雇用のミスマッチ

 本日の日経新聞「経済教室」欄に阪大の佐々木勝先生が登場して労働市場と人事管理について論じておられます。お題は「「適所適材」雇用で生産性向上 賃上げへの課題」となっていますね。ちょうど春闘も本格化するタイミングでもあり、賃上げにも触れていますが、論点の中心はミスマッチです。
 まずは日本の労働生産性が伸び悩んでいる、低いというお約束の話があり、次いでこう述べられています。

 長期的に賃金を引き上げるには…労働市場全体の構造改革に取り組まなければならない。本稿では構造改革の一部として、企業と労働者のミスマッチの解消とジョブ型雇用の採用に焦点を当てて論じたい。
 雇用のミスマッチとは、企業が求めている能力やスキルと労働者が有する能力やスキルがかみ合わないことだ。かみ合わないがゆえに、本来の生産力が発揮できず、非効率的な生産活動に陥ってしまう。
 川田恵介・東大准教授によると、12~16年の間で、新規雇用の9%前後がミスマッチにより喪失されている。実際、この期間に求人数と求職者数のズレが幅広い職種で観察される(図参照)。例えば、事務職は求人を求職者が大幅に上回る過大な労働供給、保安やサービスは過小な労働供給に陥っている。
 雇用のミスマッチには「事前のミスマッチ」と「事後のミスマッチ」がある。前者の場合、企業は求めている能力やスキルを有する労働者に出会えず、未充足のままの求人状態が続く。あるいは求められる能力やスキルを有していない労働者が、求職活動してもなかなか仕事が見つからない状態もありうる。図が示すのは事前のミスマッチだ。
(令和4年2月18日付日本経済新聞朝刊「経済教室」から、以下同じ)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0143O0R00C22A2000000/(有料すみません)

 これだと保安やサービスの労働供給が過小なのは求められる能力やスキルを有する労働者が少ないからだと読めてしまうのですがそれでいいのでしょうか。現実に起きているのは、能力やスキルを持つ人が希望する労働条件に達していないという労働条件のミスマッチではないかと思うのですが。

 一方、生産性に関わるのは事後のミスマッチだ。企業が雇用契約を結んだ後に採用した労働者の能力やスキルが期待していたほどの水準でなかったことに気付くことだ。企業が最新の機材を用意しても、それを扱えるスキルが労働者になければ、機材は宝の持ち腐れになる。ほかにも労働者の能力やスキルに見合う仕事を用意しなければ、その労働者本来の能力を最大限に生かせないケースもある。
 こうしたミスマッチが、企業と労働者の組み合わせが持つ潜在的な生産性を引き下げる。採用プロセスの段階では互いにわからない部分があるので、必ずしも質の高いマッチングが成立するとは限らない。

 これも現実に起きていることとはだいぶ違うよねえと思うところで、もちろん「採用プロセスの段階では互いにわからない部分がある」のはそのとおりとしても、日本企業に典型的な新卒一括採用で求められる能力は多くの場合ポテンシャルであって、「最新の機材を用意しても、それを扱えるスキルが労働者になければ、機材は宝の持ち腐れになる」といった具体的なスキルや能力ではないことが多いでしょう。
 一方で深刻な課題になっているのが「労働者の能力やスキルに見合う仕事を用意しなければ、その労働者本来の能力を最大限に生かせない」ことですが、こちらは長年かけて育成し能力を伸ばしてきた中高年社員がその能力に見合った仕事を得られないことが問題なのであり、やはり「採用プロセスの段階では互いにわからない部分がある」といった話ではありません。
 このあと労働者は転職自由だが企業は解雇規制があるのでミスマッチの解消が難しい、解雇規制を緩和して流動化をはかるべきといういつもの話が来て、続いて

 解雇規制の緩和というと労働者にとって不利になるように聞こえるが、必ずしもそうではない。…企業は、これまでのように採用に慎重になりすぎる必要がなくなり、採用人数を増やせる。求職活動する労働者にとっても、採用意欲の旺盛な…新たな求人企業に出会い、就職しやすくなる側面もある。全体的にマッチングの機会が増えることで適所に適材が配置され、雇用のミスマッチの解消が期待できる。
 労働者が解雇された理由がスキルの陳腐化ならば、新たなスキルを習得する職業訓練…のようなセーフティーネット(安全網)を整備したうえで、人材の流動化を促し、ミスマッチの解消を目指すべきだ。

