10月6日のエントリについて、興味深いコメントをいただきました。ブログがたまってどうにもならないので(このエントリは実際には10月17日に書いています)、新たなエントリで回答することで数を稼ごうと思います(笑)。
さて、いただいたコメントは次のようなものです。
# ぐう 『労務屋さんは、異なる年齢層の賃金差をとりあげていますが、
それは通常格差とは認識されないんじゃないですか?
たとえば、25歳と50歳の社員の賃金差を取り上げても、
25歳の社員が50歳になれば同額の賃金を受け取れるの
であれば、極端な話、同一人の賃金を異時点間で比較している
のにすぎません。
生涯賃金で比べれば、どんぐりの背比べでしょう?
しかし、成果主義賃金は個々人の生涯賃金に大きな違いを生じる
可能性があります。
だからこそ問題視されているのではないかと考えています。』# TT 『成果主義で、一定の成績以下はもうこの会社におっちゃいかんよ、ということになれば、生涯年収で相当の差がつくかもしれません(結局は空手形でしかないものに由来する「生涯賃金」という考え方が、理論としてはともかく現実で意味あるのか、とも思ってしまうのですが、とりあえずそれは横においときます)。
そうでなければ、高度成長でない環境下ではまず「総額抑制」になってしまうので、格差はそんなに広がらないということにはたしかになるのかも。』
私も、成果主義賃金は生涯賃金の格差を拡大する可能性はあると思います。おそらく、拡大するのでしょう。ただし、それは成果主義を導入して30年、40年たってはじめて観察できるもののはずです。しかるに、わが国で「成果主義」がはやり始めたのは1995年ころのことですから、まだせいぜい10年しか経っていません。橘木氏は6日のエントリで引用したとおり、その著書のなかで、「成果主義賃金が導入されれば、労働者間の賃金格差の拡大が生じます。したがって、成果主義賃金を導入する企業が増えれば、賃金格差が広がっていくことになります。現在の所得格差の拡大には、こうした要因も考えられます。」と書いています。氏が生涯賃金を意識して「労働者間の賃金格差の拡大」と書いたのだとすれば、それが「現在の所得格差の拡大」の要因になるとの見解はあきらかに疑問があります。
ただし、大竹文雄先生などが指摘されているとおり「将来所得格差が拡大するのではないか」との見通しを持つことで、現時点で格差が拡大しているかのような印象を受けてしまう、ということはありうるのではないかと思います。ただ、こうした効果は、「成果主義は本当に格差を拡大させている」というのとは違うのではないかと思います。