小室淑恵『働き方改革』

 (株)ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんから、ご著書『働き方改革-生産性とモチベーションが上がる事例20社』をご恵投いただきました(昨日お会いした際に手渡しで頂戴しました)。ありがとうございます。

働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社

働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社

 まだざっと拾い読みした程度での雑駁な感想なのですが、基本的に事例集なので楽しく読め、やっていることの多くは業務の優先順位づけや標準化といった基本というか王道なのですがそれぞれに業種業態を反映して個性的でもあって、営業ツール(失礼ご容赦)としてもなかなか効果的なように思われます。共通項としてはトップが不退転の決意で取り組むこと、中間管理職のパワーアップが必要なこと、全員の意識改革、というところになるのでしょうか。
 中でも中間管理職の役割というのがかなり大事なように思われ、もともと日本企業では上位からあれやこれやと業務指示が来ると下位の中間管理職や監督者、さらには担当者レベルでも優先順位が低そうなものはとりあえず着手だけしてあとは催促されるまでは放置し、なにもいわれなければそのまま流してしまう、といったことが割と行われてきたわけですが(高橋伸夫先生の名著『できる社員は「やり過ごす」』は文庫化されてますね)、どうも中間管理職のプレイングマネージャー化が進んだのと、例の成果主義騒ぎなどもあって、リソーセスが慢性的にショートしてきてかえってそういう余地も失われてしまったというところでしょうか。まあ考えても見れば年功賃金と年功昇進であればわりと「やり過ごす」こともできやすかったということも言えるのかも知らんな。本書内では評価の問題についても指摘されているのですが、これも評価そのものの問題もあるでしょうがポスト詰まりで高い評価を受けて高いポジションにつける機会が限られてきて競争激化したという問題も大きいのではないかと思料。
あとはまあまだじっくりと読めてはいないのですが、事例の中に大東建託というのが出てきておや大東建託ってアレじゃなかったかしら?と思ったのですがモデル職場では効果があったけれど全社展開・定着までは至らなかったのかなあ。それからいたく細かい点なのですがもうひとつ、このブログで以前取り上げた話との関係で、静岡県教育委員会の事例の中で、授業以外のことに膨大な時間が割かれていることが問題だということを指摘した上で、

…ちなみに、イギリスでは1998年に教育雇用省が「教員がしなくてよい業務として次の25項目を上げました。

(中略、25項目を列挙)

 このリストを見た日本の教員は「自分の仕事の8割だ」と言ってショックを受けていました。(pp.223-224)

 と、同じ間違いが記載されていることを発見しました。正しくは「自分はこの8割をやっている」とのことで、さすがに直観的にも授業やその準備などが2割ということは考えにいわけですが、しかしこうした勘違いが起きるくらいに教員の仕事の実態は大変だということなのだろうと思います。ということで、これはあれだなこの時期この界隈でそういう資料が流通していたのかなと思って妙に納得する私。いや最後はなんかしまらないオチになってしまいましたが、しっかり読んで勉強したいと思います。