 まあ「必ずしもそうではない」と言われればそうかもしれませんが、しかし不利になることも多いんじゃないかと思います。なにかというと「採用意欲の旺盛な新たな求人企業」であっても労働条件が良好とは限らないという問題があり、実際問題としても転職で賃金が低下することは多々あるわけです。昨年末に発表された令和2年雇用動向調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/kekka_gaiyo-04.pdf)を見ても転職による賃金の上昇/低下はほぼ同じで、これで解雇による転職(とりわけ「技能の陳腐化」を理由とした解雇による転職)が増加したらどうなるか、まあ想像は容易だろうと思うわけです。いやもちろんミスマッチ解消のためにはそれでいいのだという考え方は十分あろうかと思いますが、それが労働者にも有利であると言わんばかりの表現には慎重であるべきだろうと思うわけです。
 さて次をみますと、

 雇用のミスマッチの解消により全体の生産性が向上しても、生産性の異質性は存在する。つまりマッチングがうまくいっても生産性の高い労働者と低い労働者がいる状態は変わらない。ここで重要になるのは、労働者の生産性を把握し、正しく評価することだ。

 ということで、しかしそれは容易ではなく、さらに昨今のリモートワーク拡大でさらに困難が高まっていると指摘されます。そして、

 解決方法の一つは、働きぶりをなるべく可視化して達成度で判断することだ。具体的には「ジョブ型雇用」という雇用制度を導入することが考えられる。これまで多くの日本企業が採用してきた新卒一括採用や年功序列の「メンバーシップ型雇用」とは異なり、ジョブの職務内容に応じて適任者を採用し、その職務の達成度に応じて報酬を支払う。
 上司と部下が職務内容を事前に職務記述書に明記して、互いに合意したうえで雇用契約を結ぶ。職務記述書を基に職務の達成度を確認して報酬を支払う。職務記述書に記載された職務内容を社内で共有すると、従業員同士はある程度互いに求められる職務とその成果を観察できるので、自分たちが正しく公平に評価されているのかを確認できる。

 いやだからそれをやってるから保安やサービスの労働供給が過小になるのだと私などは思うのですが違うのでしょうか。お題にもある「適所適材」は(適材適所とは異なり)「大は小を兼ねる」感覚で仕事に人と賃金を合わせるわけですね。でまあそれが欧米ではスタンダードだというのはそのとおりでしょう。一方で、相対的に高い能力・スキルを持つ人が、それほど高い能力やスキルを要しない(したがってその仕事は十分に遂行しうる)仕事の求人に「この労働条件じゃ応募する気にならないねえ」となるのも、まあ自然な話だろうと思うわけです。
 あとまあこれは海老原嗣生さんとかが繰り返し指摘しておられる話ですが、「職務内容を事前に職務記述書に明記して…職務記述書を基に職務の達成度を確認」すれば「働きぶりをなるべく可視化して達成度で判断する」ことができると言われますがそう簡単ではないという点です。まあこのあたりは海老原さんの専売特許なのでこのあたりをご参照ください。手抜きですみません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20210125-00219252
 なお「従業員同士はある程度互いに求められる職務とその成果を観察できるので、自分たちが正しく公平に評価されているのかを確認できる」というのは私も大事だと思っていて、ただそのために必要なのは職務記述書の共有ではなく人事評価の公開・共有だろうと思います。まあ昇進昇格などである程度は共有されてはいるわけですが、これが毎回の評価まで公開となれば一種のピアレビューというかクロスチェックが働いて、少なくとも恣意的な評価とかはかなり排除されるのではないかと。

 また職務記述書の職務内容と必要なスキルの社外公開は、最適な人材を幅広く募ることを可能にする。
 日立製作所はジョブ型雇用を本体の全社員に適用する方針である。単に導入するだけでなく、職務内容と必要なスキルを社外公開することで、どのような人材を求めているのかを明確に示し、職務遂行に適した人材を効率良く探せるような制度とする。職務内容と必要なスキルの社外公開は、ミスマッチを未然に防ぐ役割を果たす。

