技能伝承「できている」6割

きのうの日経新聞からです。

 産業能率大学(東京・世田谷)が60歳以上の会社員を対象に実施した仕事に対する意識調査で、回答者の39.0%が「自分の技能や知識を社内で伝承できていない」と感じていることが分かった。主な理由では「伝承する相手がいなかった」(44.4%)、「伝承を求められなかった」(37.4%)などが目立った。
 「伝承できている」と答えた61.0%に理由を聞くと、「自然と技能などを教えあう風土があった」(44.9%)が最多で、「意図して技能を伝承してきたため」(43.1%)が続いた。産能大は「シニア層のノウハウを伝承する仕組みを意図的に作ることが不可欠」と指摘する。
 調査は3月下旬にインターネットで実施。400人超から回答を得た。
平成23年9月11日付日本経済新聞朝刊から)

日経は「60歳以上の39%「技能伝承できず」」という悲観的な見出しをつけていますが、「伝承を求められなかった」というのが「必要がないから求められなかった」ということであれば問題はないでしょう。「伝承する相手がいなかった」というのも同じことで、必要ないから相手がいないということなら心配する必要はありません。
もちろん、本当は必要なのに管理監督者が必要性を認識していないために高齢者が「大丈夫だろうか」と思いながらもわざわざ伝承まではしていないとか、伝承しないといけないのに非正規が増えて伝承すべき正社員がいないとかいうことだと困った話になりそうです。前者はまあ高齢者は必要と思っているけれど実は必要ない、というケースもそこそこありそうですが、後者はまだ案外あちこちで起きているかもしれません。
そう考えれば、6割が「大丈夫」といっているのであればそれほど心配な実態でもなさそうですが、「シニア層のノウハウを伝承する仕組みを意図的に作ることが不可欠」というのはそのとおりだろうと思います。
そこで大事なのが長期雇用であって、技能を伝承した結果「この仕事は彼もできるようになったからもう来なくていいよ」という話になる危険性があるのであれば、まあ誰も技能の伝承などしませんよね。技能を伝承し後進を育成することで自らのキャリアも伸び、定年まではよほどのことがない限り雇用と労働条件が守られるということは、「シニア層のノウハウを伝承する仕組み」には不可欠でしょう。
もちろん、能力は自助努力で身に付けるものであって技能の伝承なんてしなくていい、企業は従業員の能力を高めるのではなく必要な能力を持つ人を採用すればいいのだ、という考え方もあると思います。どちらがいい悪いというよりは、まあ中庸のどこかに適当なところがあるのでしょう。