成長分野への労働移動

昨日の日経新聞が、技術者の転職が増加していると報じていました。

 ロボットや自動運転など成長分野の事業拡大を狙って技術者を中途採用する企業が増えている。…シャープなどが希望退職を伴う構造改革を進めており、各社は即戦力を取り込む好機とみる。得意事業に安住せずに次の成長を模索する動きが広がりそうだ。
 日本電産はグループ全体で中途採用数を前年度と比べて3割増やす。車載部品や家電向けモーターなど成長事業での人手不足を補う。同社は14年に川崎市に基礎技術研究所を設立しており、ロボットや通信関連などの技術開発も加速している。新たに採用した技術者をこうした拠点にも配置し、新事業の開拓を急ぐ。

 転職市場は活況だ。技術系人材紹介のメイテックネクスト(東京・千代田)によると、5月に国内製造業から受けた求人件数は約9千人と前年同月と比べて3割増えた。求人件数は08年のリーマン・ショック直後と比べると5割近く多い。
 構造改革を急ぐ電機大手が人材の供給源となっている。…あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)など産業界では、業界の垣根を越えて取り組む技術課題が増えている。即戦力となる技術者を幅広い分野から雇い入れることで新事業開拓に生かしたいとのニーズは今後も強まるとみられ、技術者を巡る争奪戦は激しくなりそうだ。
平成27年6月25日付日本経済新聞朝刊から)

成長分野の事業拡大を狙って中途採用が拡大し、そこへの転職が増えている図式ですから、まさに成長分野への労働移動が起きているということでしょう。ほらね、それなりの労働条件が提示されればあれこれやらなくても労働移動は起きるんですよ。仮に賃金は多少下がるにしても、雇用不安がないとか、先行きの成長が見込めるとか、権限や仕事のやりがいが大きいとか、さまざまな条件を総合的に判断して魅力的であればいいわけです。つまり、それが本当に成長分野であるなら、この先労働条件の向上が見込めるはずで、であれば現時点での労働条件が多少低くても人は動くということです。
これは企業を超えた転職ですが、東レ富士フイルムのように社内で成長分野に労働力を移動させて成功している例もあります。社内異動であれば労働条件などはほぼ変わらず、かつ転職にともなうロスやコストがなくてすむことを考えると、こうした企業の新たな成長に向けた取り組みを後押しすることも望まれます。
とはいえそれは何度も書いているとおり適切な経済・金融政策運営や、あとはまあ資金調達面での支援といった環境整備に尽きるのであり、企業の人事管理や賃金水準に手を突っ込んであれこれやろうということでは断じてないだろうと思うわけです。