「てめえら人間じゃねえ叩っ斬ってやる」ってのは人間は叩っ斬ってはいけませんというのが前提だと思います。いやこれの話なんですが。
国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)の分科会は6日、国の長期ビジョン「フロンティア構想」の報告書をまとめた。国家の衰退を防ぎ、個人や企業が能力を最大限生かして新たな価値を生む国家像を2050年に実現するための政策を提言。「40歳定年」で雇用を流動化するなど労働生産性を高める改革案を盛り込んだ。
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改革案の柱は雇用分野だ。60歳定年制では企業内に人材が固定化し、産業の新陳代謝を阻害していると指摘。労使が合意すれば、管理職に変わる人が増える40歳での定年制もできる柔軟な雇用ルールを求めた。早期定年を選んだ企業には退職者への定年後1〜2年間の所得補償を義務付ける。社員の再教育の支援制度も作る。雇用契約は原則、有期とし、正社員と非正規の区分もなくす。
もっとも定年制の前倒しには労働者の強い反発が必至だ。社内教育で従業員に先行投資する企業側の抵抗も予想される。改革の実現には転職市場や年功型の退職金制度、人材育成などと一体的な検討が必要だ。改革案は長期的な指針で、全て早期に実現を目指すという位置づけではない。
(平成24年7月7日付日本経済新聞朝刊から)
他紙の報じぶりは集団自衛権の部分に集中していて、「改革案の柱」はそちらではないという気がかなりするのですが、まあこのあたり日経新聞の特色を出したというところでしょうか。毎日新聞によると「報告書は「ただちに政府の方針にならない」(古川元久国家戦略担当相)が、首相は「世界に先駆的な国家モデルを提示することが必要だ」と述べた。」のだそうです。
記事どおりだとするとかなり刺激的な内容のようなのでさっそく見てみたのですが(http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku1.pdf)、いきなり「「人財戦略」を打ち立てる必要がある。」とか書いているのを見て即座にゴミ箱に入れることにしました(笑)。その理由はhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20090305で書きましたのでご関心の向きは。
でまあこの分科会、座長は日本学術会議会長で座長代理が元環境事務次官、メンバーを見ても労働の専門家はいません。で、「人財戦略」を担当した「繁栄のフロンティア部会」の名簿をみても労働の専門家らしき人は見当たらす、しかも部会長が東大の柳川範之先生と来た日にはそりゃしょうがないよねえという感じです。しょうがない理由はhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20090508をごらんください。もちろん柳川先生は経済学の重鎮であられるわけですが、しかし労働には素人(失礼)なわけでして。失礼を重々承知でさらにいえば、座長や代理は格別分科会のほうの他のメンバーはいかにも池田信夫先生のご所論にコロッとだまされそうな感じの人が揃っているようなこらこらこら。いやこれは失礼しました。
なおこの「人財戦略」そのものにも簡単にコメントしますと、要するに正社員を非正社員化して格差をなくそうというありがちなもので、極言すればイノベーションに貢献できない人は奴隷になるか死ねというものです、というまとめはさすがに乱暴でしょうかね。まあ2050年というはるか先の話なので乱暴くらいがいいのかもしれません。とはいえ、「世界に先駆的」と自画自賛しているのですが移民のいないアメリカとさほど変わらないという印象もあります。
勢い余ってさらに暴言を吐かせていただければ、国家戦略室でくすぶっている官僚がうっぷんを吐き出したか、長期雇用が嫌いな勘違い事務局員が書き散らかしたかした文章を専門家でないメンバーがスルーしてしまったというところではないでしょうか。いやさすがにこれは言い過ぎもさらに過ぎるというものですがここまで書けばなにか釣れるかとこらこらこら。いや本エントリはすべて根拠のないあてこすりですのでどうかそのようにと逃げる私。