やはり抜け駆けが得?

今年は東日本大震災の影響で大手企業が採用活動の開始時期を遅らせました。遅らせなかった企業もありましたので、はからずも採用を遅らせればどうなるのかの社会実験が行われたともいえそうです。その結果はというと、今朝の日経新聞から。「毎コミ」の調査です。

 採用の「質」の満足度について、4月開始の企業では90.2%が「満足」と答えたのに対し、5月は85.7%、6月は81.8%と、時期が遅くなるほど低下した。
 5〜6月に遅らせた大手企業群を本来志望していた学生の一部が、早めに内定を出す企業に就職を決める動きがあった。
 一方で「内定後の辞退率が昨年より高かった」としたのは4月開始の企業で3割に上り、5、6月は1割以下だった。それでも「4月選考の企業は一定数の辞退を織り込んで対応したケースが多かった」(同社)ため、辞退者が多くても満足度が高い傾向が出た。
 6月時点で内定を得ていた学生側へのアンケート調査では、21.5%が「他社の選考に進ませないようにするための拘束を受けた」と回答。
 具体的事例の中にはやや強引な引き留め策もみられたという。
平成23年7月14日付日本経済新聞朝刊から)

うーんやっぱり抜け駆けをしたほうが得なのか、早期化は改まりそうもないか…と一見思われるような結果ですが、必ずしもそうでもないという見方もできそうです。
というのは、遅らせたほうの感覚としては「遅らせたから、いい人材は早々に取り込まれたのではないか」「拘束にかけられているのではないか」と思うのがむしろ当然であって、「遅らせていなければもっといい結果だったのではないか」というバイアスが入っていると考えるのが自然だろうと思われるからです。それでこの程度の満足度の差しかなく、かつ満足が80%超と満足度も高いわけですから、実は遅らせたことの影響はほとんどなかったと考えられるのではないでしょうか。
実際、6月時点の内定獲得者で拘束を受けたのは約1/5にすぎず、記事にもあるように「4月選考の企業は一定数の辞退を織り込んで対応し」ていて、結果として辞退も多かったということですから、4月に内定を得ても6月開始企業を待って就活を続行した人も多そうです。まあ半年も出遅れるとまた異なる結果になるかもしれませんが、倫理憲章からの抜け駆けはまあ2〜3カ月くらいだと思われますので、とりあえず企業サイドにとっては倫理憲章の開始時期を遅らせることは検討に値するのかもしれません。問題は学生さんがどう感じているかで、こちらの検証も必要でしょう。