「毎月勤労統計調査」フォロー

 2月25日のエントリについて、専門の研究者(大学プロパー)の方から「もともとは全数調査の建前なのに回収率が低くなってしまったものをどう修正しようか悩んでいたのが発端だろうと思う」とのコメントをいただきました(ありがとうございます)ので、フォロー記事を書きたいと思います。
 たしかに回収率の低下は各統計の悩みの種であるようで、調査員が全世帯を絨緞爆撃する国勢調査でも回収率は100%ではなく、総務省の資料(http://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kokusei/houdou2.html)によれば平成17年度調査の未収率は4.4%、東京都では13.3%に上っている(これを見ると世帯と企業の違いはあるにせよ今回の問題も東京都だったのは納得いくところ)そうですから、本当に全数調査を実現しようとしたらリソーセスがいくらあっても足りないというところではないでしょうか。毎勤統計についてはそれでも月例の調査票は1枚であり、回答者への配慮もそれなりにされていると思いますが、それでも毎月となるとかなり大変であり、このところ話題になっている2015年の厚労省有識者検討会でも相当の脱落があることが議論されています。賃金計算ソフトの中には毎勤統計の調査票記入のためのデータを集計・出力してくれる気の利いたものもあるくらいで(たとえばオービックSCSK。ソフトウェアベンダーの手先かお前は)、やはり面倒な作業だということなのですね。
 回答者の理解・協力が得られにくくなっているというのは社会的な趨勢で致し方のないことだろうと思いますが、それは当然ながら調査に要するコスト・リソーセスの増加を意味します。一方で、だから全数調査をサンプル調査にしますというと手抜きであるとか効率化努力が足りないとか言い出す人というのもいるわけです(そういえばかつて行政のムダをなくせば財源はいくらでもあるとか声高に言っていた人たちもいたよな)。また、(まあ専門家の大勢はサンプル調査でも適切に復元すれば大差はないという意見のようですが、それでもなお)全数調査のほうが統計としての質がいいことは間違いないわけで、総務省としても「ではサンプル調査に変えてもいいです」とはいいにくいという事情もあるでしょう。もちろん、だから法に定められた手続を省略して勝手に変更していいわけはないわけですが。
 また、仮にそうだとすると気になるのが、まあ回収率が9割とかであれば復元の必要性も低いのでしょうが、仮に7割とか6割とかになっていたとすれば、その時点ですでに一定の復元は必要だったのではないかという点です。もし復元が行われていなかったとすれば、さらにさかのぼって誤った(おそらくは低すぎる)数字が出ていたことになると思うのですが…。まあ2004年よりさらに以前の話であり、データが残っているかという問題もありますし、15年、20年の古くまで遡って数字を修正しなければならないほどの違いはないような気もするので、あまり気にすることもないのかもしれません。このあたり実際のところがわからないのでなんともいえず、たぶんそのあたりも含めて今後の課題なのでしょう。