我街の誇り

 9月に入ってしまいましたが夏季恒例のスポーツネタです(笑)。真夏のお祭り・都市対抗野球大会が第90回の記念大会を迎え、さらに日本野球連盟も70周年の節目を迎えたということで、社会人野球のテーマソング「我街(われら)の誇り」が新たに作られました。

 社会人野球を統括する日本野球連盟JABA)は6日、東京都内で記者会見を開き、JABA設立70周年と第90回都市対抗野球大会を記念した社会人野球の歌「我街(われら)の誇り」を発表した。作家の伊集院静さんが作詞し、数多くのヒット曲を手掛けた林哲司さんが作曲、編曲。13日正午から東京ドームで行われる都市対抗大会開会式の入場行進曲として使われる。
https://mainichi.jp/ama-baseball/articles/20190706/k00/00m/050/097000c

 フィジカルが大手CD販売店のオンラインショップでお求めになれるほか(タワーレコードHMV)、MP3ファイルはAmazon Musicでお求めになれます(LINEミュージックにも入っているもよう)。残念ながら今のところウェブ上から聴くことはできないようですが、ご関心の向きはYouTubeで検索してみるとなにか引っかかるかもしれません。アマチュア野球の歌といえば高校野球のテーマソング(厳密には全国高校野球選手権夏の甲子園のテーマソングですが)である「栄冠は君に輝く」がたいへん有名ですが、同様に広く親しまれてほしいと思います。
 さてその「栄冠は君に輝く」は周知のとおり競技に臨む若者を賛美する内容となっているわけですが、「我街の誇り」は少し様相が異なっています。JASRACに怒られるような気もしますが(いや本当にまずければ削除しますが)以下全歌詞を掲載します。

社会人野球の歌「我街の誇り」(われらのほこり)


詞 伊集院静
曲 林哲司


陽(ひ)は昇り、雲は光る。
我街(わがまち)に青空が広がる。
聞こえるよ、白球の音。
働く汗、球を追う汗。
まぶしいのは生きている証し。
勇気をくれる野球の神様。
さあ駆けよう、闘いの地へ。
誇りと勇気を胸に抱き
我街(われら)のすべて、チームのすべて。
青空の下へ、いざ集おう。


海は揺れ、風は鳴るよ。
我街(わがまち)は皆(みんな)を抱き寄せる。
聞こえるよ、砂を蹴る音。
働く夢、ひとつのチーム。
かけがえない友情の証し。
素晴らしい人、野球の神様。
さあ見上げよう、光る青空。
誇りと勇気を胸に抱き
我街(われら)のすべて、チームのすべて。
野球の旗へ、いざ集おう。

 社会人野球なので働きながら勤務先の企業チームあるいは地域のクラブチームでプレーするわけで、そういった側面が織り込まれているのに加え、曲名のやや無理のある当て字が示すとおり、地域とのかかわりも強調されています。社会人野球最大の大会である都市対抗野球大会というのは文字通り「都市」(街)の代表が覇を競う大会であり、その代表というのがその街にある企業チーム(やクラブチーム)、ということだったわけです。だから(都市の代表だから)補強選手制度という独特なしくみ(本選進出したチームは同地区で予選敗退したチームから選手をレンタルすることができる。長く5人までだったが現在は3人まで)が存在するわけです。
 とりわけ2番の前半にはそうした背景が色濃く反映されており、「我街は皆を抱き寄せる」という詞はただちに企業城下町が全国から雇用を吸収して来た歴史を想起させますし、「働く夢、ひとつのチーム」は、かつての職場や地域が「ひとつのチーム」であった(企業の発展を通じて地域が振興し人々の暮らしが豊かになるという夢を共有していた)時代を彷彿とさせます。だからこそ、現実には時に気まぐれで時に皮肉な「野球の神様」が「素晴らしい人」ということになるのでしょう。
 もちろんそれは過ぎ去った過去のお話であり、まあ歌の中では社会人野球の原点ということで残しておく意義は大いにあると思いますが、一方で今現在の現実の社会人野球は当時とは大きく変貌しています。かつての社会人野球が意図していた従業員への娯楽の提供、労働者の意欲と職場の一体感の向上、企業と地域の連携関係の醸成といった役割は薄れつつありますが(それが2000年前後の不況期に一気に企業チームが減少した背景にあるわけですが)、一方で近年では人材確保などを意図して企業チームを発足させる例が増えており(チーム数も増加に転じている)、産業的にみてもかつての重厚長大型中心から新設チームはサービス業が目立つようになっていますし、中には都市対抗野球大会本選に進出したり、各地の大会で歴史ある古豪に一泡吹かせるというのはもう当たり前にみられるようになってきました。そうなると従業員としても大いに元気が出るという話でもあるようで、うまく生かせば人事労務管理のツールとしてまだまだ有益なものであるようです。
 さて「我街の誇り」ですが先日開催された日本選手権予選の観戦に行ったところ試合間のインタバルで放送されていて定着がはかられているようです。野球にご関心のある向きにはぜひともプロ野球高校野球だけでなく社会人野球にもぜひ足を運んでいただければと思います。なおすでにDAMJOYSOUNDといった通信カラオケにも搭載されていて自ら歌うこともできます。私が出張先の室蘭市の桶屋でへたくそな「我街を誇り」を歌ったというのはとっても秘密です(笑)。