選手会訴訟キター

週末の報道から。来るべきものが来たか、という感じなのでしょうか。

 労働組合日本プロ野球選手会宮本慎也会長=ヤクルト)は20日、東京都内で臨時大会を開き、フリーエージェント(FA)権取得期間の短縮や、FA選手を獲得した球団に対する補償金の撤廃など、選手の保留制度の改善を求めて訴訟を起こすことを全会一致で決議した。
 遅くても年内には提訴する方針で、係争中でも日本プロフェッショナル野球組織(NPB)との労使交渉は継続する。宮本会長は「球界の構造改革を言っても進んでいない。この手段(訴訟)しかない」と、司法に判断を委ねる理由を説明した。
 今回の決議案について、NPB側は27日に選手会から報告を受ける予定になっている。長谷川一雄コミッショナー事務局長は「話を聞いてから、どうするかということ」と話すにとどめた。
(平成19年7月21日付産経新聞朝刊から)

たしかに、米国では大リーグ選手会が類似の訴訟を起こした結果、かなりの変化があったわけですが、なにも訴訟大国の米国を真似ずとも、日本的な労使協議で、という気もしないではありません。選手会代理人弁護士の商売のための訴訟でなければいいのですが。
もっとも、日本のプロ野球の経営サイドにも問題はあって、一部のオーナーのように選手・選手会を軽視し、強権的な姿勢で対等・誠実な協議に応じないようでは、裁判所に解決の場を求められても致し方ないと申せましょう。
保留権の問題は球団経営に限らず、戦力の均等化や選手の育成などにも関わってきますので、なかなか難しいのだろうと思いますが、米国にベンチマーク相手がいるのですから、参考にしてほしいものです。具体的な制度だけではなく、プロフェッショナル・ベースボールに対する考え方のようなものも含めて。どこまで行ってもプロ野球は質量ともそれなりの対戦相手を必要とするビジネスである以上、特定の球団がいかなる方法を使っても自分だけが勝ち続けたい、と考えれば全体が成り立たなくなるわけですから。
それはそれとして、選手にしてみれば自分が契約したい球団と自由に契約したいと考えるのは当然のことでしょう。もし、プロ野球全体が一個の民間企業であり、12の事業部があるとしたら、企業の発展のためには12の事業部の業績が均衡していなければならないという状況だと考えられるでしょう。となると、それぞれの事業部の労働条件や人材活用、人材育成なども同等でなければならないことになるでしょう。もちろん、短期的には事業部によって業績の好不調は当然あるわけで、業績のよい事業部にインセンティブを与えてさらに業績向上への努力をうながすしくみも必要でしょう。そして、結果的に業績に一定のばらつきが出て、ある程度固定化したならば、不振の事業部のてこ入れのために好業績の事業部から人材を移動させるということも必要でしょう。要するに、どの事業部にいてもそれほど大きくは変わらない、という状況にすることで、配置に対する不満を小さくできるわけです。まあ、日本のプロ野球についていえば現状は人気の格差が大きく、それによって選手のセカンドキャリアも大きく異なってくるような実態もあるようなので、そうそう理屈どおりにはいかないでしょうが。
いずれにしても、選手の労働者性についてはさまざまな議論があるにしても、球団には使用者的な、選手には労働者的な要素があることも間違いないわけで、やはり労使関係や人事労務管理の観点から発想することもやはり必要なのではないかと思います。