濱口桂一郎『働く女子の運命』

hamachan先生ことJILPTの濱口桂一郎先生から、ご著書『働く女子の運命』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

先生の以前の類書と同様、労働政策や人事管理の歴史を踏まえ、現状の日本の雇用システムと女性労働との不調和が解説されています。ジョブ型・労働時間上限規制付・ワークライフバランス指向の働き方をデフォルトルールに、という提言もこれまでと共通するものです。女性労働を論じるのであれば理解しておくべき内容がひととおり網羅されていて有益な本といえるでしょう。
ただこれはこういう本なので致し方ないところはあるのでしょうが雇用システムを強調しすぎ・社会システムを軽視しすぎの感はかなりあり、そのせいもあってかストーリー展開が少々強引な印象は受けますし、例によって知的熟練論に対する評価など違和感を覚える部分もなくはありません。乱暴な言い方をすればこれが本当に雇用システムだけの問題なのであれば、政策的に誘導して改善していくことも、それなりの困難はあるでしょうが不可能ではないだろうと思いますが、性役割意識とか、勤労に対する価値観とかに立脚した社会システムの問題が大きいだけに困難もまた大きく、正直悲観的にならざるを得ないという、これもこれまで何度も書いたと思いますが、やはり今回も同様な感想を持ちました。