パート労働法

きのうまで労働条件分科会での議論を取り上げてきましたが、雇用均等分科会ではパート労働法改正の議論が進められています。こちらもすでに「今後のパートタイム労働対策に向けての論点整理(案)」が提示されていますので、これまた何回かのシリーズでその内容をみていきたいと思います。
まずは、労働条件の明示、変更手続についてです。

1 労働条件の明示等
 現行法において、労働条件の文書による明示が努力義務とされているところであるが、以下のような実施状況も勘案し、今後のあり方をどのように考えるか。
 ※短時間労働者を雇い入れたときの労働条件の明示方法(事業所ごと・平成17年パートタイム労働者実態調査((財)21世紀職業財団))
 主に就業規則を交付している、又は主に労働条件通知書、労働契約書等書面を交付している 87.5%
 ※平成13年に実施された同旨の調査では、52.9%

義務化したいということでしょうが、労働契約法の関係でもたびたび書いているとおり、これはもはや書面明示が当然という世界に向かっていくべきなのではないかと思います(これに使用者と労働者がサインすれば契約書になります)。いかに中小企業でも、融資や保険などの手続きは書面でやっているわけですし。ただ、書面明示がなかったからといって口頭などでの合意が当然に無効になるわけではないことは明確化しておかないと、実務的には非常に混乱するものと思われます。義務化を前提に、電子媒体の利用を認めるかなどの議論に入るべきではないでしょうか。明示だけなら携帯メールでも十分だという見方もあるでしょうし、いずれ契約書にまで発展するのであれば改竄が容易な媒体では問題があるという見方もあるでしょう。

 現行法において、就業規則を作成・変更する際には短時間労働者から意見を聴くことが努力義務とされているところであるが、以下のような実施状況も勘案し、今後のあり方をどのように考えるか。
 ※ 就業規則の作成・変更時のパート労働者からの意見聴取状況(事業所ごと・平成17年パートタイム労働者実態調査((財)21世紀職業財団))
 事業所のパートの過半数が加入している労働組合の意見を聴いている、又は事業所のパートの過半数を代表する者の意見を聴いている 57.4%
 ※ 平成13年に実施された同旨の調査では、24.4%

これも義務化したいということでしょうか。かなり普及は進んでいるようですが、これはむしろパートというよりは有期契約の問題という感じがします。人事管理上、期間の定めのない、長期雇用のパートであれば意見を聞くことは必須に近いと思われますが、短期の契約で入れ替わりの激しい従業員については、パートに限らず、意見を聞くことの意義は相対的に小さいでしょうし、代表者を選ぶことも難しいでしょう(そもそも、「代表」として有意義なのかという問題もありますし)。それが約6割という率に現れているのではないかと思われますので、これは一律の義務化はなじまないものと思います。