内閣改造

 月曜(1日)夜のテレ東ワールド・ビジネス・サテライトで内閣改造について報じられているのを見てははあと感じ入った件がありましたのでその後のフォローも含めてご紹介したいと思います。1日夜の段階ではこう報じられました。WBSのウェブサイトから。

…閣僚人事では、柴山総裁特別補佐、石田真敏議員、山本順三議員、岩屋毅議員の初入閣のほか、安倍総理を支える二階幹事長の二階派から吉川貴盛議員、桜田義孝議員、片山さつき議員の三人の初入閣が固まりました。一方、総裁選で争った石破派に所属する齋藤農水大臣は交代。また、沖縄県知事選での敗北を受けた人心一新として福井沖縄北方担当大臣も交代の方向です。安倍総理はすでに麻生副総理兼財務大臣、茂木経済再生担当大臣など主要閣僚の留任をすでに決めていています。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_163691/

 翌日(2日)朝刊になると少し情報が増えています。WBSの放送後の情報でも翌日の朝刊に間に合うんですね。

 安倍晋三首相は2日の内閣改造自民党役員人事で総務相石田真敏氏、防衛相に岩屋毅氏、復興相に渡辺博道氏を初入閣させる。
(平成30年10月2日付日本経済新聞朝刊から)

 となっており、記事の3人と留任の6人を除く他の9人は「ポスト未定」と報じられました。ウェブニュースをみるかぎりでは、その後どうやら山下法相、柴山文科相、片山地方創生相の順に決まったように見えます。
 ということでなにがははあかというと、組閣のプロセスとしてまずは「誰が入閣するか」を決め、その後に「どの大臣ポストに起用するか」を決めているわけですね。まことに日本企業のメンバーシップ型人事管理に通じるプロセスだなあと感じ入ったわけです。
 でまあこれに関しては派閥の意向がヘチマとか総裁選の論功行賞が滑った転んだとか論評されていてこれまた日本企業の人事管理こらこらこら、いやそれはどうでもいいんですが、これで適材適所といえるのか、という指摘はそれなりにもっともなもののように思えます。適材適所というからにはそのポストが務まる人を「ポストありき」で任命すべきであり、ポストと無関係にまず人を決める「人ありき」では適材適所にならないのではないか、という話です。
 これについてはしかしそうならざるを得ない事情というのもあるものと思われ、なにかというとポストの数を適任者の数が上回っているといういつもの話です。内閣改造前にはこんな報道もされていたわけで、

 首相は26日、ニューヨークでの記者会見で10月2日に内閣改造・党役員人事をすると表明した。「しっかりとした土台の上にできるだけ多くの皆さんに活躍のチャンスをつくる」と述べた。
 処遇が難しいのが衆院当選5回以上、参院当選3回以上で閣僚経験のない待機組だ。党内に70人あまりいる。前回の2017年8月の改造の際は約60人だった。第2次内閣発足以降「適材適所」の方針の下、経験者を重視してきたため留任や再登板が相次いでいる。
(平成30年9月28日付日本経済新聞朝刊から)

 こういう当選回数で候補者を決めるやり方というのもいかにも年功的ですが、まあひとつの目安にはなるのでしょう。衆院当選5回は連続5回とすると2005年の郵政解散以来になるので、すでに13年の国会議員経験があることになりますし、参議院当選3回は連続3回とすると2013年に3選された人は17年、2016年に3選された人でも14年のキャリアを有することになるわけで、とりあえずこれだけの経験を積めば大臣が務まるように人材育成していますということなのでしょう。まあ本当に質保証に成功しているかについては過去の大臣をみるとちょっと怪しいんじゃねえかという例もこらこらこら、まあ長い間には多数の大臣がいたわけですし大臣候補はもっと多いだろうことを考えれば中にはそういうこともあるのかも知らん。まあいろいろだよな。
 それはそれとしてどんなポストであっても最初から完璧にできるなどということはなかなか考えにくいわけで、大臣のような重責であればますますそうでしょう。人事というのは当然に人材育成の観点が入ってくるわけで、あえてあまり経験のない分野のポストにつけることも往々にしてあります。もちろんこれは厳密な適材適所とは異なるものでしょうが、まあ広義には適材適所のうちだと考えることもできるでしょう(まあ国務大臣の人事がそれでいいのかという議論や、個別にどの程度適任かという話は別途あるだろうと思いますが)。
 加えて人事管理の側面からは「少数のポストに多数の候補」という状況でいかにモチベーションを落とさないかという話はあり、やはりまったくチャンスが得られずにいつまでも候補のままですという人が多くなるのは組織として望ましい状態ではないでしょう。そういう意味では首相が今回の人事について「できるだけ多くの皆さんに活躍のチャンスをつくる」と発言しているのは人事管理の面からはうなずけるところです。でまあそのチャンスをものにして政界でのし上がっていく人というのもいる一方で結果的には大臣の器ではなかったかという人というのもいるわけで、まあこのあたりも民間企業の人事と同じだなと思うわけですが、しかしあまりに不適材不適所な人事になるとその被害を被るのはわれら国民であるというのがツラいところですが…。
 なお今回の個別の人事については私としてはなんとも評価できません。まあ、実際に仕事をしてみての結果で嫌でも評価されるわけなので、それを待つしかないのでしょう。選挙で選ばれて誰に雇われているわけでもない国会議員の世界でも人事ってのは案外企業と似ているもんだなあと思ったので書いてみた、まあははあという話ですね。