社員が退職を申し出てきたときに、それを慰留した経験を持つ人事担当者は多いのではないでしょうか。その際に当然退職理由を訊ねるわけですが、退職者は本当の理由より「退職を受け入れてもらえそうな理由」をあげる傾向があり、必ずしも本音の理由を言うわけではない、という実務実感を持っている人も多いものと思います。「Yahoo!リクナビ」のサイトに、その実感によくあう記事が掲載されていましたので、ご紹介したいと思います。退職者396人に、本音の退職理由と建前の退職理由を聞いた、というものです。
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/01/honne/honne1.html?vos=
まずは本音の退職理由から。
- 上司との人間関係 66人
- 給与が不満足 44人
- 仕事に変化がない、おもしろくない 40人
- 会社の経営方針・経営状況の変化 38人
- キャリアアップしたい 38人
- 労働時間や環境に不満 32人
- 社長がワンマン 26人
- 同僚・先輩・後輩との人間関係 25人
- 社風が合わない 23人
- 雇用形態に不満 18人
次に建前の退職理由。
- キャリアアップしたい 127人
- 仕事に変化がない、おもしろくない 58人
- 会社の経営方針・経営状況の変化 48人
- 労働時間・環境に不満 38人
- 給与が不満足 25人
- 上司との人間関係 21人
- 勤務地までの距離・環境に不満 18人
- 社風が合わない 14人
- 雇用形態に不満 10人
- 昇進・評価制度に疑問 8人
- 転勤・異動を含む人事制度に疑問 8人
まあ、現実にはどれかひとつの理由だけではなく、さまざまな要因が複合して退職に至るわけでしょうし、賃金に対する不満は、他の不満とも密接に関係しているでしょう(この労働環境でこの給料じゃやってられないよな、という感じで)。また、インタビュー調査なので、本音がどこまで本当に本音なのか、という問題はどこまでいってもあるわけですが、それにしてもこれだけ差があるというのは面白い結果だと思います。Yahoo!リクナビではこれについて『ホンネは「上司との人間関係」が1位だが、タテマエで「キャリアアップ」が断トツ。やはり「人間関係」などの後ろ向きな退職理由は表に出しづらいようだ。』とコメントしています。まあ、そういうことなのでしょうか。どうせ退職するのだから人間関係について何を言っても仕方がない、だったら円満退職という形で…というのはわからないでもありません。
もっとも、「上司との人間関係」というのに「上司に対する不満」というのが含まれているとすると、いささか上司が気の毒な感じもします。社員がなんらかの不満を持ったときに、それを解消するためにはほとんどの場合上司の理解と協力が欠かせないわけですが、上司としても努力はしたが致し方なかった、という場合であっても、部下は上司に不満を持つかもしれません。逆にいえば、「仕事に変化がない、おもしろくない」とか「労働時間や環境に不満」というのも、かなりの部分上司に対する不満が含まれているでしょう。
いずれにしても、部下が退職したら、上司はともかく人間関係に問題はなかったか反省してみる必要があるということでしょうか。