田中萬年先生のSAYYESプログラム

6月10日のエントリに田中萬年先生からトラックバックをいただいて泡を吹いてうろたえる私。hamachan先生のところを経由して来られたらしいのですが、このところのこのブログは田中先生にごらんいただくにはずいぶん下品だなあと反省することしきり。日記で晴らしたい鬱憤もあるということでご容赦いただければ幸甚です。
さて先生のご提案されるSAYYESプログラムをご紹介したいと思います。

…良く言われているように、高齢者は豊富な経験をして多様な能力を備えているのであり、その能力の活用が望まれる、ということだ。こうして高齢者の雇用延長が望まれているが、しかし、近年の産業の実情から産業界での賛同が厳しいものがある。ここでは、単なる労働力としての雇用延長ではなく、高齢者の能力を若者に移転して貰うという指導者性を期待するのである。
 一方、若者は十分に発揮出来る職業能力を身につけていない者が多く、当然ながら方法にも未熟である。そのような若者は職業能力を高齢者に指導を受けながら実践的に能力を身につける、という制度である。
…高齢者をシニアともいうが、シニアにはインストラクター的な意味が内包されているようである。また、若者は何でも学ぶ立場に有るので、トレーニーであるはずだ。
 つまり、両者を満足させるためには、上のような高齢者の経験能力の活用策と、若者の経験不足の問題を両者を合体させることにより双方が補完し合うという関係を創れば良いことになる。その考え方は、高齢者と若者をペアにして採用することになる。…労働は自立を目指すことであり、生きるためでもある。転じて「自立を主張すること」を老若が協働して求めていくことになる。このことは今日の社会に不足している世代間統合、特に老若の融和の意味となり、今後の社会のあり方に必須の条件も示しているといえる。…70に近い、中卒で働きに出た私の幼なじみが今でも求められているのは若者の指導である。このような高齢者が指導に当たっていることは実態的に少なくない、といえる。
 このような場合の指導原理、方法を確立しなければならない。それは新たな職業訓練の分野ではあるが、此までに蓄積した方法のアレンジで不可能ではないと思われる。公共職業訓練の経験が期待されるところである。
…政府がこの構想を強制的にすべての高齢者、すべての若者に網を被せるようにすることを許さないのは当然である。…高齢者と若者をペアで雇用した場合の補助金制度の確立が望まれる。…この制度は、人手不足や後継者難で困難を抱えている各地の地域産業や伝統産業、また現存する事業所・企業であれば可能な制度だといえる。特に、現場での指導者不足問題を抱えている事業所ではその問題の解消に役立つはずである。…基金訓練も利用出来るはずだ。やや言葉がきついが丸投げの委託方式になっている現行制度を、若者の職業能力の向上によりその職業訓練の内容を結果的にチェック出来ることになり、評価システムを内包した職業訓練制度となる長所が生じることだ。
…人間社会として社会全体で見れば若者から高齢者までがいるのが自然であるが、今日の産業界の困難性によって、それぞれ別個の問題として論じられているために階層、年齢層の分離社会がギスギスした社会を形成している。このような現状を、SAYYESによって老若男女ともに協働する社会の再構築を目指すという意味としても拡大できるのではなかろうか。
http://d.hatena.ne.jp/t1mannen/20110620

私ごときが申し述べるのもなんですがまことに有意義なご提案であると思います。
蓄積した経験・能力をもとに実践的な技能指導に活躍できる高年齢者はおそらく多数いるでしょう。もちろん定年を迎えた企業内でそのまま活躍できる人も多いでしょう(すでにそういう人は再雇用されるようになっていると思います)が、たまたま定年を迎えた企業にはそうした場はないけれど、指導者不足の企業に移ることで活躍の場が得られる人もまた多いかもしれません。そうしたマッチングに政府や経済団体・労働組合などの努力が期待されます。
さらには、今のままではたとえば教え方のノウハウが不足しているけれど、そこを補えばやはり技能指導などに活躍できる高年齢者もいそうで、指導の原理、方法の確立に公共職業訓練の経験が期待されるというのもご指摘のとおりです。
また、とはいえ実作業がなく技能指導だけでは十分な賃金が支払えないということも現実的にはあるでしょうから、そこに補助金を入れていくべきだとのご指摘も納得できるものです。
いっぽうで、高年齢者は多様であり、残念ながら一部には技能の陳腐化や体力・気力の減退によって支援があってもこうした活躍が難しいと思われる高年齢者も一定数いるという事実も認めなければなりません。もちろん一人でも多くの人が定年後もいろいろな形で活躍できることが望ましいわけで、そのためには壮年期から技能や体力などの減退を防ぎ、さらに向上させる取り組みが求められると思います。そのために現在、多くの企業労使において、再雇用の基準制度が労使共通の目標として活用されている…という話につながっていくわけです。