ホンダ、ディーラーに400人出向

土曜日の日経新聞で報じられていたニュースです。これにはかなり驚きました。

 ホンダは、エコカーに対する新車購入補助金の支給優遇策が期限を迎える9月末以降の販売減をにらみ、今秋にホンダ本体の社員約400人を全国の系列ディーラーに大量出向させることを決めた。9月末以降、国内新車販売の大幅減が予想されているため、販売店の営業スタッフを支援し、販売減を食い止めたい考えだ。
 ホンダの本社(東京・港)に勤務する社員や、埼玉県和光市に勤務する国内営業担当の社員が主な出向対象となる。出向先はホンダが出資する直営の販売会社。全国に約30社、計約700店舗ある。ホンダが出資をしていない地場資本の系列ディーラー(約1500店舗)は、出向対象にしない。
 まず、9月1日付で国内営業担当の社員を70人、11月1日付で残りの330人を出向させる。期間は原則3年だが、本人の希望も考慮して延長も可能とする。
 400人を系列ディーラーに大量出向させるのは極めて異例。主な対象となるホンダ本体従業員約6000人の約7%に当たる。
 ホンダは10月以降の国内新車販売が最大で3〜4割落ち込むと見ている。このため営業要員を増やしテコ入れする必要があると判断、ホンダ本体から系列ディーラーへの大量出向を決めた。
 さらに今後、少子化が進むことで国内新車市場の縮小は避けられず、国内事業も縮小傾向になる見通し。それに伴い、ホンダ本体の社員のスリム化を進める意味合いもあるとみられる。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3E4E2EAE38DE3E4E2E5E0E2E3E28698E3E2E2E2

本当だとすれば思い切ったことをするものだと思いますが、とりあえずホンダのウェブサイトを見る限り正式のプレスリリースは出ていないようです。ざっと見たところ他紙の追随もないようなので、日経が飛ばしている可能性が高いのではないかと思いますが、というか飛ばしだと思いたい。
そういう前提で一応記事を真に受けてコメントしますと、今回主な出向対象となるのは「本社(東京・港)に勤務する社員や、埼玉県和光市に勤務する国内営業担当の社員」ということですから、まあ常識的に考えて幹部候補生のホワイトカラーということになるでしょう。出向先での仕事はというと、「営業要員を増やしつつテコ入れ」とある一方で「販売店の営業スタッフを支援し」ともありますので、さすがに営業スタッフそのものの仕事ということはなさそうです。まあ、販売店の営業マネジャーやマーケティングの企画スタッフなどとして送り込まれ、それまでその仕事についていた販売店プロパーが営業スタッフとして現場に回る…というところではないかと想像します。販売店プロパーの方もご苦労ですが、出向するホンダ社員にもかなりの負担となりましょう。
そう考えれば、こうした異例の施策はなるべく短期にとどめることが望ましく、実際その目的が「エコカーに対する新車購入補助金の支給優遇策が期限を迎える9月末以降…国内新車販売の大幅減が予想されているため、販売店の営業スタッフを支援し、販売減を食い止めたい」という趣旨であれば、補助金切れの影響の及ぶ期間に(なるべく短く)限定するのが好ましいと思われます。なるほど、たしかに「10月以降の国内新車販売が最大で3〜4割落ち込む」にしても、大きく落ち込むのは補助金切れ前の駆け込み需要の反動減が主因であって、それほどの長期には及ばないと考えられるでしょう。当面、景気の拡大が見込まれていることなども考えあわせると、「期間は原則3年」というのは必要以上に長いとの感を禁じ得ません。加えて「本人の希望も考慮して延長も可能とする」というのは、市場縮小にともなうテコ入れという理由では説明できそうにありません。まあ、やりかけた仕事をやり切って戻りたいといった希望が想定されているのかもしれませんが…。
どのように人選するのかは不明ですが、よほど業務上の関係が深い人はともかく、それを除けば「対象部署の入社2〜3年めの社員全員」といった一律の基準で人選したのでなければ、出向を命じられた人のモラルダウンは甚大であろうことは常識的に想像に難くありません。まあ、これも説明と理解活動次第ではありますが…。いっぽうで記事には「ホンダ本体の社員のスリム化を進める意味合いもあるとみられる」ともあるわけで、「とみられる」ですからこれは記者の邪推以外の何物でもないわけではありますが、しかし記者がそう見るくらいですから、対象者がそうみてもなんらおかしくはないでしょう。
ホンダは人事管理が非常にしっかりした会社ですので、やるとしても上手にやるだろうと思いますし、そもそも記事だけでは情報が限られているのでなんともいえないわけではありますが、それにしても記事どおりであれば思い切ったことをやるものだというのが素朴な感想です。