米不法移民就労合法化、改革法採決を断念

週末の報道から。

 米上院は七日夜、米国にいる約千二百万人の不法移民の就労合法化に道を開く移民規制改革法案の採決を断念した。推進派は再審議を目指すが反対論は根強く、年内成立は微妙な情勢。包括的な移民制度改革を内政の最重要課題に掲げるブッシュ政権にとっては深刻な打撃で、大統領選にも大きな影響を与える結果となった。

 米国内の不法移民の数は官民機関の推計で千二百万人。毎年百万人近くも増える。米国人が嫌う分野の労働をこなす不法移民は多い。米経済を支えているとする肯定論と、医療や教育など公共サービスに負担がかかるという規制論で世論は完全に分裂している。
共和党に加え、民主党支持の労働組合も移民の大量流入は賃金低下を招き米国人から職を奪うと反対の立場だ。
 推進派は法案に移民許可の条件として「技能や英語力」を盛り込んで、経済の競争力強化につながる移民受け入れを目指すと訴えた。だが反対派は「必要なのはハイテク技術を持つ高学歴者ですでに国内にたくさんいる」と反論する。
 政治問題化しやすい雇用・賃金問題と絡むだけに、不法移民をめぐる議論は簡単には決着しそうにない。
(平成19年6月9日付日本経済新聞朝刊から)

「米国人が嫌う分野の労働をこなす不法移民は多い。米経済を支えている」というのが現実だとすると、外国人を排除して「米国人が嫌う分野の労働」の賃金を米国人が嫌わない程度に上げる(これは多かれ少なかれ米国民の利便を損ねる)か、移民は認めないが期限付の外国人労働者をローテーションで受け入れるか、移民を合法的に受け入れられるようにするか、なんらかのことはしないといけないのでしょうが、たしかに議論は分かれるでしょう。移民国家で移民受け入れそのものには比較的アレルギーが少ないと思われる(そうでもないか?)米国でもこうなのですから、日本ではさらに難しい議論になるのも当然です。