産政研フォーラム夏号

 (公財)中部産業・労働政策研究会(中部産政研)様から、機関誌『産政研フォーラム』夏号(通巻142号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
http://www.sanseiken.or.jp/forum/
 今回の特集は「これからの人材確保を考える3」で、立命館大学教授の守屋貴司先生が中小企業の外国人材確保、大正大学海老原嗣生先生が大卒者採用についてそれぞれ論考を寄せておられます。守屋先生の論考では特定技能等については母国語による事前の十分な説明や入職後のていねいな」フォローやサポート、キャリアアップや能力向上を通じた昇給といった適切当然な取り組みの必要性を述べつつ、外国人正社員の採用・活用のポイントにも言及しておられるのが目をひきます。特集とは別の記事になりますが、運送会社役員によるドライバー確保の取り組みも紹介されており、こちらも労働条件や労働環境の改善をメインに王道の取り組みという感があり、やはり人材確保とはそういうものかと。海老原氏は近年の大学進学状況を踏まえて女性大卒者活用の重要性を訴えておられます。
 大竹文雄先生の呼び物の連載「社会を見る眼」では、米国においては経済学研究で競業避止特約が生産性向上やイノベーションの妨げになるとの結果が出ていることから、それを踏まえてこれを禁止する動きがあることが紹介されています。日本においても同様の結果となるかどうかは興味深いところですが、格差拡大につながる可能性が高いだけに政策的な難しさもありそうです。

末啓一郎『改訂新版テレワーク導入・整備の法的アプローチ』

 (一社)経団連事業サービスの駒井永子さんから、経団連出版の最新刊、末啓一郎『改訂新版テレワーク導入・整備の法的アプローチートラブル回避の留意点のと労務管理のポイント』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 2020年に刊行された『テレワーク導入の法的アプローチートラブル回避の留意点のと労務管理のポイント』の改訂新版ですね。
roumuya.hatenablog.com
 今回の改訂新版は、冒頭に2020年から現在にかけての動向に関する1章が新規に設けられているほか、自営型テレワークの法規制と課題についても1章をあてて書き下ろされているなど、内容が大幅に充実しており、ボリューム的にも174ページから232ページに増量されています。価格のほうも1,760円から2,420円に値上がりしておりますが、昨今の物価上昇下においてページ単価がほぼ維持されているのはお値打ちと申せましょうか。テレワークをめぐる実務も落ち着いてきたのではないかと思いますが、それでも留意点は数多いので実務家には有益な一冊のように思われます。

ビジネスガイド8月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』8月号(通巻948号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「改正育児・介護休業法&次世代法、雇用保険法」と「R6.4.16最高裁判決から導かれる「事業場外みなし」の運用とテレワークの留意点」の2本で、前者は実務的に要対応項目が多いので担当者の参考となるものと思います。後者は前号(7月号)でも紙幅を割いて紹介・解説されていた協同組合グローブ事件の最高裁判決を受けて、事業場外みなしの活用拡大の可能性と留意点について解説されています。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」は「労働時間規制の見直し」ということで、この4月に公表された厚労省「労働基準関係法制研究会」(これについては開始時に期待をこめたエントリを書きました↓)の「これまでの議論の整理」の中から、最初に示されている労働時間関連の主要な項目についてコメントしておられます。
roumuya.hatenablog.com
 この研究会は労働時間関連以外にも労基法上の事業・労働者性、労使コミュニケーションなど重要な論点が議論されており、その後も精力的に開催されていますので、私もそのうちコメントを試みたいと思います。
 大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は「通常の賃金」と題して、昨年6月の社会福祉法人さざんか会事件の千葉地裁判決*1をふまえて、労働密度の低い時間帯の割増賃金の算定基礎として、契約において特に労働の対価が合意されているような場合においては、大星ビル事件最高裁判決が示した「通常の賃金」を下回る別途の賃金を使用できる可能性について検討した上で、立法論として最低賃金の適用なども含めて総合的に再検討することの必要性を指摘しておられます。この事件は控訴されていて確か?そろそろ高裁判決が出るはずのタイミングなのでタイムリーな記事であり、判決に注目したいところです。

*1:この事件、判決が出たときは「勤務時間と認定された」ことが妙に注目されていた記憶がありますがこれが労働時間に該当することについては専門家の間ではほぼ異論はないはずで、ここで論じられている割増賃金の算定基礎こそが核心でしょう。

