ビジネスガイド8月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』8月号(通巻948号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「改正育児・介護休業法&次世代法、雇用保険法」と「R6.4.16最高裁判決から導かれる「事業場外みなし」の運用とテレワークの留意点」の2本で、前者は実務的に要対応項目が多いので担当者の参考となるものと思います。後者は前号(7月号)でも紙幅を割いて紹介・解説されていた協同組合グローブ事件の最高裁判決を受けて、事業場外みなしの活用拡大の可能性と留意点について解説されています。
 八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保険」は「労働時間規制の見直し」ということで、この4月に公表された厚労省「労働基準関係法制研究会」(これについては開始時に期待をこめたエントリを書きました↓)の「これまでの議論の整理」の中から、最初に示されている労働時間関連の主要な項目についてコメントしておられます。
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 この研究会は労働時間関連以外にも労基法上の事業・労働者性、労使コミュニケーションなど重要な論点が議論されており、その後も精力的に開催されていますので、私もそのうちコメントを試みたいと思います。
 大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」は「通常の賃金」と題して、昨年6月の社会福祉法人さざんか会事件の千葉地裁判決*1をふまえて、労働密度の低い時間帯の割増賃金の算定基礎として、契約において特に労働の対価が合意されているような場合においては、大星ビル事件最高裁判決が示した「通常の賃金」を下回る別途の賃金を使用できる可能性について検討した上で、立法論として最低賃金の適用なども含めて総合的に再検討することの必要性を指摘しておられます。この事件は控訴されていて確か?そろそろ高裁判決が出るはずのタイミングなのでタイムリーな記事であり、判決に注目したいところです。

*1:この事件、判決が出たときは「勤務時間と認定された」ことが妙に注目されていた記憶がありますがこれが労働時間に該当することについては専門家の間ではほぼ異論はないはずで、ここで論じられている割増賃金の算定基礎こそが核心でしょう。