今朝の日経新聞で小さく報道されていました。
企業再生支援機構に支援を要請中の日本航空は、例年12月1日に実施している従業員の昇格を取りやめる。対象は約200人で年数千万円のコスト削減につながる見込み。政府が多額の公的資金を投入する方向で調整するなか自社でもコスト抑制に取り組む。
日航の同措置は2002年の旧日本エアシステム(JAS)との合併以来初めて。具体的には一般職から課長クラス、課長クラスから次長級への昇格を一時的に取りやめる。12月以降も従来の役職のままとなるため、給与水準を抑えられる。
日航は特別早期退職も検討しているほか、年末一時金の見送り、西松遥社長ら本体の取締役・執行役員らの12月の役員報酬の支給見送りを決めている。
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt254/20091118AS1D180AE18112009.html
昇格凍結は決してない話ではありませんが、それにしても珍しい部類には入るでしょう。かなり追い詰められないと踏み切りにくい手法で、日本航空はやはり相当厳しい状況にあるということのようです。
記事は「給与水準を抑えられる」と比較的穏やかな書き方をしていますが、これは間違いなく「賃下げ」です。春闘などでのいわゆる「定昇」というのはいわば賃金の平均変化率であり、これは純粋に賃金制度上昇給する部分(たとえば年功的に昇給する年齢別の賃金テーブルを持っている場合など)に加えて、多くの場合人事制度上昇給する部分も含まれています。たとえば人事考課別の賃金テーブルを持っている場合において、一般的に個人別でみると人事考課は年々高くなる傾向にあることが多いため、したがって個人でみれば昇給となる、といったものです。昇進昇格もこれと同様で、昇進昇格にともなって賃金が上がる分というのも定昇相当分には含まれます。これを、今年は人事制度上約束している、または慣行として定着している昇格を行わない、というわけですから、すなわちこれは「定昇割れ」、つまりマイナスベア=賃下げとなります。
加えて、昇格を抑制されることによるモラルダウン効果もかなりのものになる危険性があります。やはり昇格はなんといっても働く人の動機付けとしては非常に大きな存在ですから、これを「今年はなし」「一年待て」といわれるのは対象者にとっては相当がっかりくるでしょう。もちろん、今年も昇格できなかったと思えばいいのだ、という理屈もあるでしょうし、少なくとも個人の賃金は下がるわけではない、という考え方もできるでしょうが、しかし「今度こそ」と思っていた人の落胆はかなり大きいのではないでしょうか。まあ、お前だけじゃない、みんな我慢しているのだ、差はついていないのだ、ということであきらめてもらうしかないということかもしれませんが…。
しかし、課長、次長といえば勤め人にとってはやはり欲しい肩書きではあるでしょう。案外、昇給は一年遅れでもいいから肩書きだけでも欲しい…という人も少なくないかもしれません。