国家公務員の採用抑制

今年度も国家公務員の採用は抑制基調のようです。日経新聞のサイトから。

 政府は17日の閣議で、2012年度の国家公務員の新規採用者数について、09年度実績と比べて約3割減とする方針を決定した。東日本大震災の復旧・復興対応による業務の増加を考慮し、11年度の4割減に比べて抑制幅を圧縮した。
 12年度の一般職と自衛官を除く防衛省職員の採用枠の上限は6336人。11年度の5333人に比べて約1000人増やした。総務省によると国土交通省農林水産省などから震災対応を強化するため採用者数の大幅増の要望があったが、人件費抑制の観点から採用枠を絞ったという。
 基本方針では大震災への対応に関して「真に必要と認められる場合に限り、追加の採用について検討する」とした。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E3E5E2E28B8DE3E5E2E4E0E2E3E39790E3E2E2E2

まあ天下り禁止で出口を絞っているわけですから入口も細るのは当然の理屈だという話はたしか昨年「4割減」がニュースになったときにも書いたと思います。ということで高年齢者の雇用が維持されることで若年の雇用のチャンスが減少するという自然な結末となったわけで、各省庁とも「専門的技能・経験を有する高年齢者と基本的に経験を有しない若年者とでは労働力として質的に異なる」とか「将来的には、特に若年者の労働力供給が減少し、必要な人材の確保が難しくなると見込まれる」とか言って採用枠拡大を主張してみてはどうでしょう(笑)。いや悪趣味なあてこすりで申し訳ありませんが、まさに公務員志望の若年からすれば怒れる話ではないかと思います。もちろん、出口が絞られているということは従来入ってきた人が入ってこなくなった組織があるはずで、そこでは欠員が生じているはずではあるのですが(この話も昨年書いたかな)、まあ国家公務員と較べて魅力的な職かどうかというと首をかしげざるを得ないでしょう。しかもそういうポストは事業仕分けで減らされている例も多いわけで。
ただ、記事の記載だけではなんとも言えないのですが、出口の絞り方が変わっていないのであれば、削減幅を減らした分は人員増になっているものと思われます。いや実際4月24日の時点でこんな報道もあったわけで、

 東日本大震災の被災者支援や復旧作業などのために被災自治体へ派遣された国家公務員が延べ2万人超となったことが23日、総務省の調べで分かった。…今月18日時点の派遣人数は自衛官などを除くと988人。同日までの延べ人数は約2万3400人だった。最も多いのは国土交通省の1万4062人で半数以上を占めた。気象庁などによる現地調査のほか、復旧に向けて技術指導などをする緊急災害対策派遣隊も多数が現地入りしている。
 農林水産省の2659人や警察庁の約2500人、財務省の1612人が続く。農水省は食料品の調達や農地の調査、漁港の復旧などを担当。…
http://www.nikkei.com/

日経のこの延々と長いページアドレスはなんとかならんか。それはそれとしてこれをみれば「国土交通省農林水産省などから震災対応を強化するため採用者数の大幅増の要望があった」というのはうなずけるわけですが、しかし一時的需要であることも明らかなので(けっこう長い一時的もあるかもしれませんが)まあ「真に必要と認められる場合に限り、追加の採用について検討する」というのも妥当な感じがします。
したがって当然ながら国家公務員のみなさんは普段よりは相当忙しいはずで、いや実際私もお仕事で役所に行くことは多いのですが確かにお忙しそうです。しかし国家公務員の労働条件というのはこうした大災害時には非常に大変だということも織り込んで決まっていると考えるべきだろうとも思います。なお、これも先日関連のエントリを書きましたが、だったらそこからさらに給料を10%カットするのはけしからんではないか、という意見はあるだろうと思います。まあ現行の定員が適正なのかとか、労働条件の水準が適正なのかということは提供される行政サービス(それこそ災害時の対応とかも含んだ)の水準とのかねあいで国民が決めることなので、今回のように選良として正統性を有する国会議員が10%カットが適正な水準だというのであればそういうことなのでしょう。もちろん労働条件というのは総合的に判断されるべきもので、これは主に地方の話になるかもしれませんが、これだけの大災害で失業者が11万人とか12万人とか言われるような状況であっても公務員は失業しないわけです。このあたりを評価しなおせば案外10%カットというのは大方は呑める水準なのかもしれません。