もうひとつきのうの日経から。社会面で報じられていました。
労働紛争の迅速解決のために導入された「労働審判制度」で、2009年の申立件数が過去最高を記録したことが、28日までの最高裁の調査で分かった。全国で3468件に上り、導入4年で約4倍の伸び。長引く不況で、給与未払いや解雇など雇用トラブルの急増が背景にあるとみられる。通常の民事訴訟に比べ、短期間で解決できる利便性が魅力のようだ。
「解雇からわずか4カ月で、解決金の支払いと円満退社の確認までこぎ着けられた」。理由も明かされないまま入社1カ月で突然解雇された20代の依頼者について、大阪地裁に申し立てた労働審判でトラブルを解決した山室匡史弁護士(大阪弁護士会)は、制度の「スピード」を評価する。
審理の中で、会社側が十分な研修をしていなかったことなどが明らかになり、2回の審理で調停が成立。別の職場に早く移りたいという依頼者の要望に沿うことができたという。山室弁護士は「従来なら倍以上の時間がかかったはず」と話す。
労働審判の解決は「3回以内の審理」が原則。結論が出るまでの平均期間は70日余りで、民事訴訟に比べ処理が早いとされる。最高裁によると、導入された06年(4〜12月)には877件だったが、07年は1494件と増加。09年の申立件数も08年の2052件から7割増しで、1年目の4倍に増えたことになる。…利用急増に伴い裁判所側の人手は不足気味。各地裁は担当者増員を図っているが「増加のペースが速すぎて追いついていない」という。
(平成22年7月29日付日本経済新聞朝刊から、以下同じ)
http://www.nikkei.com/paper/article/g=9695999693819695E0E1E2E3938DE0EAE2E5E0E2E3E29180EAE2E2E2;b=20100729
「会社側が十分な研修をしていなかった」というのから想像するに「ろくに仕事を教えてもいないのに、仕事ができないからクビってのはさすがに通りませんよ」というような事件だったんじゃないでしょうかねぇ。風の噂によれば(確たる根拠なし)、労働審判に持ち込まれる事件の相当割合は「いくらなんでも、そりゃ無茶でしょ」という内容だとか。裁判員や「労」の審判員*1はまだしも、「使」の審判員からもそう言われれば、いかに頑固な社長さんでも考え直さざるを得ないということでしょうか。
私がこのブログで以前から「労働者への労働法教育も大切だが、使用者へのそれがさらに重要だ」と主張しているのも、こういう実態があるからです。実際、法人登記をするときとか、政府の助成制度を使うときとか、経営者への労働法教育を義務づけたらどうだろうとか思うことがあります。まあ、なかなか難しいでしょうし、本当に教育が必要な経営者ほど総務課長あたりに「代わりに受けておけ」とかいう話になってしまいそうな気もしますが…。