大卒採用二桁増

今朝の日経新聞から。私が読んだ版では一面トップで報じられておりました。

 日本経済新聞社は19日、2012年春の採用計画調査をまとめた。大卒採用数は11年春比13.7%増と2年連続のプラスで、2ケタ増は4年ぶり。過去の採用絞り込みで生じた人員構成のゆがみの是正や、定年後も継続雇用してきた団塊世代の大量退職に備える。海外展開や新技術を担う人材へのニーズも強く、東日本大震災後も企業の採用意欲は衰えていない。
 採用計画調査には通年採用も含む。12年春の大卒採用を前年より増やすと回答した企業は全体の62.5%に達した。金融危機の影響で大幅に落ち込んだ10年春から、回復傾向が続くものの、1社平均の大卒採用人数は直近のピークだった09年をなお下回っている。
 企業は求める人材がいなければ計画数に達しなくても採用を打ち切る厳選採用の姿勢を強めており、実際の採用が計画通りになるかは不透明だ。新興国への生産シフトなどを背景に、高卒採用はなお厳しい状況が続く。
 各社が採用を増やす要因の一つは60歳の定年以降も雇用してきた団塊世代の退職が12年以降に本格化するため。JFEグループでは製鉄所などの操業や設備メンテナンスを担う技術者の退職が増えてきた。円滑に技能を継承するため理工系を中心に大卒採用を前年比14%増の382人とする。高水準の中途採用も続け中核要員の育成を急ぐ。
 金融危機後の採用抑制で手薄になった若手層の拡充や、世界市場で攻めに転じるための人員を確保する動きも広がっている。三井住友銀行は前年比2割増となる850人の大卒採用を計画。今後の収益拡大が見込める海外事業などに人材を多く配置する狙いだ。…
平成23年6月20日日本経済新聞朝刊から)

震災はあったものの、多くの企業はわが国経済がリーマンショック後の不況からの回復過程にあり、将来の成長戦略も描けているということでしょうか。であれば好ましいことと申せましょう。
とりわけ「過去の採用絞り込みで生じた人員構成のゆがみの是正」「金融危機後の採用抑制で手薄になった若手層の拡充」ということなので、2000前後の「就職超氷河期」には中途採用の、直近(2010年、2011年)の既卒社にはいわゆる第二新卒としての就職の機会が増えそうです。繰り返し書いていますがこの間にどのように人的資本を高めたかが問われるわけですが、特に超氷河期世代はすでに10年前後が経過した中途採用ということで、ある程度以上のものが求められるのでしょうから、なかなか大変かもしれません。このあたりで「求める人材がいなければ計画数に達しなくても採用を打ち切る」ということが起きるのでしょうか。
ただ、厳選採用とはいうわけですが、採用計画は発表するけれど、「求める人材がいな」いから「計画数に達し」ていないけれど「採用を打ち切る」、というのはいかがなものか(あ、使ってしまった)という感はあります。雇用創出は社会が企業に求める重要な役割、それも最も大きなもののひとつでしょうから、「2011年は500人採用します」と言いながら「やっぱ350人でやめました」というのは、社会に対していささか誠実さを欠くのではないかと思うからです。逆に、「2011年の採用計画は350人」と発表しておいて、結果的に「500人採用しました」ということであれば文句を言われることもないだろうと思うわけで。採用サイドとしてみれば大きい数字を出したほうが応募も増えるだろうという読みがあるのかなあ。まあ誰も文句を言っている人はいないようなのでそれでいいのでしょうか。気にするほうがバカなのかもしれません。
あと、やはり例年同様「技術者」と「海外人材」へのニーズは強いということのようで、まあ基本的には企業は多様な人材を必要としているはずなのであたかもそれだけが求められているかのように書くのはいかがなものか(あ、また使ってしまった)とは思いますが、まあこの記事はそれほどでもないのかな。いずれにしても記事中にあるように「定年後も継続雇用してきた団塊世代の大量退職に備える」とあるように、(まあ年齢にかかわらず)退職が増えれば採用も増えるというのはいたって自然な話であり、したがって団塊世代の大量退職が見込まれる中では現在検討されている「希望者全員の定年後再雇用」といった施策は団塊世代と年齢的に近いことも含めてやりやすいのではないか、という見方もできるのかな。ただ、現在希望しても再雇用されていない、あるいは再雇用されそうにないから希望しない定年退職者というのは、技能が陳腐化してしまったり体力・気力が減退していたりするケースが多いと思われ、だったら可能性のある若年を…と企業が考えても無理からぬものがあります。ということで、技能の陳腐化などを招かないための労使の中期的な取り組みが必要であり、その共通の目標として基準制度の役割は重要だ、とお上のエントリと同じ結論となりました(笑)。いや高年齢者がそういった努力をしているのでなければ就職に苦労している若年も納得しないのではないかな。まあ高年齢者からみれは若年が就職できないのは若年の努力不足だということなのかもしれませんが。