派遣法、結局修正

社民、国民新両党が一段の規制強化を求めていた派遣法改正の原案ですが、結局事前面接の部分解禁を見送ることとなったようです。

 政府は17日朝の基本政策閣僚委員会で、今国会に提出予定の労働者派遣法改正案について、派遣先企業が派遣社員を選別する「事前面接」を解禁するとした原案を修正する方針を決めた。菅直人副総理・財務相が社民、国民新両党の修正要求を受け入れた。19日に閣議決定し、国会に提出する見通しだ。
 改正案は仕事がみつかったときだけ派遣元と雇用契約を結ぶ「登録型派遣」を、専門技術が必要な26の職種や高齢者の派遣などを除いて原則、禁止する。製造業派遣も原則禁止し、例外として、仕事がないときも派遣会社と常に雇用契約を結ぶ「常用型派遣」に限って認める。
 雇用情勢や企業活動への影響に配慮し、一部を除き公布から3年以内に施行する。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100317ATFS1700517032010.html

これに対して、経団連の御手洗会長がさっそく遺憾の意を表しました。

 日本経団連御手洗冨士夫会長は17日、連立与党が今国会提出予定の労働者派遣法改正案をめぐり、派遣先企業による派遣社員の事前面接の解禁見送りで合意したことについて、「(事前面接の解禁は)労働政策審議会で労使が真剣に話し合い、ぎりぎりの線で妥協して決めたこと。これが覆ったのは非常に遺憾だ」と批判した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010031701034

ネット上のニュースなどでは発見できなかったのですが、昨晩のニュース番組では連合の古賀伸明会長も、労使が話し合って折り合った結論は最大限尊重されるべきで遺憾だといったような、御手洗会長と同旨の発言をしたことが報じられました。

いずれもまことに正論で、労働政策は当事者の代表である労使に行政・公益を加えた三者構成で検討され、立案されることが望ましく、これはILOの基本理念でもあり、各国で採用されている国際標準ともいうべき考え方です。いっけん、規制強化ですから労働サイドは喜びそうに思えるわけですが、しかし連合としても三者構成原則を重視すれば、協議の上達した結論以上の目先の規制強化は歓迎できないのは当然のことです。このあたり、過去のエントリでも書きましたのでご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100125
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100125#p1

  • (3月22日追記)邪推をすれば、とりあえず実務的にはそれほど影響が大きくなさそうで、しかし「規制緩和を阻止した」とピーアール可能な手頃なところで連立を組む社民、国民新両党のメンツを立てた…というところなんでしょうかね。もちろん、審議会の役割は建議や答申であって、立法は国会・国会議員の役目だというのは当然そのとおりですし、公労使の合意であっても国家国民の見地からは修正が必要だとの判断であれば修正すべきでしょう。しかし、最近の政治をみていると、連立を組む小党のメンツを立てるためとか、「選挙目当ての人気取り」のためとかで労使の合意に手を入れているという印象が強いわけで、そうなると当事者としては「筋が違う」と感じるのも自然というものでしょう。