄に、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏が「ダイバーシティ進化論」というコラムを連載しておられます。本日のお題は「経団連の就活ルール廃止 僕が賛成する理由」というのですが…。

 経団連は2021年卒から、大学生らの採用面接の解禁日などを定めていた指針の廃止を決めた。僕の意見? 賛成に決まっている。だが、「外資系企業が先に採用してしまう」といったことが理由ではない。
…現在の時価総額が高い企業の顔ぶれを見ればいい。トップ5に並ぶのは、GAFA…とマイクロソフトだ。フェイスブックは2004年の設立で、人間にたとえれば14歳。…、日本が経済的に落ち込んだ主因は新しい産業を生み出せなかったからである。
 では…製造業と、GAFAや「ユニコーン」と呼ばれる未上場の急成長企業は何が違うのか。人材に注目すると、製造業の場合、働く人に占める大卒の割合は半数足らず。一方、GAFAユニコーンはほぼ全員が大卒で経営幹部は博士や修士ばかりである。高学歴で多国籍なうえ、個性を貫くオタクが多い。そうした人たちがワイワイ、ガヤガヤ議論しているところから新しい産業が生み出されている。
 ここまで分かれば、日本にまた日が昇るために何が必要かは明らかだ。企業は世界中から学生が集まる魅力的な職場をつくりあげ、多様な人材を採用しよう。将来を見据え、そうした理由で就活ルール廃止が語られるなら大賛成だ。学生はガンガン勉強しよう。学生時代に必死に学んだ経験がなければ、好きなことを突き詰めていく力も培われず、米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏のような逸材は出てこない。
 人は皆、顔が違うように発想や興味も異なる。多様な人が集まらなければ面白い考えは生まれない。成長のカギはそこにこそある。
(平成30年11月5日付日本経済新聞朝刊から)

 これのどこがダイバーシティなのさ。要するに(使いたくないことばだが)低学歴はいらないって言ってるわけだろこれは?これをダイバーシティだと言い張るのであれば(まあ不可能ではないとも思うが)、少なくともこのお方の脳内の「ダイバーシティ」にはインクルージョンは一切ないということにはなるでしょうね。「人材に注目すると、製造業の場合、働く人に占める大卒の割合は半数足らず。一方、GAFAユニコーンはほぼ全員が大卒で経営幹部は博士や修士ばかり」まあ、それは事実ではあるでしょう。しかし、それをこういう場で・こういう表現で表明する人を私は信用できないし、ダイバーシティを語ってほしくない。
 同じように「人は皆、顔が違うように発想や興味も異なる。多様な人が集まらなければ面白い考えは生まれない」というのも、まあこの文脈で普通に読めば低学歴者は多様じゃないって意味に読めますよね。大卒でなくても「個性を貫くオタク」いると思うけどなあ。まあ意地悪な読み方なのかもしれませんが、しかし全国紙でダイバーシティを論じる文章がこれではまずかろうとも思う。
 もちろん現実には、日本に限らず世界中の国々で相当割合の人が大学などに進学することなく職業人となっているわけですし、新卒一括採用はそうした人たちが円滑に職業生活に移行していける仕組みとして一定の評価を受けているわけです。でまあそれは大卒者についてもかなりの程度言えているというのも現実だろうと思いますが、まあこのお方はそういうことには興味ないんでしょうね。
 ビジネスの世界では一世を風靡し、ダイバーシティ経営でも成果を上げておられてその業績は立派なものだと私としても率直に思いますし、私の大学はそういう大学にするんですというのであればそれはそれで経営方針としてはすばらしいものだとも思います(だから立命館もこの人を招いたのだろうと思わなくもない)。そのあたりも含めて経歴を拝見すると大学に進学しない人たちにあまり関心を持たないのも致し方なかろうかとも思いますし、実際問題として他人に書かせている可能性もかなりあると思うので同情しなくもない。しなくもないが、まあしかし語るに落ちてるよねえという感もあり、正直こういう人間観の人がダイバーシティを論じるのは私には抵抗があるかなと、まあその程度の話です。もちろんただの難癖であるというご感想もありましょう。ということで私がどう思おうがこういうのが好きな人というのも当然いるでしょうし、いるのが普通だし、いていいのだとも思います、といういつもの結論に到達して終わります。はあ。

