「社員が壊れる」

職場の回覧で、「日経ビジネス」の10月24日号がまわってきました。特集のタイトルは「社員が壊れる−最高益に巣食う現代版モダンタイムズ」。とりあげられている事例はまことにすさまじい長時間・過重労働で、これもまた労働市場の一面の実態なのでしょう。
そして、編集部の解説のタイトルは「『人』重視に舵を切れ 社員酷使に未来はない」。うーむ。なにも日経ビジネスに言われなくても、ほとんどの経営者や人事担当者はそんなこと承知してましたが。

 価値創造の源である「人」を不幸にしたままでは、繁栄は続かない。
 リストラに追われた企業はここ数年、その当たり前の事実を忘れていた。
 バブル期に匹敵する好業績の今こそ、社員重視に舵を切る時だ。
(40頁)

だから忘れてませんでしたって。まあ、なかには本当に忘れていた企業もあったかもしれませんし、意図的に「忘れた」経営者もいたかもしれません。しかし、大方は「忘れてなかったけどできなかった」のだろうと思います。
なぜできなかったのかといえば、とにかく業績不振。そのうえ、「株主価値の最大化」だの「投資家重視」だのいう大合唱。日経ビジネス、そして親会社の日経新聞も、それを大いに賞賛し、後押ししていたことも、だぶん誰も忘れてないでしょう。企業が分配できる原資は限られていて、しかも業績不振で少ししかない。それを株主や投資家にたくさん配分したら、「人」に分配できるわけがありません。それどころか、強欲な投資家たちは「人」にマイナス分配してまでも自分たちの分配を増やせと主張し、それを応援したのが日経ビジネス日経新聞じゃなかったんですか。
で、解説記事を見ていくと、「米国は先行して見直し」ときたもんだ。なんだ、要するに米国の後追いで記事を作っているだけなのかな。そりゃ楽ですな。それで済むなら社員が壊れる心配はない、しかし編集部のアタマは最初から壊れているのかもしれませんが。
まあ、いずれにしても「あんたには言われなくない」の典型ですね。