 そういえば日立さんのジョブ型って続報がないけどどうなってるのかしら。それはそれとして「職務内容と必要なスキルの社外公開は、ミスマッチを未然に防ぐ」というのは、(特に中途採用においてはですが)もちろんやらないよりは効果があるかもしれませんが、「採用プロセスの段階では互いにわからない部分がある」という事情には変化はないような気もします。まあ「採用後に能力がなければ解雇」とセットにすれば能力がないのにあるかのように装って応募する人を減らすくらいの効果はあるのかもしれません。このあたり、労働市場全体がその方向にならないと、日立さん一社で頑張られても限界はあるような気はするのですが。
 ということで結論はこうなっています。

 欧米と肩を並べるまで賃金を引き上げるには、教育や訓練を通じた労働者個人の人的資本の蓄積だけでなく、「適所適材」が実現しやすい風通しの良い労働市場にしていく必要がある。

 「教育や訓練を通じた労働者個人の人的資本の蓄積」が重要だという点には全面的に賛成しますが、「適所適材」ってのは人的資本のけっこうな部分を無駄にするわけなので、それでただちに賃金が引き上がるものかどうかはやや心配がなくもないような。もちろん活用されているかどうかにかかわらず人的資本が蓄積されるのはけっこうなことだと思いますが、より重要なのは「風通し」といったいわばフローの部分ではなく、蓄積された人的資本が十全に活用されるような良質な雇用を増やすといういわばストックの部分ではなかろうかと思うのですが違うのでしょうか。

日本労働研究雑誌1月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』1月号(通巻738号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。年が変わって、今年の表紙は鉄紺というのでしょうか?なかなか渋い色になりましたね。

 特集は「失業・雇用調整・労働移動」と、労働経済学の保守本流?というイメージですが、今回のパンデミックにともなう労働移動の諸相が実践報告も交えつつ分析されています。UAゼンセンの取り組みについては、その利用例が日本キャリアデザイン学会の会報でも紹介される予定です。

産政研フォーラム冬号

 (公財)中部産業・労働政策研究会様から、機関誌『産政研フォーラム』2021年冬号をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
www.sanseiken.or.jp
 今回の特集は「アフターコロナを見すえた働き方」で、前号の「ウィズコロナ時代の新しい働き方」から一歩前進していますね。内容はリモートワークに関するもので、パンデミックも2年にわたったということで様々なことがわかりつつあるようです。
 本誌の呼び物、大竹文雄先生の連載「社会を見る眼」もやはりリモートワーク関連で「テレワークとピア効果」が取り上げられています。これについては私も似たような実感があり、会社が東京都が運営している会員制サテライトオフィス法人会員になってくれたので頻繁に利用しているのですが、他の会社の見ず知らずの人であっても、周囲に忙しそうに働いている人がいるというだけで、在宅勤務とは明らかに集中力も生産性も高まっていると感じます。厳密に言うと?ピア=会社の同僚ではないのですが、これも一種のピア効果でしょう。

ビジネスガイド2月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』2月号(通巻914号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は雇用保険法・健康保険法改正と実務、法改正を踏まえた育児休業Q&Aの2本で、おそらくはあまり活用されることのない、しかし実務担当者としてはおさえておかなければならない内容となっています。65歳以上のマルチジョブホルダー制度は改正高齢法をふまえての導入でしょうが、どのくらい対象者がいるものなのかしら。まあ追い追い増えていくという見込みでしょうか。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」は、岸田新政権が掲げる「新しい資本主義」に対抗したものか?「新自由主義でなぜ格差が拡大するか」というタイトルで、これまで「新自由主義で格差が拡大」とされてきたものが、実は不十分な規制緩和など政府の失敗によるものであったという事例がいくつか示され、経済は市場の機能に委ねつつ、競争の勝者と敗者の格差拡大には再分配で適切に対応するという経済学の基本的な考え方が強調されています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は今回は「コース別雇用管理」が取り上げられ、これまでのコース別雇用管理をめぐる法的論点を整理したうえで、新たな展開として昨年3月の巴機械サービス事件の地裁判決が紹介されています。

今年の10冊

 年の瀬も押し迫りまして今年も恒例のこれを。相変わらずというかいつにも増してというか(笑)雑多というか脈絡のない代物になっておりますが勝手選書なのでそのようにご了解を、ということで例年どおり1著者1冊・著者名50音順となっております。

