(おまけ)秀岳館高吹奏楽部

上のエントリを書いていて見つけたネタです。かなり旧聞ですが、秀岳館高校の吹奏楽部が甲子園応援を優先してコンテスト出場を断念したというニュースが話題になりました。

 甲子園のスタンドでもう一つの夏が燃焼した。16日の全国高校野球選手権大会で、秀岳館(熊本)のベスト8進出を支えた同高吹奏楽部。部員たちは、この夏の吹奏楽コンテストの南九州大会出場をあきらめ、全国制覇を目指すナインとの夏を選んだ。「甲子園が僕らにとってのコンテスト」。伸びやかな演奏が歓声とともに夏空に響いた。…
…県予選を通過しても、甲子園の応援を優先すれば大会には出られない。…「コンテストに出たい」と涙を流す部員もいた。…8月1日の県予選には「上位入賞しても南九州大会を辞退する」と主催者側に申し入れて出場し、金賞を受賞した
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/koushien_kumamoto_2016/article/267365

まことに当然ながらこの手の話が嫌いな人からはウェブ上などで批判が殺到したようです。

吹奏楽部と野球部が一緒に日本一を目指すという美談として伝えられているが、ネット上では、吹奏楽部が本当に納得できているのか疑問の声が多くあがっている。
「自分たちのメインの活動を諦めて応援を優先せざるをえないってどう考えてもおかしい」
「吹部の三年生は何のために三年間頑張ってきたの?」
「学校側が吹奏楽は野球より下って明言したようなもん」
「一聴すると美談に思うが、何か圧力(大人の事情)があったのでは?と勘繰ってしまう」
「自己犠牲を賞賛しているのが気にくわない」
http://news.livedoor.com/article/detail/11900940/

その後さらに検証記事(http://www.j-cast.com/2016/08/18275579.html)も出ていて騒ぎとしてはおさまっているようですが、まさにこの記事、上のエントリで黒岩氏が「毎日、「雑感記事」として選手にまつわるお涙頂戴の話を探さなければならなかった。」と嘆いている、その産物のように思えます。
なにかというと、この記事はこの話を「美談」にするために強豪の吹奏楽部がコンテストを断念して野球応援を優先したという仕立てにしてしまっているわけですね。ただ、実際には秀岳館吹奏楽部は全国大会に出るような強豪ではなく、部員21人でB編成のコンテストに出て、県代表にはなるくらいの強さなのですね。そのレベルであれば、まあコンテストに出られなくて涙を流すという部員もいるにしても、大勢は(検証記事にもあるように)「コンテストより甲子園応援」というのがまあ自然な流れでしょう。
逆に、熊本県で言えば玉名女子のような全国大会常連の本当の強豪であれば、通常2編成以上持っているので(まあ玉名女子が甲子園に出ることはないわけだが)やりくりしてコンテストと応援を両立させますし、どうしてもダメならOBが楽器を持って(ここが重要で、強豪校のOBは楽器を持っているので学校の楽器を使わなくてもバンドが編成できる)集まってきてなんとかしてしまうはずです。実際、野球の強豪校がまた吹奏楽の強豪校であるという例は多く、こうした学校が当たると野球も応援も負けられない必死の一戦になったりします。
ということでこの記事を書いた記者さんは、ネタがなくて都合よく書いてしまったとしたら誠意が疑われますし、本当に強豪だと信じ込んでいたなら取材不足であって、まあ「お涙頂戴の話」が調達できなくて苦労したのだろうなあと同情に堪えないわけです(笑)。真に受けて火を噴いてしまった人にはご迷惑な話ではあるわけですが。