文春新書編集部編『論争 格差社会』

論争 格差社会 (文春新書)

論争 格差社会 (文春新書)

採録されている内容はどれもなかなか面白いものなので、多少の感想など書いてみたいと思います。

仲正昌樹「「規制緩和」と「格差拡大」は無関係だ」

格差をめぐる左右の論客の所論を遠慮会釈なく批判し切り捨てる論考で、正邪善悪を超えて、読んでいて非常に面白い、というかオモシロオカシイというか。思考もさることながら、これだけの文章が書ける筆力にも感服。もちろん、筆力や面白さは正邪善悪とはだいたい無関係ですけれどね。

山田昌弘希望格差社会の到来」

言っていることはよくわかる(同意するかどうかは別問題としても)のですが、それではどうするのか?誰もが希望を確信できるような社会=高度成長よもう一度、というのが無理だとすれば、結局は文中にもあるように「必要なのは宗教」ということになってしまうのでしょうか?それが悪いと決めつけるつもりもありませんが…。

斉藤環ニートがそれでもホリエモンを支持する理由」

なるほど、精神分析医がみるとそうなるのか…という感じです。堀江さんという人は、なにをどうしたいというよりは、とにかく既成秩序に対するレジスタンス(bewaadさんが指摘していたと思いますが、それはたぶんコンプレックスの裏返し)に執着する人なのではないかと思います。なるほど、ニートが既存秩序に統合されない存在であるとすれば、そこに通低するものはあるのかもしれません。

「そんなにいるわけない!ニート「85万人」の大嘘」

話題の座談会をようやく読みました。とりあえずひとつだけ書きますと、本田先生は実はこれをご自身でやりたかったのかなぁ、という印象を受けました。実際、「博士論文で時間がなかった」との発言もありますし、JILで例の有名なフリーター研究にかかわっておられたわけですし(もちろん、「ニート」という言葉はおそらく使わなかったでしょうし、中身も違っていたでしょうが)。自分でやりたかったことを玄田氏に先をこされて、しかも方向性もかなり違っていて、それが辛辣な玄田タタキの背景にあるのかなと。邪推でしょうが。


後半はまた機会があれば書きます。