さらば使い捨て経営(1)

職場の回覧で日経ビジネス5月19日号が回ってきました。すでにバックナンバーになってしまいましたが、この号の特集は各所で話題になった「さらば、使い捨て経営」というもので、いまさらながら楽しく読ませていただきましたので感想など。特集は3部構成になっていてPART1はすき家ワタミが人手不足で追い込まれている現状を紹介、PART2は正社員化、特に限定正社員化の動向、PART3は先進事例の紹介となっていてなかなか充実していますが、根本的に外してるなと思うところもあり、以下書いていきます。
まずPART1のすき家の話では、同業の吉野家との比較が目をひきます。

 なぜ店員が足りなくなったのか。景気回復でアルバイトの採用が難しくなる中、今年2月に発売した「牛すき鍋定食」が引き金を引いた。…
 すき家の売り物は、「吉野家」などの競合と比べて豊富な約30種類ものメニュー。メニューが多いと当然、店員への負荷も高まる。そこに、手間がかかる牛すき鍋が加わった。アルバイトを増やそうと募集しても集まらない。…
 集客につながる上、単価が牛丼(並盛で税抜き250円)の2倍以上になるからと、新商品を導入した経営陣。現場の負荷がどれだけ高まるかを十分考えなかったことが、バイトの離反を招いた。…
 鍋メニューは、吉野家が2013年12月、すき家に先駆けて投入した。鍋は、50代など新しい顧客層の開拓に寄与。客単価も上昇し、吉野家ホールディングスは2014年2月期、前期比16%の営業増益を確保した。各店に、社員1人を含む最低2人の店員を配置する吉野家では、バイトの離反は見られない。
日経ビジネス2014年5月19日号(通巻1741号)以下同じ、pp.24-25)

牛丼価格は吉野家が300円、すき家が250円ということで、もちろん単純に比較はできませんが、しかし従業員配置の差が価格差にも反映されている部分はあるでしょう。1980年頃は吉野家は朝定食の提供もない単品営業だったはずで、それでも当時の価格は350円程度でした(最高値は1990年の400円らしい)。価格には為替の影響が非常に大きいのだろうとは思いますが、生産性向上の成果も相当にあるのではないでしょうか。特集はこのあと正社員化の話に進んでいくわけですが、私としては時給の上昇を価格に転嫁できるかどうかというのがそれ以上に重要なポイントではないかという気がします。
というのも、これに続いてワタミ桑原豊社長のインタビュー記事があるのですが、その中にこんな一節があって、

…外食など、労働集約型の産業にとって、最近の採用難は本当に大きな問題だ。事業戦略の転換を迫られる可能性が高い。
 人件費は今後も上昇が続くと見ており、外食産業は極端に低い労働生産性を上げていかなくてはならない。これまで、チェーン店は売り上げが下がっても、利益を確保できる仕組みを作ることに注力してきた。しかし、システムの導入などによる省人化は既に進んでおり、限界に近い。今後は、1店舗当たりの売上高を上げることが必要だ。
 和民やわたみん家では、3月のメニュー改定で5%値上げした。今後は、安さだけでなく、価値を訴求する。…

これはhamachan先生お得意の話題ですが生産性が低いのは安売りするからという面は多分にありそうなわけで、もちろん高く買ってもらえる商品開発というのも大事ですが、やはり人手不足で人件費が高騰したら消費者にもしかるべく負担していただくべきではないかと思うわけです。ということで5%の値上げということになったようですが、逆に言えばアルバイトの賃金が上がらないのは安値を追求する経営者の問題であると同時に安値を求める・賃金上昇の原資を支払おうとしない消費者の問題でもあるのでしょう。
明日はPART2を取り上げます。