あれこれ

一段落したかと思ったところ日本キャリアデザイン学会の会務が思いのほか間際に迫ってきていてまたしばらく間があいてしまいました。この間もなにやらあれこれと起きていてご意見照会も頂戴しているのですが、あまり長々と書く時間もないので一言ずつ簡単にコメントしていきたいと思います。

サマータイム

まずはこの件から。

 安倍晋三首相は7日午前、2020年東京五輪パラリンピック大会組織委員会森喜朗会長と首相官邸で会談し、全国一律で時間を早めるサマータイムの導入を検討するよう自民党に指示する考えを示した。森氏が大会期間中の暑さ対策としてサマータイムの導入を要請し、首相は「大変国民の関心が高い。国民生活全体に影響が大きい」と述べた。森氏が記者団に明らかにした。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33887340X00C18A8EAF000/?n_cid=TPRN0003

まあかねてから浮いては沈みを繰り返している案件ではあるわけですが、まず申し上げておきますと以前も書きましたが私はサマータイムそのものには積極的であり、朝型勤務がヘチマとか夏の生活スタイルが滑った転んだとあれこれ言うくらいだったら、一気に夏時間にしてみてはどうかとは今でも思っています。ただまあ過去エントリを書いた10年前に較べると情報システム関連のコストが桁違いに膨れ上がっている可能性は高いので、それもふまえた検討が必要だろうとは思います。すでにラストチャンスを逸してしまっているのかも知らんとも思う。
それはそれとして今回の議論に関してはそれ以前の問題があって私もやはり批判的であり、各方面(今朝の毎日新聞の社説でも主張されていましたが)と同じく五輪のためにやるには時間がなさすぎるという一点に尽きます。夏時間というのはまあ4月くらいにはスタートするわけで(期間が長いほど効果が大きいのは見やすい理屈)、2020年の4月といえばもう1年8か月しかないわけであり、今から検討を始めてそんな短期間にできるわけないだろうという話です。
まあ組織委員会会長に言われたら検討しますくらいのことは言わないわけにもいかなかったのでしょうが、普通に検討して普通に無理ですという結論が出てくるのではないかろうかと普通に思っております。

厚生労働省分割論

次はこれです。すげえ久々の行政タグ。

 自民党は今月にも厚生労働省の分割を念頭に置いた提言を安倍晋三首相に渡す。これを受け、政府は分割への検討を本格化する。2001年に誕生した厚労省働き方改革など新たな政策需要に対応しきれていないと判断した。政策立案を強化し、生産性を高める。20年を目標に旧厚生省と旧労働省の業務の2分割による新体制を発足させる計画だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33677280R00C18A8MM8000/

正直これには私も定見があるわけではないのですが、生産性云々はともかくとして、連合事務局の中の人からは再編後は一貫して「審議時間が足りない」という声を上がっていたと思います。まあ正直昨今は野党政治家から「審議時間が足りない」とか言われたらおまえが言うかおまえがと思うでしょうが(実際に言われたわけではない)、たしかに厚生委員会と労働委員会厚生労働委員会になり、審議時間も合計されて、トータルでは減らなかったとしても(本当に減らなかったかどうかは知らない)、まあ旧厚生案件に時間を取られた結果として旧労働案件の時間がなくなりましたというのはいかにもありそうな話だなあと納得して聞いているわけです。
あともうひとつこれも5号館の人から聞いた話ですが大臣の守備範囲が広すぎてレクやらなんやらの時間が圧倒的に足りないという問題もあるようです。このあたりは分割すれば政務三役と事務次官が2倍になってかなり緩和されるだろうとは思うところ。
ただまあ日経さんがお好きな生産性という観点からすると、現場では福祉事務所とハローワークの連携といったものがけっこう進んでいるという実態もあるらしく、まあ分割しても連携すればいいじゃないかという話かもしれませんがそうそう簡単でもなかろうと思う。最初にも書きましたが私に定見のあろうはずもなく、サマータイムもそうですが単に思いつきで進めるのではなく実態をふまえて十分慎重にやってほしいものだと思います。

ベトナム人介護労働者受け入れへ

続いてはこれかな。だいぶ旧聞ですが、

 政府はベトナム政府と同国からの介護人材の受け入れ拡大で合意した。政府は1年以内に3000人、2020年夏までに1万人の数値目標を設け、ベトナム側もこれに協力する。期限と受け入れ数を掲げ、環境整備を急ぐ。介護分野の人手不足は深刻で、今回の数値目標方式をインドネシアなど他国にも広げ、介護人材を確保する。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33346320U8A720C1MM8000/

これについても比較的最近書いたところなのでそれ以上言うこともあまりないわけですが、これについては1万人という規模の話であり、介護職員が現状すでに180万人、成り行きでは2035年に80万人近く不足するだろうと言われているのと較べるとそれほどのインパクトはないなという感はあります。まあ試験的に入れてみましょうという域を出ないのではないかと。それでどんな問題点や課題があるのか確認して今後の検討に生かすことができるならそれなりにメリットもあるでしょう。
ただ介護全体については利用者の支払能力不足に合わせた事実上の公定価格になっていることが低賃金労働を要請するという構造になっているわけで、これを維持するために外国人を多数受け入れましょうというのはやはりまずかろうと思います。もちろん団塊世代がお墓に入る時代になればマーケットも縮小に向かうでしょうが相当の期間があるので、五輪景気のように一時的に外国人を受け入れて対応するという話ではないでしょう。ということで介護保険料率を上げるなりなんなりして介護サービス利用者への配分を厚くして支払能力を高めるか、あるいは賃金引き上げを価格転嫁して支払能力のない人は自助努力でお願いしますとするか、なんらかのことをせざるを得ないわけで、国民の太宗がそれは嫌だというなら介護労働者の低賃金と外国人労働の受け入れは避けられないといういつもの話です。ここからは介護を離れて一般論になりますが、企業や経営者が悪くないというつもりもないにせよしかし企業にしても経営者にしても国民が買ってもいい負担してもいいという以上の価格はつけられないわけであってな。

東京医大の女性差別

もうひとつ、絶賛炎上中のこれも書いておきます。タグをどうするか迷った。

 東京医科大(東京・新宿)が医学部医学科の一般入試で、女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていたことが2日、関係者への取材で分かった。一部の男子学生に加点をしたこともあったという。受験者への説明がないまま、遅くとも2010年ごろに入学者の男女数に恣意的な操作が始まっていたとみられる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3370137002082018CC0000/

まあ正直いつまでそんなことやってんのさと思うわけですが思いのほか広がりがあるのではないかという話らしく暗澹たるものがあります。とりあえず人事管理的にみれば古くからある女性の統計的差別案件ですね。
解決策としては当然ながら医療従事者を増やすなどしてもっと女性(だけでなく男性も)が働きやすい仕事・職場にしていくことが求められるわけですが、それには当然コストがかかるわけで、いろいろと努力して成功している好事例というのもあるようですが(そしてそういう努力にフリーライドしようとするから東京医大はタチが悪いわけだが)、しかし医療というのも上記介護と同様にかなり特殊なマーケットであり、行政が関与して取り組むべき課題でしょう。となると結局はそれにともなうコストアップはどうカバーするのかといういつもと同じ話がまた出てくるんだろうなと。