いっくん『数学クラスタが集まって本気で大喜利してみた』

 著者は数学を愛する会会長で早稲田大学の学生さんとか。twitter上で「ケーキを三等分せよ」「ハートのグラフを描け」「1=2を証明せよ」などの「お題」を提示し、それに対して数学クラスタの面々がより面白い、エレガントな解答を競い合う「大喜利」をやっていて、それをまとめた本ということです。まあ正直なところ文系の私にはまったくお手上げの領域もあるのですが(笑)、しかし感心させられる解答も多々提示されていて非常に楽しく、いやこういうことを考えつく人というのはどういうアタマの構造をしているのかなどと思うことしきり。
ちなみに見本 

梅崎修『日本のキャリア形成と労使関係ー調査の労働経済学』

 簡単なご紹介はこちら。年末年始のお休みに、とか書きましたが年内に読み切ってしまいました(笑)。実務実感に一致した結果も多く、労使の取り組みをサポートしてくれる内容が豊富なのがうれしいところです。

貴田正子『深大寺の白鳳仏-武蔵野にもたらされた奇跡の国宝』

 私は調布市民なので深大寺は徒歩圏内であり、白鳳仏(釈迦如来倚像)が国宝指定された際にはたいへん喜ばしく思いましたが、たしかに飛鳥時代の逸品がなぜ調布にあるのか?というのは謎でした。その謎に挑んだ本で、地元の話ということもあって非常に興味深く読みました。まあ正直な感想として、史料調べなどはかなり手薄で(まあそもそも史料が残されていないという事情はありましょうが)かなりの部分は推測で占められているのでどこまで真相に迫っているのかはなんともいえないように思うのではありますが、それでも調査や思考の過程は楽しく、ここは地元枠ということでひとつ。

草野隆彦『雇用システムの生成と変貌-政策との関連で』

草野隆彦『雇用システムの生成と変貌-政策との関連で』
 簡単なご紹介はこちら。実は通読していないのですが、まあ資料として活用する本であって通読するものではないですよね?と逃げる私(笑)。JILPTならではの力作で座右に置いております。

小林佳世子『最後通牒ゲームの謎』

 最後通牒ゲームを中心に、さまざまな経済学の実験結果が経済学が想定する合理的な結果にならない理由を進化心理学の観点から解き明かしていく本です。人類が進化の過程で生き延びていくために身につけてきた本能のようなものが背後にあるという話は興味深く、また随所で今般のコロナ禍下における人々のさまざまなふるまいについて「ああなるほど」と感じさせられるのも面白いところです。私には「裏切り者を見つける力」の中で、ある種の4枚ゲームでは労組の活動家が一般人と異なる結果を示すという話が面白かった。第64回日経・経済図書文化賞受賞作で、大竹文雄先生の書評がこちらにあります。

佐々木勝『経済学者が語るスポーツの力』

 書名のとおり、「スポーツの力」を経済学的に示した本です。スポーツを通じて非認知能力を向上させるといった人材育成・人材活用の観点、企業スポーツが企業の生産性や職場管理の改善に結び付くといった経営の観点、さらにはスポーツが社会に及ぼす好ましい影響やその促進といったさまざまな見地から「スポーツの力」が経済学的に解説され、実は経済学や統計の入門にもなるという本です。非認知能力の話は授業でも紹介していますし、実は私が参加した調査の結果も紹介されたりしています(論文も紹介いただいております。ありがたやありがたや)。

仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎-働く人の未来をつくる』

 簡単なご紹介はこちら。集団的労使関係の重要性が高まっている(と私は信じている)中、残念ながら労働組合の組織化、運営の適切なガイドブックがあまり見当たらない中で、待望の一冊と申し上げるべきでしょう。これが具体的な組織化へと結びつくことを期待するばかりです。

濱口桂一郎『団結と参加-労使関係法政策の近現代史

 簡単なご紹介はこちら。1著者1冊ということで岩波新書の『ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転換』(簡単なご紹介はこちら)と少し迷ったのですが、やはり集団的労使関係に関する貴重な業績ということでこちらを採らせていただきました。

(一社)福井県眼鏡協会監修『鯖江の眼鏡-一般社団法人福井県眼鏡協会公式ガイドブック』

 世界に冠たる高級眼鏡「鯖江の眼鏡」の歴史からひもとき、その設計思想、製品の特徴、素材、製法、技能などなどを解説したガイドブックで、多くの図版を中心に編集されていて非常に楽しい一冊です。私は幸いにもまだ裸眼で視力1.5なので眼鏡のお世話にならずにすんでいるのですが(笑)

