労政審、派遣法修正に抗議

今朝の日経新聞によると、労働政策審議会が政府による派遣法改正法案の修正に対して抗議したそうです。

 労働政策審議会厚生労働相の諮問機関)は1日、労使が合意した労働者派遣法改正案を政府が修正したことに対して、抗議する意見書を長妻昭厚労相に提出した。諏訪康雄会長(法政大院教授)は「大変な苦労の上に合意できた内容だ。ぜひこの事情を考えてほしい」と要請。厚労相は「今後はこういうことがないようにする」と答えたという。
 労政審厚労相に抗議するのは異例。労使が合意した派遣法改正案には、派遣先企業が労働者と受け入れ前に話し合う「事前面接」の解禁が盛り込まれていた。しかし社民、国民新2党の反発を受けて原案から削除された経緯がある。
 意見書は「審議会の答申は公労使3者がぎりぎりの調整をした結果だ」と強調。答申とは異なる形で閣議決定されたのは「遺憾だ」として、政府に労政審の意見を尊重するよう強く求めた。
 細川律夫厚労副大臣は審議会で「(修正は)国際労働機関(ILO)条約にもとるような内容。国際的な信頼を勝ち取れるようにしたい」と、公の場で初めて陳謝した。
(平成22年4月2日付日本経済新聞朝刊から)

もちろん、立法は国会で行われるわけですから、法案審議の中で必要な修正がなされることは当然ですし、それが国会審議そのものではなく、政党間の協議などを通じて行われることもありうることでしょう。
ただ、労働・雇用政策については政労使三者構成でこれを推進するというのが国際的な原理原則として確立されており、わが国ではそれが公労使の参加による労働政策審議会として具体化されているわけですから、やはりその結論は国会においても最大限尊重されるべきであろう。今回の抗議の趣旨はこうしたものであろうと思われます。したがって、これは基本的には事前面接解禁の是非とは独立の問題です。
逆にいえば、三者で得た結論を最大限尊重したうえで、それでもなお国会審議において修正が必要であるとのことで修正されることまで「遺憾」とするものではないでしょう。今回の抗議に至った問題点は、三者の結論を覆すに足るほどの説得的な根拠が示されないまま、単に連立与党を構成する小党の顔を立てるためだけに修正が行われたかのように見える点にあろうかと思います。
もっとも、これまでも労政審の結論が政治によって修正されたことはないわけではなく、前政権下においても労働基準法改正案の一部がいかにも「選挙目当て」に見える形で修正されたことがありました。今回、異例の抗議に至ったのは、こうした安易な修正が今後も繰り返されることがないようにという趣旨もあるのでしょう。
厚労相は「今後はこういうことがないようにする」と答えたそうですが、ぜひその趣旨をしっかり受け止めて対応していただきたいと思います。