シュワルツ『なぜ選ぶたびに後悔するのか』

なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴

なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴

一部労働研究者の間で注目を集めている本ということで読んでみましたが、たしかに面白い本でした。
一般的には、買い物にせよ働き方にせよキャリアにせよ、多様な選択肢があり、そこから自由に選べることがよりよい選択につながるのであり、それが「豊かさ」であり「幸福」なのだ、と考えられています。しかしこの本は、多すぎる選択肢はかえって選択結果への満足感を損ね、結果として選択の結果は良好だったとしても、幸福度では劣ることがあることを示しています。


つまり、選択肢が多いと、「最高の」の選択をするために多くの労力を費やすだけではなく、選択した後にも選ばなかった他の選択肢が魅力的に思えてきて後悔の念が募り、結局満足できない、ということのようです。であれば、限られた選択肢のなかから「ほどほどの」選択をしたほうが、多大な労力を費やすこともなく、あとから後悔にかられることもなく、かえって幸福ではないか、というわけです。
そして、つねに「最高の」選択を求めなければ気がすまない性格の人=マキシマイザーは選択によって不幸になりがちで、「ほどほどの」選択に満足する性格の人=サティスファイザーは、選択の結果にかかわらず幸福感が高いということです(もちろん、現実にはこうした二極に分かれているわけではなく、この両端の間に分布しているのでしょうが)。
なかなか興味深い話で、けっこう実感にも合っているような気がします。これを仕事や働き方、キャリアの選択などにあてはめると面白い議論ができそうで、だからこそ一部研究者の注目を集めているのでしょう。ちなみに私はといえば、この本に掲載されたいくつかのチェックリストやさまざまな事例をみるにつけ、なかなか幸福な?「サティスファイサー」であるように思われました。
キャリアデザインにしても、ダイバーシティにしても、「足るを知る」ということが大事だと私は思っているのですが、これには賛同してもらえないことも非常に多く、このあたりもマキシマイザーとサティスファイザーの違いなのか?などとも思ったりしたのでした。