働きやすい会社

先日、日経新聞に同社の実施した二〇〇八年の「働きやすい会社」調査の結果が掲載されていました。この調査、人事制度や福利厚生などさまざまな項目をあげて「働きやすさ」評価しているのですが、「雇用の安定」とか「賃金の高さ」といった最重要項目が含まれておらず、こういう調査にはたしてどれほどの値打ちがあるのか毎年疑問を呈しているのですが、それにしても評価は高いに越したことはありません。総合ランキングの一位は五年ぶりにNECが返り咲いたとのことで、まことにご同慶です。
さて、雇用の安定や賃金の高さといったことを除くと、ビジネスパーソンは「働きやすさ」の条件としてなにを重視しているのか、なかなか興味深い結果が出ているようです。

 ビジネスパーソン調査では、「働きやすい会社」の条件を聞いた。どんな制度や取り組みを重視するか尋ねたところ「非常に重視する」条件のトップは「年次有給休暇を取りやすい環境がある」(五二・九%)だった。裏を返せば有休を取りにくい職場がまだ多いということになる。
 厚生労働省によると、労働者一人当たりの年次有給休暇の取得率は二〇〇六年で四六・六%。一年間に与えられる有給休暇を半分以上も使い残している計算になる。しかも一九九七年から七・二ポイント下がり、低下傾向を示している。
 ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の確保を目指し、有給休暇の取得を推奨する企業は増えている。ただ、取得しづらい雰囲気の職場だったり、仕事を引き継げる人がいなかったりするため、取得に二の足を踏むビジネスパーソンは少なくない。取得への環境づくりが企業に求められている。
 非常に重視する項目の二位は「実労働時間が適正である」(三七・九%)。三位は「人事考課の結果を本人に伝達している」(三四・四%)。有給休暇の取りやすさとあわせ、ワークライフバランスや自身への評価に対する関心が高いことがわかる。
(平成20年9月1日付日本経済新聞朝刊から)

で、実は去年の結果をみても、ビジネスパーソンが「非常に重視する」とした割合が最も高かったのはやはり「年次有給休暇の取りやすさ」で、54.7%でした。去年は「過去のリストラと最近の業績拡大で社員の負担感が高まっているのを反映したとみられる」と解説していたのですが、今年はワーク・ライフ・バランスに言及するなど、なかなか時流にのった解説となっています。ただ、たしかに「年次有給休暇を取りやすい環境」のためには、単に職場の雰囲気だけではなく、記事にもあるように引き継ぎ可能な多能工化された職場体制や、昨年の記事がほのめかしているような取得可能な程度の業務量などなど、さまざまな点でしっかりマネジメントされている職場となっている必要がありますので、これをビジネスパーソンが重視するというのはなかなか合理的な考え方といえるのかもしれません。
続いて2、3位も実は昨年と同じで、昨年は40.6%、35.4%となっていました。この「実労働時間が適正である」は、「実」とわざわざつけているのがなかなか意味深な感じですが、それはそれとして、考えてもみれば雇用の安定と賃金の高さを除いているわけですから、労働時間の長さに関心が向かうというのも当然といえば当然の結果ともいえます。
こうした中で、評価の透明性を求める意見が多いのはやはり興味深いところで、これはまさに記事の流儀でいえば「裏を返せば不透明な企業がまだ多い」というところでしょうか。