社研の玄田有史先生から、『セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて』をご恵投いただきました。ありがとうございます。
連合総研がコロナ禍の中で2021年1月に立ち上げた「with/after コロナの雇用・生活のセーフティネットに関する調査研究委員会」の成果をまとめた本とのことで、委員会の委員とゲスト2人がそれぞれ各1章を執筆し、主査を務めた玄田先生が序章と終章で解題しておられます。委員会は「セーフティネットに関する」ですが内容は書名のとおり前半がコロナ禍におけるセーフティネット施策の検証・評価、後半はコロナ禍のもと重要性を増した「集団」について論じられています。しっかり勉強させていただきます。日本労働研究雑誌6月号
(独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』6月号(通巻755号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
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今号の特集は「ジョブをめぐる2つの論点」で、論点の一つはもちろん昨今の「メンバーシップ型/ジョブ型」をめぐる議論、もう一つは働く人にとっての(自分の)ジョブ、ということです。前者については「メンバーシップ型/ジョブ型」の元祖である濱口桂一郎先生が昭和初期から現在に至るまでの議論と実践の歴史を語られていて、近年の議論については『ジョブ型VSメンバーシップ型-日本の雇用を展望する』の共著者である八代充史先生に譲られています。労働法の観点から職務の特定について検討した鈴木俊晴先生の論文も興味深いものがあります。後者においてはわが国の第一人者のひとりである高尾義明先生がジョブ・クラフティングについて論じておられます。毎月のことながら今号も楽しみに勉強させていただきたいと思います。
高野研一『DX時代のビジネスリーダー』
中村圭介『企業再編と労働組合』
法政大学の中村圭介先生から、最近著『企業再編と労働組合』をご恵投いただきました。ありがとうございます。
さまざまな形態の企業再編における労働組合の対応と関与の事例が12例収載されています。最後にシンプルなまとめがありますがほぼ事例集と申し上げていいでしょう。多くの場合は企業再生や経営再建にともなうものなので労組にとっても厳しい内容が多いのですが、労組リーダーたちの組合員を守るという強い決意と、経営に対する当事者意識にもとづく積極的な関与が印象に残ります。いずれの事例にもドラマがあり、思わず読みふけってしまう本ですが、一読して労働組合の大切さを再認識する本でもあります。まさに(シリーズ名のとおり)労働組合必携であるとともに、経営サイドにも広く読まれてほしい本だと思います。労働政策研究報告書「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」
濱口桂一郎先生から、(独)労働政策研究・研修機構労働政策研究報告書No.226「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」をお送りいただきました。ありがとうございます。
www.jil.go.jp
令和2~3年の2年間に終局した労働審判の調停・審判事案、裁判上の和解事案、計1200件程度について閲覧・データ入力・分析し、平成26年の同種調査(この際は労働局あっせんについても調査されていた)と比較したうえで解決金額の決定に影響を及ぼす要因等について分析・考察したというまことに勤勉な調査です。「厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が令和4年4月に報告書を取りまとめ、同月より労働政策審議会労働条件政策分科会における審議が始まったところであるが、同分科会における審議に資するため」の調査とのことですが、微力ながら東京地裁で労働審判員を務める弊員も大いに勉強させていただきたいと思います。
ビジネスガイド6月号
(株)日本法令様から、『ビジネスガイド』6月号(通巻934号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
今号の特集は「改正労基則等と実務ー無期転換ルールの見直し,労働契約関係の明確化,裁量労働制の見直し」と「固定残業代制度に新判断!3.10最高裁判決の影響と対応」の2本で、後者は先日の熊本総合運輸事件の最高裁判決の解説です。まあ実務的にはこの手の固定残業制も止めを刺されたなという感じの判決ですが、内容的にはなかなかわかりにくい判決でもあり、丁寧に解説されていて有益です。八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務・社会保険」は「女性の年金と「年収の壁」」と題して女性の年金を取り上げ、「106万円の壁」「130万円の壁」や第3号被保険者制度などの問題点を解説されています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は今回は「副業・兼業」を取り上げ、近年の政策動向と法的問題点が検討されています。コラム「労基法38条1項についての疑問」の「根本的な解決方法は、通算規定に関する行政解釈を改め、同一事業主の下での複数事業場での労働の場合に限定されると解し(これは条文には反さない)、健康確保は労働時間規制とは別の枠組みで配慮すること」というご意見には深く同感するところです(学界の有力説でもあります)。
武石恵美子『キャリア開発論第2版』
法政大学の武石恵美子先生から、『キャリア開発論第2版ー自律性と多様性に向き合う』をご恵投いただきました。ありがとうございます。
2016年に刊行された第1版の改訂版とのことで、第1版の書評は以下に書いております。roumuya.hatenablog.com
基本的なコンセプトや構成は変わりありませんが、さまざまな調査結果などが最新のものに置き換えられ(あるいは付け加えられ)、近年のジョブ型、DX、リスキリング、兼業・副業といったエピソードも追加されています。私のビジネススクールの授業でも受講者にレコメンドしている一冊であり、引き続き大いに活用させていただきたいと思います。