大内伸哉『労働法で企業に革新を』

 神戸大学大内伸哉先生から、ご著書『労働法で企業に革新を』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 2016年の『労働法で人事に新風を』の続編ということで、主人公はじめ前作の登場人物も何人か引き続き登場します。
 前作は企業に残存している旧弊な人事管理を刷新し、近代化していくプロセスを通じて法の理念と内容を解説するという本でしたが、本作はフリーランスに始まっていわゆる「同一労働同一賃金」、分社化、さらには「ジョブ型」やテレワークといった比較的新しい、あるいは昨今の情勢下において流行りの人事施策の検討・導入のプロセスの中で法的論点が解説されています。テレワークのくだりで「ジョブディスクリプションを作りましょう」というのはかなり残念な感がありましたが、それを除けば、小説仕立てで読みやすく、解説もポイントがおさえられていて、この手の施策に取り組んでいる人事担当者の方には役立つ本ではないかと思います。
 最後の部分は未来予測で完全にSFなのでまあ課題というか問題意識としてという話でしょうからそう読めばいいのだろうと思いますが、ただまあこれまた前作と同様なのですが、ネタバレになるので詳しくは書きませんが本書の「オチ」もまたかなりブラックなもので、なんかこの主人公って半世紀前の(クラシックな意味での)労務屋(なのかオルグ屋なのか)が蘇ってきたんじゃないかなどと、思わなくもない。ストーリーとしては面白くていいのでしょうが、しかし人事担当者や社労士の職業倫理としてはどうなのかと思うなあ。
 あとこれは本当にどうでもいい感想ですがワインバーの店名が「アモール」なのはなぜなんだろう。大内先生といえば「アモーレ」というのが業界のコンセンサスだろうと思うのですが(笑)