愚痴

きのうのエントリを書いたあと、そういえばお元気だろうかとhamachan先生のブログを拝見したところ、相変わらずお元気というか進行の速いこと。ちなみに私の職場ではhamachan先生と大内先生のブログがおおいに参照されているようです。勉強になりますものね。
ただ、きのうのエントリのこの記述には正直アタマを抱えました。「だからリタイアメントエイジを定年と訳してはいけないと何遍言ったら・・・」というエントリです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-a69f.html

読売新聞が「フランス、「60歳定年」廃止へ」という記事を書いていますが、

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100615-OYT1T00967.htm

【パリ=林路郎】フランスが欧米では珍しい60歳定年制を見直し、段階的に62〜63歳に引き上げる。労働者の福祉向上のためミッテラン社会党政権が導入した制度も、30年近くを経て、市場が迫る財政赤字削減の圧力に抗しきれなくなった。

 ここで言ってるリタイアメントエイジ(引退年齢)とは、公的年金制度における支給開始年齢のことであって、企業における強制退職年齢のことではありません。
 いやがる労働者をむりやり「定年だから」といって社外におっぽり出す年齢のことではなく、早く年金が欲しいと思っている労働者が安心して会社を辞められる年齢のことです。
 というようなことは、今まで何遍・・・どころか何百遍繰り返してきたかと思いますが、それでもやっぱり「定年」と書くんですねえ。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-a69f.html

欧米でいう「リタイアメントエイジ」が日本の「定年」とは異なる、というご指摘はまあそうだろうと思うのですが、それにしても日本の「定年」は「いやがる労働者をむりやり「定年だから」といって社外におっぽり出す年齢のこと」なんですかそうですか。
ま、それも間違いなく一面の真実ですし、労働官僚であるhamachan先生がこのように述べられることも無理はないと思います。
ただ、企業の人事屋にしてみれば、定年というのは「技能が陳腐化してしまった労働者に再教育を実施したり、体力や健康が衰えてしまった労働者をそれに応じた仕事に配置転換したりして、なんとしてもそこまでは雇い続ける年齢」のことでもあるんですよ。
もちろん、それは悪いことどころか非常に好ましいことで、そうやって定年までのなんらかの形での(それこそ転籍出向とかの手段も動員して)雇用を約束することで、安心して企業特殊的熟練の蓄積に励み、後進を育成し、生産性向上に協力してもらっているわけですね。
ということは、これはより生産性の高い他の労働者が、同一労働同一賃金なんていう硬いことは言わずに「俺たちがその分カバーするからそれでいいよ!」と言ってくれるから成り立っているわけです。まあ、自分だっていつ技能が陳腐化するかわからないし、病気になるかも知れないということで、こういう互助的な人事管理を労使協議を通じて作り上げてきたのです。

  • 為念申し上げておきますが、これはまだたいした仕事もできない20代前半のたわけた若造事情をよく知らない若年者が「俺のところの中高年はお荷物だ」みたいな思い上がったことをぬかす勘違いに陥るのとは全く違いますからね。すみません私いま機嫌が悪いんです。

脱線しますが年齢で一律にやるのがけしからんという理屈は理解はできるのですが、でも実際に人事管理やってみると年齢でやるというのはまことに公平、客観的、機会均等で公明正大な納得のいきやすい方法なんですよねえ。まあ、それは貴様等の勝手な都合であって怠慢であるといわれれば、ええ怠慢でないとは申し上げませんが、なら手前でやってみせてくれという話に当然なるわけで、退職だけでいい、年齢も年次も無関係な人事管理を、年齢による管理である定年延長なんか絶対にやらずに合同庁舎5号館でやれるもんならやってみろさあやってみせてくれ(すみません、少し虫の居所が悪いもので)でも本当に5号館で定年を廃止して全員死ぬまで抱え込んでも、それ全部国民負担になるんですよねえ…orzまあこれは脱線です。
いや、hamachan先生も十分ご承知のこととは信頼申し上げておりますが…しかし、現役の労働キャリアに日本の定年制は労働者をおっぽり出す冷血な制度で、フランスは労働者が安心して引退できる楽園だ、みたいな書き方をされたら、現場の人事担当者としては逆上して芸風が変わるのもご勘弁願いたいと思うわけです。いや本当に、先生のブログは事情を知らない人もたくさん読んでいるわけですから…。
ちなみに、欧米のリタイアメント・エイジは「公的年金制度における支給開始年齢のこと」とのことで、たしかに政策的には高齢者の就労促進が大きな課題になっているわけですが、一方で企業はというと、たしか欧米では企業年金などを巧妙に組み合わせて「この年齢で引退しないと損するよ(だから退職したら)」といった運用がけっこう普及していたという記憶があります。今現在ウラをとったわけではないので勘違いかもしれませんし、フランスがどうかはまた別の話かもしれませんが、このあたりは逆に勉強しておく必要もあるかなと思っています。