長妻厚労相、独法の健康保険料の職員負担引き上げを要請

もうひとつ14日の日経新聞から。長妻厚労相ネタです。

 長妻昭厚生労働相は13日、同省が所管する独立行政法人健康保険組合の保険料率について、事業主である独法と健保の加入者である職員で半分ずつ負担するように各独法に要請した。福祉医療機構労働者健康福祉機構など6法人では、職員の負担料率を低く設定する一方で、独法本体が多く負担していた。厚労相の要請を受け各独法は見直しを進める。
 国家公務員が加入する健康保険の保険料率は国と職員で2分の1ずつ負担している。長妻厚労相は「独法には国からの補助金などが交付されており、独法も国と同じように労使折半にするのが適切」と指摘した。
(平成22年5月14日付日本経済新聞朝刊から)

「独法には国からの補助金などが交付されており、独法も国と同じように労使折半にするのが適切」とのことですが、どういう理屈なんでしょうか?国からの補助金は民間企業にもたくさん交付されていますが、補助金をもらっている企業はみんな健康保険料を労使折半にしろとでも?
また、この理屈でいけば、国からの補助金などを交付されている独法では賃金が国より高くてはいけないとかいった話にもなりかねません。国より労働時間が長いのに賃金は低くしなければならないのか、といった問題が起こるでしょう。逆に、職員の保険料負担が増えて独法の負担が減った分は賃金を上げてもいいのか(それでトータルは同じ)、という問題もあります。
長妻厚労相としては「国からの補助金が職員の健康保険料負担優遇に使われているのはけしからん」ということなのでしょう。まあ、それはわからないではありません。しかし、健康保険料の負担割合というのは総合的な労働条件の中のごく一部にしか過ぎません。大赤字の国から補助金を受けているのに職員が厚遇されるのはおかしいじゃないか、ということなのであれば、労働条件全体をみて考える必要があります。たしかに、独法は人件費などの規律が働きにくく、労組に要求されるままに国や民間企業の労働条件、労働市場の相場などと較べて不適切な水準になっている可能性はあります(現にどこかがそうだと言っているわけではありません)から、見直しそのものは否定しませんし、適切に行われるべきでしょう。しかし、それは職員の行う仕事、能力、貢献度等々と労働条件全体とを見較べて総合的に判断されるべきものでしょう。
目についたところに手をつける、という長妻氏の行動は、政治的なパフォーマンスとしては「あり」なのかもしれませんが、人事管理としてはかなりまずいやり方なのではないかと思います。各独法は見直しを進めるとのことですが、はたしてどうなるのか、労組や職員個人はどう受け止めるのか、やや心配されるところではあります。余計なお世話でしょうが。