大学生に中小企業紹介

 東京都墨田区の金属加工メーカー、浜野製作所。約20人の大学生が2月に同社を訪れた。経済産業省が始めた「地域魅力発見バスツアー」だ。就職活動を始める前の大学生を20〜30人集め、最大5泊6日かけて約10社の中小企業を訪問する。
…ツアーに参加するまで山崎さんは大企業の合同説明会に出席していたが、今は浜野の製造現場に魅了され「自分でプレス機を操りたい」と思う。操業30年の浜野はこれまで大学新卒者を採用したことがないが「せっかくのチャンスをものにしたい」と意気込む。
 経産省の金子敬一課長補佐(29)は、就職氷河期といわれる今も「中小企業の大学生求人倍率は1を上回っている」と指摘する。「学生が現場を見て中小の魅力に気づいてくれれば」とツアーの狙いを説明する。
…しかし、中小企業ではせっかく入った大卒社員が辞めていくケースもある。中小企業の経営に詳しい早稲田大学商学部の鵜飼信一教授(61)は「公平な人事評価や、パワーハラスメント防止などの制度を整えておくのが重要」と指摘する。

経済産業省は中小企業政策も所轄しているので、中小企業の人材確保策というのも重要な政策課題なのでしょう。そこでこの「地域魅力発見バスツアー」ですが、「ちいバス」という愛称がついて、「就活版」と「学生版」があるようです。ホームページはこちらhttp://chi-bus.net/。報道発表は昨年春でしたが、本格的に始まったのは夏休みからのようです。東京・大阪に限らず地方でも広く行われているようで、必ずしも中小企業というわけでもなく、中にはYKK株式会社のような有名大企業も含まれています。というか、YKKってファスナーでは世界一ですよね?いずれにしても、見ていると私も参加してみたいようなツアーもあって、これは若い人の社会勉強としてもたいへん有益でしょう。
それにしても、この「山崎さん」(はっきりはわかりませんが女性のようです)のように「自分でプレス機を操りたい」というまでの気持ちにさせられるのであれば、これは大成功であると申せましょう。もちろん現実にプレス機を繰るのはインターンシップにおいてであって、本当に就職すればそれなりに管理部門などで就労するのでしょうが、それにしても、です。まあ、参加者のどれほどがそうなるのかという問題は別にありますが、海老原嗣生さんのいわゆる「嗜好の壁」があるのなら、その思い込みを崩すための取り組みは双方にとって有意義だろうと思います。
いっぽうで、「公平な人事評価や、パワーハラスメント防止などの制度を整えておくのが重要」というのも、人事評価はともかくパワハラ防止についてはまったくそのとおりでしょう。かつて(まあ20年前くらいでしょうか)は一般的な「指導」の範囲内であったような行為でも、いまでは立派な?パワハラとして指弾されるようになってきたわけで、いま若年の指導にあたる人たちが自身の若年時に普通に受けてきた「指導」が現在はパワハラになることも十分ありうるからです。率直なところ、若年の「職業意識不足」を嘆く中小企業(に限りませんが)経営者や幹部の中には、自らの指導・育成体制の不備を若年の職業意識に帰しているケースもあるのではないか(根拠なし)とも思われます。
実際、「こんな程度で音をあげるんですから、今どきの若い人は意識が低いですねえ。我々の若いころなんかは…」という発言を耳にしたことが一度ならずあります。でも、たしかに「我々の若いころは」そうだったでしょうが、今は違うんですから…。みなさんの築き上げてきた「豊かさ」というのは、まさにそういうものなのではないかと思うのです。