労働分配率、急上昇

昨日の日経新聞朝刊によると、労働分配率が急上昇しているそうです。

 上場企業の2008年度の労働分配率が55.1%と、過去25年間で最高になったことが日本経済新聞社の集計で分かった。業績悪化で企業の付加価値額が大幅に減少したことが主因で、今後は人員削減や賃金抑制が進む可能性がある。
 集計対象は新興市場と金融を除く全国上場企業で単独決算ベース。08年度の付加価値額は前年度比20.3%減と、統計がさかのぼれる1984年度以降で最大の減少幅となった。合理化で人件費・労務費も2.7%減ったが、それを上回るペースで付加価値額が減少し、労働分配率は10.0ポイント上昇した。
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2009090910563b1

連合や民主党が「労働分配率の低下」を口を極めて非難していた時期に、経団連竹中平蔵氏は「労働分配率は景気回復期に低下し、景気後退期に上昇するのが当然」と説明していましたが、まさにそれが現実になったわけですね。連合も民主党もこれでよかったのでしょうか。
いや、これでよかったのかもしれません。現時点で労働分配率が急上昇したということは、企業が業績悪化に較べて相当がんばって雇用や労働条件を守ろうと努力していることを示しているわけですから。
また、記事によれば「株主への…配当総額は17%減の4兆3323億円。減少は7年ぶりで、減少率は過去25年間で最大となった」ということですから、これまた連合や民主党の主張した「企業は労働者への(正当なる)分配を行わずに資本家への分配を増やしており、分配の歪みが拡大している」というのが「是正」されているということでもありましょう。まあ、記事にもあるように「日本企業は「欧米に比べ配当額が少ない」との批判を受けて配当額を増やしてきたが、付加価値の大幅な減少で減配・無配に転じる企業が相次いだ」というのが常識的な評価だろうとは思いますので、これは「分配の歪みの拡大の是正」というよりは「分配の歪みの是正の減速」と考えるべきなのかもしれませんが。このあたりは人により考え方も異なるところと思われ、私は個人的にはこれを期にそろそろ株主への分配の拡大もストップしてはどうかと思いますが…。
いずれにしても、今後は「労働分配率が低下しており、労働者がないがしろにされていてけしからん」などといった、情には訴えるものの理屈のあわない議論はなくなることでしょう。それはそれで好ましいことではあります。