某財閥系シンクタンクの案件で年末締切の報告書原稿があって少々難儀していたのですがなんとか無事入稿しました。分担執筆なので年明けに泊まり込みで袋叩きにあう予定なのですがとりあえず一息。ということで年末恒例のこれを。例によって1著者1冊・著者五十音順です。
清水俊史『ブッダという男ー初期仏典を読みとく』
お察しのとおり(笑)本書のあとがきにある経緯がX(旧
Twitter)のタイムラインに流れてきたので野次馬根性を起こして読んでみたのですがたいへん面白かった。私のようなまったくの部外者・初心者でも楽しく読める一冊です。
中村秀生『韓国貯蓄銀行再建日記』
仕事の関係で(
なぜだ)愛知県の某名門公立高の同窓会報を読んだところ著者の講演録が掲載されており、それで興味を惹かれて買って読んでみたのですが非常に面白く、思わず一気読みしました。著者は元
SBIホールディングスの方で(明記はされていませんがすぐわかるので書いてもいいでしょう)、大幅に経営が悪化していた出資先の韓国の
貯蓄銀行の再建に携わったドキュメンタリーです。法制度や国情の異なる中での企業再編や人事などに苦闘する姿が臨場感たっぷりに描かれています。
埼玉県に
ものつくり大学という面白い大学があり、そこで取り組まれた「世界一小さい
世界遺産」
カップ・マルタンの休暇小屋のレプリカ作成のプロジェクトの経緯をまとめた本です。現地に赴き、徹底的な実測を行い(「カメラを過信しない」との記述あり)、図面に落とし込んで、それをもとにして、工法や素材などもなるべくオリジナルに近いもので大学構内に再現したというもので、その勤勉さには感服するよりありません。この本ではそのプロセスを図版をふんだんに用いて紹介し、さらにそこから得られる多くの考察が論じられています。見て楽しく読んで興味深い一冊です。
守島基博・初見康行・山尾佐智子・木内康裕『人材投資のジレンマー形骸化した「人材立国」を立て直す』
日本生産性本部が実施した大規模調査(人材育成に関する日米企業
ヒアリング調査およびアンケート調査)をもとに、日本企業が抱える人材育成の課題・問題点と今後の方向性を論じた本です。調査結果は興味深いものですが、取り組むべき課題が大変な難題である(だから「ジレンマ」なのであり)ことも明らかになっており、解決法も決して単純でも明確でもないわけですが、各企業・各人事担当者が事実に基づいて自社の人事施策を考える際には非常に参考になる本だと思います。