日本労働研究雑誌7月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』7月号(通巻768号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「人口減少社会における労働・社会保障問題」です。現在「異次元の少子化対策」という勇ましい政策スローガンが掲げられているわけですが、2020年(令和2)に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では「一人でも多くの若い世代の結婚や出産の希望をかなえる『希望出生率1.8』の実現」が政策目標となっているわけで(まあ希望しない人にこどもを持てとは言えないのは当然だ)、これを達成することができたとしても人口減少は不可避なわけです(実際には人口置換水準とされる2.07を達成しても人口構成上当分は人口減少が続くらしい)。つまり人口減少を前提に政策を考えていく必要があるわけで、この特集でもそうした観点もふまえて多角的な論考が集められています。松浦司先生の「少子化対策の30年を振り返る」は、この間の少子化対策のレビュー、現実に進んだ人口動態、さまざまな政策の効果検証、今後の論点が整理されていてたいへん参考になりますし、鈴木亘先生と小島宗一郎先生の「独身者データと既婚者の振り返りデータを用いた結婚の決定要因に関する経済分析」は、大規模調査をもとにさまざまな結婚の決定要因を分析しており、まあそうだよなという(ある意味身も蓋もない)結果もあれは少し意外な結果もあってたいへん興味深いものがあります。他の論文もしっかり勉強させていただきたいと思います。

日本能率協会コンサルティング『「イノベーションの種を見つける」ケーススタディ』

 (一社)経団連事業サービスの駒井永子さんから、経団連出版の最新刊、日本能率協会コンサルティング『「イノベーションの種を見つける」ケーススタディ』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 (株)日本能率協会コンサルティング日本能率協会(JMA)が手がけるいくつかの営利事業のひとつで、さまざまな経営課題、社会課題を解決していくための発想法入門という趣の本です。マーケティングが多いですが、身近な職場の問題から行政の政策課題まで多様な20の事例を通じて学ぶことができます。これをいかに現実に応用し役立てていくかは読者次第、というところでしょうか。

日本労働研究雑誌6月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』6月号(通巻767号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「若年労働の現在地」で、小杉礼子先生が巻頭の提言を寄せられているのに加え、高崎美沙先生や田澤実先生はじめ日本キャリアデザイン学会でもお世話になっている先生方の論考が集められており、あれだな5月号に較べると私にはだいぶ読みやすそうだな。楽しみに勉強させていただきます。
 

ビジネスガイド7月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』7月号(通巻947号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「注目最高裁判決」と「使える助成金」の二本立てで、前者は最近注目を集めた共同組合グローブ事件と滋賀県社会福祉協議会事件の最高裁判決が取り上げられ、経営法曹の向井蘭先生が解説しておられます。実は今号では大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」も「事業場外みなし労働時間制」をとりあげ、協同組合グローブ事件を論じておられます。
 協同組合グローブ事件では、大内先生も指摘されておられるとおり「労働時間を算定し難いとき」についての新たな解釈基準が示されるのではないかとの期待もありましたが、残念ながら今回そこまでの到達はありませんでした。とはいえ、向井先生が強調しておられるとおり、従来の阪急トラベルサポート事件の枠組みに従った地裁・高裁判決が覆ったことの意義は大きいでしょう。まあ、実務的には、これも向井先生が言われるように(大意)残業代を払いたくないからみなし、というのはダメとしたもんだというのが最大の教訓なのかもしれません。
 滋賀県社会福祉協議会事件については、「ジョブ型」雇用社会の新たな判断、みたいな報道もされていたように思いますが、でまあこのケースについては(職種限定の合意があったので)ジョブ型と言ってよろしかろうとも思うところ、ということは職種変更ではなく解雇ならよかったのか?というのが反射的に想起されるわけです(当時Twitterでこう書いた)。
 向井先生もこの点に関しては「…別の職種変更について打診を行えば足り…転換を拒否…金銭提示による退職の交渉となり、決裂すれば整理解雇が可能」と述べられていますね。
 なお八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保障」は「令和6年度年金財政検証の課題」で、4月16日の社会保障審議会年金部会に提出された「令和6年度財政検証の基本的枠組み、オプション試算(案)について」をもとに、現状の政府の検討が年金支給開始年齢の引き上げや第3種被保険者制度の廃止といった本来必要な検討事項に踏み込めていないことを厳しく批判しておられます。