日本労働研究雑誌10月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』10月号(通巻747号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「労使関係における集団の意義」ということで、集団的労使関係が全面的に取り上げられています。中でも私がおおいに注目したのは旧日経連の田中恒行さんが「経営側から見た「集団」の意義」と題して、旧日経連が主唱していた支払能力システムを紹介しておられるところで、経営上理にかなった適正分配の実現が可能となるのが経営側から見た労組の意義だというご主張です。もちろん支払能力論は総額人件費なので雇用形態の多様化とはそれ自体は中立のはずですが、正社員中心に組織された企業別労組の場合は相対的に非正規への関心が低くて、というところで特集全体の問題意識に接続するということのようです。このあたりは八代尚宏先生が常々「問題は労使関係ではなく、多様な労働者(典型的には正規と非正規)間の労労関係だ」と指摘されているのに通じるわけですが、解決策としては企業別労組が非正規の組織化を進めて正社員との利害調整をはかるのか、あるいは別途の非正規の労組を組織するのか、そもそも企業別労組も見直すのか、実現性は別としていろいろ考えられるところでしょう。田中さん自身は「抜本的な見直し」と述べるのみで具体的な結論を出していません。
 それにしても「支払能力論」とは懐かしい。係長手前くらいの頃に日経連の『経営計画の策定と適正賃金決定』で勉強したことを思い出します。今は『春季労使交渉・労使協議の手引き』にも出てこないようですが…。