村尾隆介『ミズノ本-世界で愛される”日本的企業”の秘密』

 ミズノ様には仕事でたいへんお世話になりました。なぜ。経営者の方にもお目にかかりましたがたいへん教養豊かで円満な紳士であり、社員のみなさまも私が知るかぎり親切でエネルギッシュな方が揃っていて魅力的な会社だと思っていたのですが、この本はミズノとともにプロジェクトを推進したコンサルタントが組織内に入り込んで調査した「ミズノの全容」という感じの本です。佐々木先生の本もそうですがこれもスポーツ関連書籍で、これも東京大会のレガシーなのかもしれません。

番外:穂村弘『シンジケート[新装版]』

 穂村弘のデビュー歌集の新装版です。俵万智が大賞を獲得した角川短歌賞の次点作で、高橋源一郎氏が絶賛して話題になったのですが、当初自費出版で読めなかった記憶があります(私の手元にあるのは2006年の沖積舎版)。絵と装丁が一新され、高橋氏が新装版向けの解説を書くなどの追加があります。若かりし日をまざまざと思い出させる一冊ですが、ほとんど内容に変化のない新装版ということで番外としました。

『ビジネスガイド』2022年1月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』2022年1月号をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「非正規社員の不合理な待遇差対応事例 休職/夏季冬期休暇/慶弔休暇」「企業のSOGIハラ対応」「採用時の調査と法的留意点 SNS調査、リファレンスチェック」と、いずれも人事担当者としては頭の痛い事項が並んでいます。案外、いまどきSNS調査とかリファレンス調査とか当たり前になって、求職者としてもやりますよと言われればはあそうですかくらいの話なのかもしれませんが。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」は今回は「正規社員の多様な働き方」ということで限定正社員が取り上げられています。その拡大が望ましいが、それには雇用保護のあり方について事業所閉鎖等にともなう解雇を合法とするなどの法的措置が必要だと指摘された上で、「今後は、頻繁な配置転換や転勤を通じて社内の多様な仕事も経験する時期は新卒採用から10~15年程度にとどめ、それ以降は限られた幹部候補生の社員を除いた大部分の社員は、男女共に限定した業務に携わるという正規社員の働き方を目指すことが普遍的になるのでは」と、海老原嗣生さんに近い見通しを示されています。大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は「デジタル変革と労働組合活動」を取り上げ、昨今の環境変化をふまえたオンライン等による労使コミュニケーションの法的課題について検討されています。 

JILPT研究成果物

 (独)労働政策研究・研修機構様から、研究成果物9点お送りいただきました。いつもありがとうございます。
 例によって、機構のウェブサイトですべてお読みになれます。

●資料シリーズ
No.244(2021年11月)
『Web提供型の簡易版職業適性評価ツール:簡易版Gテスト(仮称)のプロトタイプ開発に係る報告』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/244.html
No.243(2021年11月)
『委託離職者訓練に関する分析~訓練施設の取組みと受講における効果から~』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/243.html
No.242(2021年10月)
『ウィズコロナ・ポストコロナの働き方―テレワークを中心としたヒアリング調査―』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/242.html
No.241(2021年9月)
『自ら考えて動く仕事探し―求職活動支援の研究―No.240(2021年9月)』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/241.html
『職業情報提供サイト(日本版 O-NET)のインプットデータ開発に関する研究(2020年度)』
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2021/240.html

●調査シリーズ
No.217(2021年11月)
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/217.html
No.216(2021年11月)
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/216.html
No.215(2021年11月)
『ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成~転職者アンケート調査結果~』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/215.html
No.214(2021年11月)
同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」(企業に対するアンケート調査 及び ヒアリング調査)結果
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/214.html

 JILPTならではの調査が揃っていますが、『職業情報提供サイト(日本版 O-NET)のインプットデータ開発に関する研究(2020年度)』は、ちょうどビジネススクールの授業で日本版O-netを教材で使ったので、こうして都度ブラッシュアップが行われているのはまさにJILPTならではだなぁと感心しました。あやしげな(失礼)職業診断サイトが多々見られる中でこうした仕事は貴重だよなと。かつてこれを仕分けようとしていた人たちがいたのだからなんともはや。