日経社説

きのうの日経新聞の社説から。お題は「経団連指針では正せない「早すぎ就活」」です。いや就活の早期化・長期化にはたしかに問題もありますし、今回の経団連の指針では限界があることも事実でしょうが…。

 大手企業の多くが内々定を出すのは、4年生の4月から5月前半にかけてだ。新卒者をまとめて採る「新卒一括」方式に偏っているため、学生は4年生になったばかりで就職活動のヤマ場を迎え、準備は3年生の早い段階から強いられている。内々定が4年生の春にとれないと選考を受ける機会はその後ぐんと減る。
 こうした長期にわたる、しかも一発勝負の就活による大学の授業への悪影響は極めて深刻だ。…
 4年生の秋や冬にも選考試験をする企業が増えれば、学生に大きな負担をかけている現状を改善できるだろう。まずは通年採用を積極的に企業は取り入れてほしい。光学ガラス大手のHOYAは新卒者を対象にしながらも、各事業部が随時、設計開発要員などを採っている。
平成23年1月16日付日本経済新聞朝刊・社説から)
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE0E3E5E6E1E2E6E2E3E4E2E3E0E2E3E38297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001

いやだから何度も言ってますが時期を遅らせても通年にしても採用数が増えるわけじゃないんですから。たとえば現状採用予定数が200人、4月に選考試験を行います、となっているとして、これを4月に100人、9月に100人採りますよと言われたときに、この厳しい状況で「じゃあ9月に行けばいいや」と思う人がどれほどいるものか。極端な話、4月に100人採ったあとに経済環境がさらに厳しくなって「ヤッパ9月はヤメ」となる可能性だってあるわけですし。以前も書きましたが内定率が低い中で開始を遅らせて就活期間を短縮するのが本当にいいのかという問題もあります。「第一志望群」はダメだった、という結論が出ないうちはなかなか「第二志望群」について考えられないというのも人情でしょうし、さらにそれが通年採用で1月、2月まで第一志望群のチャンスがあるとなると、結局第二志望群にも内定しないまま卒業を迎える…なんてことになるかもしれません。まあそうなればなったでそれなりに適応して「すべり止め確保」に向かうのかもしれませんが、それはすべり止めにされる企業はあまり歓迎ではないでしょう。まあすでにそれに近い実態もあるのかもしれませんが。
逆に、企業の側からしてみれば、4月に100人採って、さて9月にもう100人採ろうとしたらそこそこの人材はすでに根こそぎ持ってかれててほとんど残ってませんでしたなんて目にあわされる可能性もあるわけで、これは逆に好況期に起こりがちですね。
結局のところ、早期化を改めたいのなら採用力の高い企業(たとえば大手)がそれなりの規模でまとまって開始を遅らせることが必要で、そうなればそれより採用力の低い企業はフライングして内定を出してもいい人材は後からきた採用力の高い企業に奪われてしまう、したがってフライングしても労力の無駄だから、採用力の高い企業が採り終わってからか、まあ同時に始めるくらいにしよう…となるかもしれません。ただそうはいってもいい会社というのもいい人材というのも人により企業により多様だし、そもそも公務員試験や院試の日程というものもあってといった話もあり、特に公務員はかなり強力な採用力を有していると思われるところ、民間企業の選考はそれより早くスタートしているわけです。これはつまり公務員採用くらいの規模なら内定辞退のリスクを受け入れるということでしょうから、やるなら大手がこぞってやるくらいでないと効果はないかもしれません。で、予定数が確保できたらすぱっとやめる。それで学生さんと大学はいいのだろうかという問題になりそうです。