パソナグループ、「新卒無業」2,000人を雇用

今朝の日経新聞から。

 大学を卒業しても就職先が決まらない若者を支援する動きが産学で始まった。人材サービス大手のパソナグループは今春、就職できなかった約2000人の大卒者を一時的に雇用し他社への就職を支援する。…
 厚生労働省文部科学省によると、…内定を得られなかった大学生は、去年の同じ時期より約2万6000人多い約8万人だった。
 パソナはこうした大卒者2000人を今夏までに契約社員として採用する。契約期間は最長2年間。同社で月に数日働いたり研修を受けたりしながら別の会社への転職活動に取り組んでもらう。
 電話応対などの基礎的な研修は無料。貿易業務などの専門的な研修は有料とする方針。同制度に賛同する企業に割安で派遣し、実務経験を積みながら正社員を目指すコースも設定した。
(平成22年4月19日付日本経済新聞朝刊から)

パソナのサイトにある「フレッシュキャリア社員制度」というのがどうやらこれのようです。
http://www.pasonagroup.co.jp/news/company/2010/p10032902.html
http://www.pasona.co.jp/shinsotsushien/f-career/
それをみると、パソナが雇用して、仕事はパソナもしくは派遣先で就労するということのようですが、記事に「月数日」とある勤務日数については「1ヶ月の最低保証の契約日数は1日」で「前月中に確認」となっています。「契約日(所定労働日)」という表現も見えますので、前月中に「来月はいつといつが仕事ですからね」ということで1日単位で雇用契約を締結するということになるのでしょうか。そのいっぽうで「雇用契約期間中、1ヶ月に1日(4時間)のお仕事を保証します」という文言も見えますし、「更新の上限は通算2年まで」ともされていて、さすがにこれは仕事がある日だけの契約の通算で2年ということではないでしょう。となると、やたらに休日の多い(所定労働日の少ない)有期雇用契約で、具体的な労働日/休日は前月中に確定するということなのでしょうか。かなり不自然ではありますが、これでもとりあえず法的な問題はないということではあるのでしょうが…。まあ、給与に関しては月10日、20日の例が示されていますので、「最低1日」というのは思い切り安全サイド、慎重な「最低保証」ということかもしれません。
給与のほうは「東京のモデル例」で4時間勤務の日額4,560円、7.5時間勤務の日額8,550円となっていて、まあ最低賃金の問題はなさそうです。通勤手当もあり(上限1万円)、社会保障も就業条件により適用となっていて、さすがにこのあたりは大手だけに問題はなさそうです。
いっぽうで「研修」のほうはどうかというと、まずは「「フレッシュキャリア社員」として働きはじめる前に、まずはビジネスマナーやコミュニケーション能力など社会人に必要な「ヒューマンスキル」を高めるための研修を行います」とのことで、具体的にはモチベーション研修、ビジネスマナー研修、職種・業種を知る、などがあげられています。これが記事にある「電話応対などの基礎的な研修は無料」ということでしょう。加えて、働きながら「「人材創造大学校」でビジネススキルや専門知識を身につけます。」とのことです。この「人材創造大学校」はパソナが最近東京、大阪、名古屋、仙台に設立した若者向け、特に新卒無業者向けの職業訓練施設のことで、そこで「貿易業務などの専門的な研修は有料とする」ということですね。その「有料」がおいくらくらいなのかが興味深いところですが、web上をざっと探した限りでは不明でした。
ということで、ありていに申し上げればこれはパソナの「人材創造大学校」のお客様に、パソナまたはその派遣先でのアルバイトを提供する、というものだということになりそうです。「訓練期間中の生活保障給付」を月10万円受給(年200万円までアルバイト可だったはず)して、これで月数日働いてさらに数万円稼ぐことができれば、「人材創造大学校」の受講料を支払うことも容易になるだろうというねらいもあるのでしょうか。もちろん、パソナがいうように「様々な企業で実務経験を積んでもらう」ことで得られるものも多々あるわけですから、それはそれで研修としても有意義でしょうが。
さて記事は続けて他の人材ビジネス業者の動向も紹介しています。

 リクルート日本商工会議所からの受託事業として、未就職の大卒者などに中小企業の求人情報を提供するインターネット上のサイトを7月に開設する。USEN子会社のインテリジェンス(東京・千代田)も広島県仙台市などから未就職の大卒者などの職探しを支援する事業を受託した。
 人材各社は大企業の採用抑制で就職難に陥った大卒者と、慢性的な人手不足状態にある中小企業をつなぐことで潜在的な求人需要を掘り起こす。
(同)

海老原嗣生さんが「嗜好の壁」と呼んでおられるような、こうしたミスマッチがどの程度あるのかわかりませんが、パソナのスキームは若者にとっても魅力的な中小企業への派遣を通じてマッチングをはかるという意味でも有益なように思われます。これを通じて「人材創造大学校」で知識などを身につけた大卒者を試用のうえ採用できるとなれば、それなりの派遣料金を支払っても受け入れようという中小企業もあるかもしれません。
定員は2,000人ということで、どの程度まで広がるのか注目したいところです。