投資ファンドと労使関係

厚生労働省に、「投資ファンド等により買収された企業の労使関係に関する研究会」というのができるそうです。

 厚生労働省は、投資ファンドに買収された企業の労働者と使用者との労使関係を明確にするための実態把握に乗り出す。投資ファンドが買収先の社員の労働条件などに事実上の権限を持つ場合は、「使用者」として労働組合との交渉に応じる必要も出てくるためだ。…
 労働組合法では「使用者」は労組などとの交渉を拒むことができないと定めている。使用者の条件は判例に基づき判断されており、法律などで明確にはなっていない。
(平成17年5月26日付日経新聞朝刊から)

基本的には株主が選任した取締役が団交に臨むのが筋で、株主が直接団交に応じなければならないというのは無理があると思うのですが、現実には、子会社の労組が親会社の労組に団交を求めるといったケースは古くからありました。親会社が完全に経営を支配しており、子会社の経営陣に事実上労働条件の決定権がない場合などについては、法人格否認の法理によって親会社の団交応諾義務を認めるといった判例も出ています。
投資ファンドが買収した場合、そのファンドは当然ながら経営に相当程度関与してくるでしょうし、雇用の削減や労働条件の切り下げなどに踏み込もうとすることも多いでしょう。取締役がファンド経営者の傀儡で事実上決定権を持たないケースでは、投資ファンドに直接団交に応じることを求める必要が出てくるかもしれません。とはいえ、それは基本的にはケースバイケースで、なにも「法律などで明確に」しなければならないものとも思えません。
むしろ、こうした紛争はまず労働委員会、それから裁判所と手間ひまがかかることのほうが問題なのではないかと思います(今年1月から、迅速化のための改正労組法が施行されましたが)。