今朝の日経新聞「経済教室」に、一橋大学准教授の川口大司氏が標題のような論考を寄せられています。
「最低賃金よりも税還付軸に」との見出しもついたこの論考では、まずは貧困対策としての最低賃金引き上げ、教育訓練、生活保護の拡充についてその特徴と長短をわかりやすく整理しています。特に、ファミリーレストランの例をひいて最低賃金の引き上げが雇用に影響を与えることを説明したくだりはわかりやすく、感心しました。そして、もっとも望ましい施策として「還付可能な税額控除」を提案しています。
我が国の所得税は所得額から控除額を差し引いたものに課税する仕組みになっているが、控除額が所得額を上回っても、税額がゼロになるだけだ。そこで控除額が所得額を上回るとき、上回った分に依存した還付金を受け取れるようにするのが還付可能な税額控除制度である。控除額を労働所得にうまく依存させれば貧困世帯のみを対象にした賃金補助を行うことは可能だし、実際に米国や英国ではすでに導入され福祉改革を成功に導いている。
(平成20年3月5日付日本経済新聞朝刊「経済教室」から)
「還付可能な税額控除制度」という表現が使われていますが、世間では「勤労所得税額控除」といわれることが多いのではないでしょうか。「ワークフェア」の発想に立った施策として有意義ではないかと思います。いわゆる「ワーキングプア」対策の方向性として説得力に富むものであり、ぜひご一読をおすすめしたいと思います。