川崎鶴見臨港バス(2)

昨日の続きで、川崎鶴見臨港バスストライキについて若干の感想など書きたいと思います。とはいえ事実関係の情報が圧倒的に不足しているのでたぶんに憶測含みの内容になりますのでご容赦を。
とりあえず、事実関係を報じたものとしてはこれでしょうか。
http://www.kanaloco.jp/article/216752
なぜかコピペできない仕様になっているようで(なぜ?)、リンク先が消えてしまったらそれまでなのですがまあ仕方ない。
さて争議行為自体は労使の対等性を確保するために不可欠なものとして法律で認められた権利であり、交渉が不調であれば労働協約などのルールにしたがって戦略的に活用すべきものと思います。ただしこうした交通機関ストライキというのは乗客にかなりの不便を強いるわけで、もちろん誰もが労働者の権利行使として前向きに容認してくれることが望ましいわけですが、まあ現実はそうではないわけで、したがって乗客が味方についてくれるような作戦が望まれるということにはなりましょう。
そういう観点からは、今回の要求は賃金ではなく勤務形態・労働時間であったようで、「朝のラッシュ時乗務→途中休憩→夕方のラッシュ時乗務」という「中休勤務」が過重であって乗客の安全上問題なのでその緩和を求める、たとえば一部を早番・遅番の2交替性にするという要求だったようです。これは乗客の立場に立て、乗客の理解を得るという趣旨にもかなう作戦といえそうです。
これに対して会社は人員不足などを理由に拒んでいたらしく、双方の主張の当否は情報不足もあり私にはとても判断できないのですが、法令違反などはないという点は労組も争っていないようですので、となると「乗客の安全」についても最低限の水準は確保できていたということではないかと思います。
もちろん乗客にとっても交通機関はより安全であるに越したことはないわけですので、運転手の負荷を軽減して安全性を高めることは歓迎ではあるでしょう。いっぽうで、どの程度なのかは不明ですが労組の要求を入れれば乗務員数を相応に増やす必要があり、それを人手不足下で実現するには労働条件をそれなりに改善する必要もあるでしょう。要するにコストアップであり、それは結局は運賃という形で乗客負担にならざるを得ません。
つまり労組としてこの闘争に勝利するのになにより効果的なのはそういう観点まで含めて乗客を味方につける、たとえばターミナルなどで「運賃5割増でもより安全なバスに乗りたい」という乗客の署名をたくさん集めるとか、そういう作戦が経営を動かす上でも効き目がありそうに思えるわけです。会社としては、コストアップ分を価格転嫁しても売り上げが減少せず、むしろ乗客の安全志向を適切にとらえた経営ということになるのなら、労組の要求を拒む理由はないでしょう。労組は同時に手当の増額なども求めていたようですが、これについても乗客から「私たちの安全を預かる乗務員の賃金がこんな低水準では困る」という声をあげてくれれば相当に実現に近づくのではないかと思われます。
逆にいえば、乗客の大半が「最低限の安全水準を満足していてくれれば安いほうがいい」と考えているのだとすると、経営としても労組の主張の理は認めたとしても(実際認めるかどうかはわかりませんが)なかなか要求には応じにくいだろうと思われます。
ということであまりお答えになっていないとは思いますが、繰り返し書きますが事実関係が不明なので双方の主張の当否はわからない中、現実の合目的的な運動論としてはこんなことも考えられるかなあという感想でした。