佐藤博樹ほか『パート・契約・派遣・請負の人材活用』

これもまだ書いていなかった。
タイトルには入りきらなかったのですが、著者は佐藤博樹・佐野嘉秀・藤本真・木村琢磨です。

かなり乱暴な言い方になりますが、二十年前くらいまでの日本企業は圧倒的に正社員が中心で、人事管理も、「正社員」と、正社員以外をひとまとめにした「パート」(したがって、必ずしも文字どおりの意味での「パートタイマー」ではないことも多かった)くらいに大雑把にやっていてもそれほど困らないような状況だったのではないでしょうか。
そんなところに、この十数年で非典型雇用が増加し、就労形態の多様化が進展しました。ところが、個別企業レベルでみてみると、ある職場は派遣、ある職場は請負、この仕事は契約社員、この仕事は業務委託・・・などなど、多様化の実態がどんどん先行し、人事管理はといえばかつての大雑把なそれのままでついていけず、結果として現場が混乱する・・・といった現実があちこちでみられたのではないでしょうか。
この本はこうした就労多様化とその活用、人事管理の実態を広く調査してきた著者たちが、それぞれの雇用形態の特徴をふまえ、その活用のポイントと人事管理の留意点を手際よく、わかりやすくまとめています。さらに、多様な働き方が拡大するなかで、正社員までふくめた人事管理の全体像のあり方やキャリアの形成支援、ひいては人材ビジネスの拡大と今後の人事管理の方向性まで、現実的な議論を展開しています。非常にコンパクトな分量にこれだけの充実した内容を盛り込んでいるため、詳細な議論には到っていませんが、企業の人事担当者や現場第一線のマネジャーにとって非常に有益な入門書といえましょう。