労働基準局で労働組合法を所管?

hamachan先生のブログで、来年度の厚生労働省の組織変更が紹介されています(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-c6ab.html)。厚生労働省の資料はこちらになります。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10108000-Daijinkanboujinjika-Jinjika/28kouseiroudou-kikouteiin-sateigaiyou.pdf
その中にこんな記載があるのですが…。

3. 厚生労働行政の推進のための体制の強化及び組織再編
○政策統括官組織の再編
社会保障担当、労働担当の両政策統括官を一本化し、新たに統計・情報政策担当の政策統括官を置くとともに、総合政策・政策評価審議官を設置することにより、社会保障・労働政策等に係る総合的な政策の企画・立案を行う機能を強化。

○重要施策に係る組織の充実
医薬・生活衛生局に医薬品等審査管理課及び医療機器・再生医療等製品審査管理課を、労働基準局に賃金課及び労働組合法、労働契約法等を所管する労働関係法課を設置。

「労働基準局に賃金課及び労働組合法、労働契約法等を所管する労働関係法課を設置」となっていますが、労働基準局が労働組合法を所管することに相当の違和感を覚えるのは私だけでしょうか?
もともと省庁再編前の旧労働省には労使関係を所管する労政局という立派な局があって労働組合法もそこが所管しており、1970年代末から90年代にかけては労政局長→労働事務次官というのは鉄板のキャリアでした。ところが、組織率の低下や労働争議の減少といったことが背景にあってか、90年代末から労政局長を経ない労働事務次官が2代連続したところで省庁再編を迎えました。
2001年の省庁再編では旧厚生省・労働省合計で2官房・14局・9部があったのに対して新厚生労働省は1官房・11局・8部に組織改編されました。局は3局減らされており、その中には旧厚生省児童家庭局と旧労働省女性局を統合した雇用均等・児童家庭局のように当時省庁再編のシンボル的存在とされたものもありましたが、残る2減については旧厚生・旧労働が各1の負担となり、ここで労働行政の保守本流であった労政局が消滅しました(旧厚生は生活衛生局が消滅)。正直、当時も労政局がなくなることには相当の意外感がありましたが、その当時金融危機後の不況で完全失業率が急上昇しており、職業安定局や職業能力開発局をなくすわけにはいかないという状況だったことが影響したのでしょう。個人的には職安局と能開局を統合する(そして労政局は温存する)のが妥当じゃないかと思っていましたしそういう意見の人も多かったと思うのですが。
その結果、集団的労使関係関連行政は新設された政策統括官(労働担当)、いわゆる「統労」が引き継ぐというやや異例の展開となり今日に至っているわけですが、どうやら今回政策統括官を見直すようであり、労働組合法の所管を置いておくわけにはいかなくなった、ということかもしれません。このあたり事情は推測するよりないのですが、どこかに置かなければならないとしても職安局や能開局には置けないだろうというのもわかりますので、まあ消去法で基準局ということなのでしょうか。だとしてもやはり相当に違和感はありますが…。hamachan先生も「労働関係法課って、かつての労働法規課の復活かという感じですが」と書かれていますが、かつての労働法規課も労政局だったんですよねえ。この際、労働基準局を労政局に名称変更したほうがまだしも違和感がないなどと思わなくもない。
それで思い出しましたが似たような話で、労働契約法ができるときに所管が労働基準局監督課だったことに対しては使用者サイドからは相当の異論がありました(労働サイドがどうだったかは忘れた)。労働契約法については当初から借地借家法消費者契約法などと同様に民法の特別法であって罰則や取締をともなうものではなく、それを明確にするために労働基準法とは別法規とすべきとされていたわけで、だったらその所管がまさに罰則や取締を所管する労働基準局監督課というのはおかしいじゃないか、という議論があったわけです。その後、霞ヶ関のほうは新設された労働条件政策課にデマケが変わり、まあ監督課よりはいいかという感じはしますが、しかし都道府県労働局ではまだ監督課の担当になっているんじゃないかなあ。
もちろんこれもじゃあ他のどこにするんですかと言われると難しい問題ではあり、そこでそれこそ労働組合法と同様に統労でどうか、という議論もあったかと記憶していますが、しかしこちらはそうはなりませんでした。
案外このあたりは霞ヶ関の本音が見えるところなのかもしれず、現状では労働組合法はそのくらいの扱いでいいやとか、労働契約法ができたら取締はともかく指導には使うぞとか、そんなことが反映されるのではないかなどとあれこれ邪推をめぐらす私。まあ組織名称の問題に過ぎないと言われればそのとおりなのかもしれませんが、しかし言葉は魂ですからね。