労働ビッグバンの集中審議、柳沢厚労相に続いては、攻める立場(?のはず)の甘利経産省の発言をみてみます。
各論で4点申し上げる。まず1点目が再チャレンジ。社会全体で人材育成を行う仕組みの強化である。人的資本は我が国の最大の資源であり、人材育成は社会全体で取り組むべき課題。若年層に能力開発機会を多く提供するためにも、若年者向けのジョブマッチング機能の強化は重要。人生の複線化の観点からも、一度社会に出た者が人生の様々な段階、ライフステージで専門的な教育を受けられるように、大学や専門職大学院などにおける学び直しの機会を増やすべき。企業における人材育成は、今後とも労働者の実践的能力やモチベーション向上のために重要。企業は労働市場で能力に合った者をチョイスしてくれば良いとよく言われるが、これにより、企業の人材育成が一時低下して、競争力の低下につながった。しかし、人材投資減税を行ったところ、企業が自分で能力アップを図り競争力が復活したということがある。一方で、企業として専門的技能の重要性が高まる中で、自前主義による人材育成だけでなく、大学等による教育訓練の成果を活用することも重要。
人材投資減税についてはいかにも自画自賛、我田引水の感はありますが、そこまではまことにごもっともな指摘といえましょう。企業に大学を活用しろというのは余計なお世話という感があり、技術系ではそれなりに産学の連携が進展しているように、企業が必要に応じてやればいいのではないかという気がします。
各論の2点目は、雇用形態の多様化について。製品のライフサイクルの短縮化など競争環境が激化する中で、我が国製造業が生産のフレキシビリティを確保するために、派遣や請負を活用することには十分合理性がある。一方で、安直に低廉な労働力を求めることのみを動機とする派遣や請負の拡大は不適当と考える。いずれにせよ、現在の派遣・請負制度は製造現場の実態と乖離しており、製造業の国内回帰に水を差しかねない。発注者から請負労働者に対する指揮命令については、以前も話が出たが、製造現場の実態を十分に踏まえた上で、安全を確保する責任を発注者が負うことを前提に検討を行うべきではないか。
これはまた、偽装請負問題などのキャンペーンが大々的にはられているなかでなかなか大胆な発言で、堂々と正論を述べる勇気には敬意を表します。まあ、「安直に低廉な労働力を求めることのみを動機とする派遣や請負の拡大は不適当」というところでギリギリ折れ合いをつけている、というところでしょうか。せっかくここまで言ったのなら、派遣・請負労働者のキャリア形成が重大な問題だということまで触れてほしかったのですが、それは強欲というものか。
各論の3点目は、雇用形態の違いに対して中立的な制度の整備。パート労働者への社会保障の適用拡大は、多様な働き方を容易にすることを通じて、労働供給の増加や生産性の向上にもつながる可能性があり、中長期的な経済成長の観点からも重要な課題。一方で、経済に与える影響も非常に大きいので、企業の負担水準や経営に及ぼす影響についても検討が必要。経済産業省としてもできる範囲で協力したい。
これは私もこのブログでたびたび書いているように、そろそろ本気で取り組むべきことのように思います。経済が好調で、パートの人手不足感のある現在のような状況下のほうがずっとやりやすいと思うのですが。
4点目は、外国人労働者の活用。専門的・技術的分野の外国人の受入れの促進は重要な課題である。そのためには、受入れ環境の整備等に取り組むことが重要であり、またEPA交渉における相手国からの要望等を踏まえ、専門的・技術的分野の範囲や受入れ制度についても見直しを検討すべき。アジアをはじめとする諸外国の技術移転に貢献してきた研修技能実習制度については、制度の厳格な管理を徹底するとともに、実習生の中で優秀な者に限って、高度な技能習得機会を与える制度なども検討すべき。留学生は我が国企業にイノベーションの源泉となる創造性・多様性をもたらすことから、優秀な留学生の就職促進については検討すべきである。他方、いわゆる単純労働者の受入れについては、社会的コストの増加等を十分勘案した上で、慎重に検討することが必要。
うーん、「専門的・技術的分野の外国人の受入れの促進は重要な課題」ときましたか。現実には産業界での高度人材外国人のニーズはあまり高くなく、受け入れ人数も減少しているのが実態のようなのですが…。もっとも、EPA交渉と範囲拡大、研修・技能実習制度などに言及しているところをみると、看護師や介護関連職、技能職が中心的関心事なのかもしれませんが。