日本労働研究雑誌11月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、日本労働研究雑誌11月号(通巻700号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。通巻700号の節目の号ですが、特段の言及はないようです。
www.jil.go.jp
毎年11月号は恒例のディアローグ「労働判例この1年の争点」ですが、特集は「民法と労働法の交錯」で、珍しく?法学色が非常に際立つ内容になっています。巻頭の「提言」が今般の債権法の大改正を仕切った内田貴先生というのところにJIL雑誌の学際性を感じます。
 えーとあとどうでもいいことですが掘れば原油が出てくる国の話をされてもなあという感は少々うけなくもなく、かの国はそのような事情でたいへんに豊かであるにもかかわらず富を国内に蓄積して国際経済への貢献に消極的な感があり私個人としてはどうかなあと思っているところではあるのですが、まあ私のそういう先入観を打破する連載になるかもしれないと期待しております。

濱口桂一郎『日本の労働法政策』

hamachan先生ことJILPTの濱口桂一郎先生から、ご著書『日本の労働法政策』をご恵投いただきました。ありがとうございます。


日本の労働法政策|労働政策研究・研修機構(JILPT)
2004年にミネルヴァから出ている『労働法政策』の大幅増補版ということで、古くは明治期からこんにちに到るまでのわが国の労働法政策について余すところなく論じられた、1,000頁を優に超える記念碑的な大作です。実は浅倉ほか『労働運動を切り拓く』を読みふけっているところに到着したのですが、その直後から本書の第4部を参照しながら読むようになりました(笑)し、私自身が労働法政策に深入りしていた週40時間制導入あたりから労働契約法の制定あたりまでのところは非常に懐かしくつまみ食いしました。通読するのは骨が折れそうですが、座右に置いて都度参照するにも非常に優れた文献と思います。欲を言えば巻末に索引がほしいところですが、さらに100頁くらい増えてしまいそうなので致し方ないところでしょうか。

労働法政策

労働法政策

浅倉むつ子・萩原久美子・神尾真知子・井上久美枝・連合総研編『労働運動を切り拓く』

連合総研の新谷信幸さんから(だと思う)、浅倉むつ子・萩原久美子・神尾真知子・井上久美枝・連合総研編『労働運動を切り拓く-女性たちによる闘いの軌跡』をお送りいただきました。ありがとうございます。

労働運動を切り拓く 女性たちによる闘いの軌跡

労働運動を切り拓く 女性たちによる闘いの軌跡

陳腐な言いぐさですが、まさに大河ドラマと申しましょうか。戦後まもない1949年から組合活動に従事された多田とよ子氏をはじめ、昭和から平成の女性労働運動に重要な役割を果たし、その手で社会を変えてきた12人の活動家のインタビュー(うち1人は講演録)を中心に、編者たちが解説を加えた本です。活動家の義憤、苦悩、闘志や連帯がひしひしと感じられるとともに、その不屈さ、前向きさ、そして明るさに深い感銘を覚えます。職場に到着するや否や思わず読みふけってしまいましたが、こういう地雷を職場に送られると仕事にならないので困るのですが(笑)。じっくりと噛みしめて読みたい本だと思います。

  • 余談ですが、多田氏が戦時中に私の自宅近くの調布市(国領町)の東京重機工業で働いていたとの記述がありました。地元では知られていることですが戦時中には10万挺近い歩兵小銃を生産した軍需工場であり、戦後は工業用ミシン事業の生産拠点として発展しましたが、産業構造が変化する中で2000年には稼働を終了して本社のみが残り、2010年には本社移転にともなって跡地がイトーヨーカドーに売却され、現在ではショッピングモールとなっています。この週末にでも、あらためて訪れてみたいと思います。